和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

柳絞りのコーディネイト

以前お約束していた柳絞りについて書こうとパソコンに向かった。

向かったけれどネットで調べればある程度は誰でも知識が身につく。

で・・・・今回は柳絞りのコーディネイトを書こうと思う。

 

柳絞りはその名のとおり絞りである。

絞りというのはよく言えば可愛い、反面少し野暮ったくもなる。

ところが、こんな垢ぬけた柳絞りを見せてもらった。

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実に絞りが細かい。丁寧。そして手が込んでいる。

ちょっと分かりづらいのでこの写真ではどうだろう。

 

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地は綸子であるのでとても光沢がある。

しかも写真からは分かりにくいが地色は青磁色である。

拡大してもらうと分かりやすいのだが縫っている糸目が実に細かくて正確である。物凄く手間暇をかけて丹念に縫い染めたに違いない。こんな美しい柳絞りは今まで見たこともない位に素晴らしい。多分柳絞りに限らず、絞りを知っている方でもこの雰囲気はとても意外に違いない。普通はもっと絞りが粗く縞や染まりの太いところがあるのが普通なので。綸子地の渋い小紋に見える。

 

さて、この垢ぬけて品の良い柳絞りに合う帯を探して欲しいと言われたのだが、いやぁ・・・難しい。でもやってみましょう・・・と。ちょっとワクワク。勿論先方の予算もある。それがあるからなお楽しいのだ。

今日はその色々探し回った時のコーディネイトをお見せしよう。

 

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オーソドックスな組み合わせ。帯は袋帯で紺地。糸も細くしなやかで悪くない。でも普通過ぎて何となく面白みがない。何となくしっくりと来ないのは紺地のせいか。イメージでは青磁色と紺地は合うのだけれど実際見てみるとしっくりとしない。

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2

帯は手織りの綴れ帯。少し紫が入っていて着物の青磁色と合っていて素敵である。白いポイントもちょっと面白い。こんな帯なら帯締め青磁色にしたらすっきりとしていて楽しいかも。ただ私的には少し色っぽい。それが好きな人はそれで良い。

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3

こちらの帯も実に柔らかく締めやすそうである。細い糸で実に手触りもいい。

ただ私の好みの問題であるが赤い色がちょっと鼻につく。赤い色を入れましたよ…という作り手の媚が伝わってくるようで嫌だな。私ならこの赤い色は渋い緑色や紺色あたりが嬉しいかも。

 

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4

パチッと黒の名古屋帯青磁色に黒はきつそうに見えるが出かけていく場所にもよるのだが、花展や美術館辺りならぴったりかも。際立った色が入っていないので会場で作品の邪魔をしない。これはとても大切な事。柄も何気ない雰囲気でのしめ風なのも良い。

黒地の名古屋帯はどうしても花柄が多いのでこういうさりげない帯はとても貴重。

 

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5

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この二点は色違い。手織りの焼箔帯で実に美しい。お太鼓の所の上の柄が着物の地色と同じ色なのもさりげなくて悪くない。ただ帯が少し格が高すぎる。でも可笑しいかというとそうでもない。この辺りになると完全に好みの問題なのだが。

 

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思い切って雰囲気を変えてみた。こんなのを好きな人もいるに違いない。

色は合わなくはないのだが、この柄の大きさに関しては好みが大きく分かれるに違いない。沢山の帯を見るたびにぴったりはまる帯は本当に少ないことに気づく。なんとなく悪くはないのだが、やはり「これしかない」という帯に出会いたい。

 

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8

実にお洒落な帯に出会った。茶色なのだがこの青磁色の着物にドンピシャッ。帯の茶色の中に緑色が入っているからか、とても色は合う。おお・・・素敵。柄も波と舟。なんだか柄もとっても垢ぬけている。ただじっと見ていると舟がでかすぎる。もう少し小さいと良かった。多分仕立てると帯の両脇が縫い込まれるので地色の余裕が更に無くなってしまう。物凄く残念だが諦めるしかない。何本もの帯を見ていると流石に疲れてくる。

全くの余談だがこういう舟は案外誰でも見たことはあるだろう。ただ本物を見た人はいるだろうか。この舟と同じ舟を実家で持っていた。そういうと何人かの人が必ず言う・・私も見たことがある…と。では質問する・・この舟は網などで捕らえた魚を何処に収納するのか・・・と。舟の上に置いて漁を続けると炎天下の中魚は当然傷む。ではどうするか。。。実は保存場所があるのだ。そこまでは中々知らないでしょ?

この舟は刺繡と箔で実に上手に陰影や濃淡を描いているのだが、多分製作者はその場所を知っている・・みたいだ。

 

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こんな可愛い帯を見っけ!!! 可愛すぎる。楽しすぎる。

そして、あ・・あ・・高すぎる。

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柄をアップしてみる。歌舞伎の勧進帳がテーマ。由水十久さんの作品。

「あいや、暫く」と皆を制しているのは弁慶らしき。全員がどうも弁慶格子を着ているように見える。やはりこの方の唐子は何といっても可愛い。しかし帯が如何に可愛くてもこの青磁色の着物には若干無理がある。勿論どの帯も合わせて可笑しくはないだろう。ただぴったりの物を探したいだけ。ちなみに前の柄は

 

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松。むーん、この松も可愛い。この帯はこの着物でない方が柄が生きるに違いない。

結局中々ぴったりくるものがなくて更に後日に探索続行。流石に疲れた。

でもここまで来たら探すしかない。どれももう一つ・・・と。

中々なくて諦めていたところ・・・遂に見つけた。

 

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どうだ?悪くないでしょ。。。探索に一週間以上かかった。

グレーの輪つなぎ、花つなぎ、まるで見ようによっては麻の葉模様風の袋帯

でもこの幾何学模様が絞りを邪魔しない。いとも細くしなやかで締めやすそう。

しかも値段がとても手ごろ。こんな着物と帯で街を歩く人って素敵じゃない?

私的には全部の中で一番恰好良いと思う。色味が抑えられている分帯締め帯揚げで色々楽しめる。春にはきっぱりしたグレーでも、青色でも、緑色でも、レモン色でもワイン色でも素敵。多分幾何学的なこの帯なら案外と無地っぽい濃い着物にぴったり合うはず。

いゃあ・・・~見つかってすっきりした。

 

ちなみに私だったら…と勝手に自分の好みの帯も知らず知らず探していた。

 

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私だったら12の帯も好きだけれど、若干重い感じのこの帯が好み。鎧縅風の重厚な雰囲気の焼箔の手織りの逸品。絞りの着物にはちょっと重厚すぎるけど私はそれ位が好き。柄も細かいので死ぬまで使える。勿論帯締めは白っぽい青磁色のできるだけ凝ったものにしたい・・・などと「う、ふ、ふ」とにやついていた。誰も私にくれるわけではないけれどひと時楽しんでいた。

 

コロナで外に出かけることもないし、着物を着ることもない。たまには美術館でも…と思うが入場制限とかでネットから申し込まないと受け付けてくれない。

着物とはちょっと遠ざかっているこの頃、せめてコーディネイトでもと遊んでみた。

お店や問屋さんめぐりは結構息抜きとなった。楽しかったよ。

私に付き合ってくださった店員さん、オーナーの方々本当にありがとうございました。(九拝)

 

実際マスクとさようならはいつの日の事か・・・

皆さん、上手にストレス発散できてますか~~~。。。。

 

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青空

 今日は天気が良かったのでたっぷり散策・・・みんな、またね~・・・・♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沈黙を破って・・・

「仲良きことは美しきかな」

確か武者小路実篤の言葉だったと思う。

本当にそうだろうか・・・

その「仲良き」のレベルにもよるだろう。

 

表面だけの仲良しにどれだけの意味があるだろうか。

仲良し・・というよりいつの間にか無関心、無責任ということになっていないか。

本当に何かと真剣に向き合っていく時、意見の相違は勿論のこと、対立して険悪な雰囲気になる事すらある、あってしかるべきで無い方が不自然である。十人いれば十の意見がある。譲れない部分で対立することは仕方のないことでもある。

それよりも私は危惧する。

真の自分の思いを隠し、表面だけニコニコして笑顔で語る事がさも美しいことでもあるようなそんな接し方を怖いと思う。対立した後の相手への理解が永遠に得られないからである。そこには進歩も発展も永遠にない。嘘も方便・・・私には無縁な言葉である。

 

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生徒さんに問いたい。

トップにいることだけを考えることに意味があるだろうか。

自分だけいい思いをすることを考えることに価値はあるだろうか。

面倒なことをいつも人任せにして逃れることに反省はないのだろうか。

自分だけは面倒なことに巻き込まれたくないと思うことに後悔はないのだろうか。

ビリだから足手まといになるのではないかとビクビクしていないだろうか。

長谷川の言うとおりにしておいた方が無難だと受け身の姿勢ばかりではないだろうか。

 

そして私は言いたい。

歌がうまい・・だからどうなのだ。

撥さばきがうまい・・それがどうしたのだ。

私たちは人の生き死にを語っているのだ。

人の思いが分らないのに琵琶の弾き語りもないもんだ。

隣の人の思いを知ろう。

向かいの人の考えを知ろう。

そしてまずは自分の本心を見つめよう。

少なくても先ずはその努力はしないといけない。

私たちの向かっている先は見掛けではなく、「魂の内側」だと思うから。

 

皆で話し合う時に自分の思いを堂々と口に出して欲しいと思う。

それは違うのではないかとひるまずに言って欲しいと思う。

それでその場の雰囲気が悪くなってもその先にはきっと互いに少し分かり合える世界が近づいてくると思うから。

いつも言うように、私たちは一つの大きな縄の輪の中にいると思っている。

大きな壁を乗り越えて行くには互いの協力なくしては絶対無理である。

一人のパフォーマンスでどうにかできるものではない。

一人一人が一生懸命練習し、共に支え合い、苦しい時を乗り切る。誰がトップであろうが、誰がビリであろうがそんなことは問題ではない。一丸となって苦難を乗り越え一つの目標に向かって力を合わせ努力していく。そこに価値がある。それが素晴らしい。時には皆を支え 時には皆に支えられ、全体として少しずつ前進し目標に近づいていけたら・・と。壁を乗り越えていけたら・・と。そんな集団になれたら怖いものはない。そんな素晴らしい集団はない。それを目指したい。いやそれしか目指す所はないのではないかとすら思う。

 

最後に・・・多分これが一番言いたかったこと…

もし私が言ったり思い込んでいたりする事で違うと思った時には躊躇せずに言って欲しい。自分の本心を言うことに恐れないで欲しい。

昔、初代黒田長政が謡を披露した時のこと。

家臣は誰も彼もその下手くその謡を一同ほめたたえ称賛したという。しかしその時一人の家臣が言った言葉。

「殿がへつらいや追従を見抜けないようであれば当家の長久は望めない」と。

誰でも褒められるのは嬉しいし、もっと聞きたいと思うものである。

でもそういう一つの意見だけが全てだと思うところに心の罠がある。

そんなことはありえないから。

長政は痛く反省し毎月「異見会」(意見会ではない)を開き耳の痛い事を家臣から聞く機会を作ったとか。これが通称「腹立たずの会」となったのだ。

 

私はちっぽけな人間なので耳の痛い事には腹も立てると思う。くっと髪を逆立てるかもしれない。

でも耳の痛い事こそ人一倍しっかり聞きたいとも思う人間でもある。反省は人一倍すると思う。その結果その意見に従うか従わないかは別の話である。それは自分自身の問題である。

着付け教室を開いた時の座右の銘

「汝を褒むる者、悪魔と思へ」だった。

何年もの間、ホワイトボードに貼って自分への戒めにしていた言葉である。

 

私も含めて皆で守って気を付けていきたいと思う。

 

 

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・・・・・・・・・・無沙汰のお詫び・・・・・・・・・・・・♪・・・・

日々の雑多な中で苦しみ悩みもがき、自分なりに何とか活路を見出そうとしている毎日だった。家の中にも外にも、仕事でも、そして何より自分自身の事など、本当に目の前の事から一つずつ片付けていくしかなかった。楽しいことは見事な位 殆どなく(笑) 時には座り込んでしまう日もあった。「なんでもいいから、私を笑わせて!!!」と無理無体な電話もした。まさに「うずくまる女」・・・もとい、「うずくまる婆」だった。

ブログにまで手が伸びようはずもなく、全て煩わしくなったりして少しお休みをもらっていた。考えないといけない事が本当に山積。気が付けば私の髪はとっても薄~~ー~~くなっていた。笑い事ではなかったけど、笑った。

メールや電話で励ましてくれた方々、ありがとう。

持つべきものは友達だね。容赦のない叱咤激励・・・いやいや叱咤叱咤だったか・・

大丈夫です。私は何とか人並みに元気です。(笑)

着物の事がご無沙汰なので、次は「柳絞り」について書くね。

 

秋の風


琵琶の音が少しささくれ立っているような・・・

糸のすり減りが目立ってきている。

「糸を変えよう」と突然思い立つ。

ついている四本の糸を全て外す。

 

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絃が切れないと滅多に変えないのだが、この日は何を思ったか一挙外した。

 

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首の竹の部分に石蝋を塗る。

 

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糸の滑りをよくするため。

これがないとキシキシと音がする。

 

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向かって左から一の絃、二の絃、三の絃、四の絃となる。

 

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一の絃を張る。

順次張ってゆき・・・・

 

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完成。

全部張り終えた。

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習い始めた時はチューナーなど使わないので一本ずつしか張り替えるのができなかった。音を確かめながら今日は四の糸・・今度は三の糸・・というように前後左右の音を聞きながら恐る恐るの張り替え作業だった。チューナーを使うようになってすっかりチューナーだよりになってしまった。

大体が音感ゼロ、私の耳はバカ状態。

 

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先日神社の集会所を借りての全員で合同練習。

コロナ感染が心配で中々狭いところで全員集まれないので久しぶり。

いゃあ~とても楽しかった。

今の方々は本当に音感がすこぶる良いのでうらやましい。

特に若い時に楽器を触っていた方はやはりスバ抜けて正確である。

私は「ねえ・・この音、あってる?」などと生徒さんに聞きながらの参加。

「ずれてる!!少し高い!!」と指摘を受けながら調整している。

「今度は上がっていく時は大体いいけど、降りてくる時のラとㇷァが少し低い!!」

音というのは聞いているその瞬間は分かるのだけれど、時間がたつと音が私の頭から消えていていつの間にか他の音に微妙にすり替わっているようだ。しかも押さえる指の感覚だけで音を出しているので毎回違う音になるのだ‥(笑) 精進するしかないね。

すぐに聞き分けられる人って凄い。

先生の身としては本当に恥ずかしい限りであろうが、案外と本人はめげてはいない。(笑)ローマは一日にしてならず・・・である。

すぐにできないのは今に始まったことではない。

しかし、何をさせてもどん臭いのよね、私。。。

中学の時のリードバンドのアコーディオン担当だったが、コンクールの時に「お前は絶対音を出すな」と言われた経験がある。音感もさることながらリズム感が全くなかったらしい。さっさとやめて英語劇のクラブで「ベニスの商人」に挑戦したっけ。デュークか何かの役柄だった。このことは以前中学時代の話としてどこかで書いているはず。

 

ここでちょっと調べてみた。

「中学時代」ではなかった。「私のボイストレーニング」だった。

記憶までややこしい。

参考までに  

 

umryuyanagi104.hatenablog.com

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案外さみしい記憶のはずなのに傷はない。というか、この程度を傷と言っていたら私は全身傷だらけになってしまう。正しい選択をするための一つの「辻」だったのだ。話は違うが「辻」という漢字は音読みがない。こういう字を「国字」という。「辻」の他に「峠」とか「躾」とか「榊」とか。私はこの程度しか知らないがかなりの数あるらしい。「躾」は着物で使うのでその時に気が付いた。

話を元に戻す。今まで琵琶を習ってきた時に自分が全く気にもしなかった「音の正確さ」というものに今向き合っている。琵琶の場合どの程度まで正確さを求められるかは今からの課題。何とか私でもどうかなる範囲であって欲しいと切に願う。まあ今後に期待してくだされ。

 

これからもどうぞよろしく・・・~・・♪

 

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      すすき葉のさ青長葉のしげり葉の

            するどに垂れて風あらずけり (木下利玄)

 

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      身の透けて心あらはになるごとき

            秋の日向の白きに遊ぶ (富小路禎子)

 



夜静かに本を読むのが楽しくなるこの頃・・

久しぶりに短歌の本を開いたらなんだかとても新鮮だった。

もっともワインの量が目茶目茶増えるのだが、それはそれで又よし・・・・

 



 

     

吉野間道

 

今回は着物の事を書くことにする。

 

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最近我が家の庭を自分の庭だと思って住み着いたらしき黒猫

 

 

           ☆ 「吉野間道」 ☆

 

紺屋の白袴」という言葉を皆さんは聞いたことがないだろうか?

「紺屋」というのは染物屋さんの屋号と思ってもらっていい。もっとも今は使わない。昔の話。藍色で白生地を染める業者を「紺屋」といった。読み方は「こんや」とか「こうや」とか読んでいた。それが次第に染物業者一般に「紺屋」という言い方をするようになった。「紺屋の白袴」というのはよそ様の染物仕事ばかりして自分の袴を染める間のないことから「人の為ばかりに働いて自分のことをする時間がない事」をいうようになった。私は子供のころよく母からこの言葉を聞いた。同じように「紺屋の明後日」という言葉も。仕事が忙しすぎて常に遅れがちになることから仕事を受けてもなかなか期日通りにいかない時などに使われる。着物の仕事をするようになって分かったのは藍染めの仕事は天候に非常に左右される・・ということ。自分がしようとしても天気次第で思うとおりに仕事が運ばない最たる職業だったに違いない。

前置きがものすごく長い…・・・

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大家族

 

 

「え?これ、前置き?」

そう、単なる前置き。何故ならここからが本題。

「灰屋」に持って行きたかった。

「灰屋」というのも「紺屋」同様仕事からくる屋号である。

今のように化学染料や化学媒染剤がない時代、「灰」を媒染剤として色を定着させたり、色止めをしたり、はたまた色を変えたりする事で染色の仕事をしていたお店。「灰屋紹益」という人はその仕事で豪商となった江戸初期の京都人である。本阿弥光悦の親戚筋に当たる方で、書、絵、和歌、など各芸事に精通ししかも当時の一流人たちと深く交流し、書物まで書いている。この「灰屋紹益」色んな逸話を残しているのだが、その中でも当時の花魁「吉野太夫」との事はとても有名。「吉野太夫」は京都の寛永三名妓と言われた「吉野太夫」「夕霧大夫」「高尾太夫」のうちの一人で、父親は西国の武士と言われている。

和歌、俳諧、琴、琵琶、書道、花、囲碁などどれをとっても達人の域だったとのこと。こういうことは尾ひれがつくので何処まで本当かは不明であるが、とにかく美しく聡明で優しい人だったようだ。大夫になったのが14歳くらいだったはず。時の関白・・この人は天皇の親戚筋であったらしい・・その関白が吉野太夫を見受けしようとしたという話もある。関白と灰屋紹益は吉野大夫を挟み張り合うのだが、結果的には灰屋紹益が見受けしめでたし・・となったようだ。灰屋紹益の養父は花魁を妻にしたというので一時、灰屋紹益を勘当したとも言われている。ただ吉野太夫の人柄を知りやがては勘当を解いたという話も残っている。その吉野太夫に灰屋紹益が惚れ込み数々の贈り物をするのだが、その一つに珍しい帯があった。その帯がこの「吉野間道」である。

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久しぶりのアオサギ

 

大体「間道」というのは古い縞模様のこと、室町から桃山時代あたりに渡来した格子縞、縞柄を言う。縞の一部に浮織のあるのが特徴で名物裂(きれ)である。

名物とは有名な茶人が名品と認めた茶道具をいうのだが、その茶入れや仕覆、掛け軸、表具、袱紗などに用いられた裂(きれ)を名物裂というのだが、吉野間道もその一つとされている。そのほかには有名なところで

日野大納言輝資(ひのだいなごんてるすえ)所持の日野間道

笹蔓間道、小松弥兵衛にちなんだ弥兵衛間道、聖徳太子に由来する太子間道・・・この辺りは着物二級受験する方は抑えておいた方が良い。もう少しで、今年もきもの検定だね?今年は和装組曲から二級を受ける方が4~5人いるはず。コロナの影響でどうなるかは不明だが、試験会場に応援に行くね。

 

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柵(しがらみ)を超えて

 

笹蔓間道と太子間道は以前ブログで写真を載せているはず。笹蔓間道はいろんなところで目にするのでそんなに珍しいものではないのだが、太子間道はまずお目にかかれない。ただ京都の和泉博山氏の工房で糸の染色から正確に復元されたものは写真で確か載せているはず。

今回「吉野間道」・・・

吉野間道は臙脂、白、茶、深緑、などの細い縞で囲まれた太い縦縞と真田紐状に織り出されている浮き織横縞を組み合わせたものといわれていて、時には格子模様もあるのだが、立体的な縞模様が特徴。

吉野間道を糸の染から草木染に拘り再現しようとされている方の帯があったのでそれをお見せすることにする。これは私好みの実に渋いものなので見ていて面白くはないだろうが、独特のこの織の雰囲気だけは伝わるのではないか、と思う。

 

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使われている染料は

「鬼胡桃」「揚梅(やまもも)」・・・白茶、茶

「矢車附子(やしゃぶし)」・・・茶も黒

「藍」「臭木」・・・青、水色

 

   ↑  このあたりの材料と媒染剤で色がどう変化するかも抑えておくべし

  これに臙脂などが入ると随分鮮やかになるだろう。又赤系や紫系を糸に入れたかったら、動物染料であるコチニールなどを使うと鮮やかな色が可能となる。

二級を受けるときには苦手かもしれないけど草木染の種類や媒染剤は絶対目を通しておくべき。もし二級で役に立たない出題傾向でも一級では必須。頑張って損なことはない。

 

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ちょっと分かりにくいかもしれないが真田紐状の縦横の浮き織がわかるかな

これがこの間道の特徴。

 

 

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実際お太鼓になる部分はこんな感じかな。

ただ糸も紬糸だし間道という柄からしてもこの帯は格の高いものにはならない。

ただ名物裂なのでちょっとしたお茶席にはOK。

私は江戸小紋と合わせて着る。

帯で着る。

 

黒も完全な黒ではなく、墨色に近い。そこがまたいい。

草木染は何度も何度も糸を染めて色を濃くしていくのでものすごく手間がかかる。でもそれだからこその奥行きの深い味わいがある。化学染料の黒とは一味違う。昔の方々は蚕を飼い、糸を紡ぎ、こうやって身近な植物を使って草木を煮出して、糸を染めてそして一織一織、夜なべ仕事にして織っていったに違いない。

経糸緯糸の織り成す無限の空間・・・

かすかにに感じる歴史の香り・・・

人の手作業で作られたものはどこか暖かい・・・

 

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千利休、今井宋薫、古田織部小堀遠州、更に松平不昧・・・

そう、松平不昧はこの吉野間道の写しを自ら中国に注文したことでも有名。

その美しさに魅せられた茶人たちをちょっと忍んで今回は「間道」について、中でも「吉野間道」を書いてみた。ではでは・・またね。

次はいつになるんだか・・・(笑)

 

と終わるはずだったのに、一つ書き忘れていたことに気づいた。

吉野太夫と灰屋紹益との間には色んな逸話がある。本当だか、作られたものだか、今ではわからないでとても多いのでなるべく脱線しないように書いたので(信じられないだろうけど、本当 !! )面白い話もいっぱいあったのだが、今回は着物優先。間道優先。そう思って横道を横目にまっしぐらに進んできた…進んできたけれどこれだけは最後に書かせて。

吉野太夫は三十代後半に亡くなった。灰屋紹益は吉野太夫より確か四つか五つ下だった。遺体を荼毘に付し全て灰にした。そして壺に入れ身近に何時も置いていたとか。そして毎晩飲む酒の盃にその灰を少しづつ混ぜながら飲んだと。最後にはすべて灰を飲み切ったというのを何かで読んだことがある。灰屋紹益の「灰屋」ならではだと妙に印象に残っている。

 

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ヒヨドリの幼鳥・・母を探して鳴く?

 

 

 

 

錦心流琵琶全国一水会 加賀支部

明日8月1日より新しい支部が始まる。

念願だった。

しかし、正直まだまだ4、5年は掛かると思っていた。

思いもかけぬ沢山のお弟子さんが集まった事と、そのお弟子さん方が頗る真面目で優秀だった事、皆んなとても律儀で善良な方々だった事が私の中では大きかった。

思い切って本部に申請したのだか、この度許可された。関係者の皆様本当にありがとうございます。身の引き締まる思いです。



私自身まだまだ未熟者である事は充分承知しているが、お弟子さん達と楽しくて何処にも無いような新しい支部を運営して行こうと決めた。前途は山あり、川あり、イバラ道が待っているだろうが、この仲間達となら、何とか乗り越えて行けるだろう。

そしてこのメンバーなら例え私が居なくなっても力を合わせて琵琶の普及に努めて行ってくれるに違いない。互いに切磋琢磨して琵琶のスキルを上げて行ってくれるに違いない。


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今までの看板「着付教室」と「琵琶教室」に



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新しくもう1つ加わった。



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錦心流琵琶全国一水会  加賀支部 

である。

明日から新しい支部として動き出す。


こんな社会情勢の中で、しかも残りどれだけあるかわからない人生で、更に新しい夢に挑戦できる事に心から感謝したい。


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琵琶を始めてからの年月を思うと、辞めなくて良かったと改めて感無量である。


                    皆んな、本当にありがとう〜♪

  

                     皆んな、頑張って行こうな〜♪


山葡萄の下駄 4

山葡萄の下駄で4まで続くとは思わなかった。

でもここまで来たらもう書くしかなかろう。

 

昨日遂に・・・届いた。

山葡萄の下駄。

修理完了。

包装紙も洒落ている。

亀甲花菱か・・

ひょっとして亀甲剣花菱かも。

 

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電話の方は流石達筆。

しかも文が実に良い。

 

ドキドキ・・はやる心。

 

どうだ!

 

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 山葡萄の傷みはキレイに修復されている。

鼻緒が後ろ壺に実に良い角度で入っている。

この捻りがないと履きにくいのだ。

 

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お〜っ、実に美しい。

 

 

 

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桐の柾目が台の所に来るようにそれは美しい。

痛まないように裏にゴムを貼ってくださったんだあ。

北国では雨や雪で滑りやすいのでゴムがないと超危険。

しかも直ぐに減っていくヤツではない。

中々頑固なゴムである。

鼻緒のすげ処理もそりやあ見事。

麻の鼻緒芯も真新しくしっかりとしていて美しい。

 

完璧〜♪♪♪

 

ありがとうございます〜☆

 

折角なので記事に花を添える。

 

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ついでに蜂も添えた。

 

 

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多分蜂は・・・

 

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フタモンアシナガバチ・・・とみた。

違っていたら教えてたも。。。。。

 

今回で山葡萄の下駄は「   お・し・ま・い  」である。

ちやんと修復できるかが頗る心配であったが、何とか無事終わった。

めでたし、めでたし、である。

山葡萄の下駄 3

散歩途中で見かけた牡丹の写真を挟みながら「山葡萄の2」の続きを書く。

 

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「東京や京都、大阪ならいざ知らず、こんな所に果たして下駄を直してくれる店があるんだろうか?」

半信半疑ながら「材料の仕入れから販売まで一貫して・・・」という歌い文句に惹かれて恐る恐る電話してみた。

何十という店、問屋にアクセスしても体良く断られたり、やんわりと新しい山葡萄の下駄を勧められたりもした。気持ちは完全に底値安定(笑)テンション下がりっぱなし。

 

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「新しい山葡萄のを買われた方が貼り替えるより安くあがるんとちやいますか?」と。「新しい山葡萄のは幾らしますか?」「五万も有ればお釣り来ます」と。「それって日本製ですか?」と言う私に「日本製って、あんた。このグローバルな時代に・・」と。グローバルかあ?時代に取り残されたお婆ちゃんに思われてしまった。ある意味、当たってはいるのだか。

中には「山葡萄?いつの時代の話?」と言わんばかりの応対もある。「二千円で真新しい下駄が買える時代に貼り替えて欲しい?」と言わんばかりの正直ムッとさせられる応対もあった。

 

電話をかけるたびに意気消沈する私であるからして、恐る恐るという心境にもなって行くというもの。「無理なんかなあ〜」と半ば諦めかかっていた。此処で駄目なら、暫くこの下駄はお蔵入りやなあ。

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長い電話の呼び出し音のあと

「はい・・」

出られた方は相当年配のお婆ちゃんらしき。

「直ぐ出られませんで・・」

ハアハアと息を切らしながらドッコイショと坐られている気配。

「すみません。下駄を直して欲しいのですが、お願いできますか?」

という私に

「出来ますよ」

即答された。

 

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「山葡萄の下駄なんですが。」

分かるかなあ、と恐縮しながらも尋ねる私に間髪いれず、

「いつ買われたものですか?」

と畳み掛けられた。おっ?出来るな、お主。

「25年位前でしょうか?」

答えながらこのお婆ちゃん、誰か話の分かる職人さんに代わってもらえないかなあ、とも不埒に考えてもみる。

しかし、次の返事には驚いた。

「25年前位なら、青森の材を使っていると思うの。先ずは修復できますよ。最近の物は体裁はいいけど海外の産だから痛んだ蔓を変えるのが中々難しいのよ。うちは国産しか使ってないので。まずは見てみないと。」

 

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その方、

「山葡萄の下駄をはいたら、他の下駄は履けないよね?」と。

そうなんよ。履いている時の足の美しさや、脱いだ時の下駄の美しさは塗りの下駄に勝る物はない。でも履き心地は山葡萄の下駄に勝る物はないのだ。履いた人しか分からない。

 

仏様に逢えた気分。

一頻り山葡萄の話で2人で盛り上がりスッカリ気分はお友達。お婆ちゃんの病気や病院通いの話なども交えながら

「どの程度の傷み具合か見てみないと費用の見積もりは出来ないので一度送って」と。

山葡萄の台が傷みが激しくても代わりの蔓で修復も出来るから安心しなされ、とも。

「あったのね、こんな所が。やっぱ絶対いるのよ、凄い方々が。」

 

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直ぐ送りますとも。見積もりなど取らなくていいので確実に直して貰えればそれでいい。話の応対からの感じでは、とても誠実で律儀な雰囲気が伝わってきたから。セッカチな私は直ぐ包装し送った次第。郵便局に行く私の足はスキップしていたに違いない。直るぞ、直に〜♪。やっと又履けるよ、これを。嬉しい〜♪

 

後日・・

山葡萄の台の痛みは殆んどないので台を変えれば綺麗になりますよ、と連絡を受ける。神様だね。台は桐にした、鼻緒は私が勝手に選んだと(笑)。彼処まで地味な鼻緒はないので、渋目の鼻緒に前壺は赤のものと。「赤かあ、・・」と一瞬思う。でも贅沢は言えぬ。

その私の一瞬の沈黙が分かったに違いない。

その方間髪いれず

「渋好みは分かっている。あなたのこんな鼻緒は地味過ぎてそうそうはない。まあ今回はその辺で手を打ってください。鼻緒は申し訳ないけど高いよ。小千谷縮だしね、裏は本天で7500円よ。」と電話口で笑っていなさる。構いませんとも。小千谷縮なら致し方ない。

 

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小千谷縮で裏は実は本天という鼻緒で7500円は決して高くはないのだ。小千谷縮は知らない方は検索してくだされ。直ぐ分かる。

 

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問題は「本天」。ホンテンと読む。本物の絹、しかもビロード。ビロードは漢字で「天鵞絨」と書く。絹の天鵞絨である。鼻緒の裏は常に皮膚に当たるので素材は大切。当たりは柔らかで化繊に比べ耐久性も悪くない。「本天」、時々使われるので着物検定を受けられる方は要チェック。

 

かくして、連休中に修復して送って下さるとのこと。皆さんに美しくなった姿お見せできる。

ちなみに時間を作って今度その工房を見学させて貰うつもり。

 

 

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東南アジアや中国の材料を使っているとこんなご時世、材料が入らないということもある。このお家のように国産に拘り全ての作業を自社工房で賄っていると関係なく仕事をこなされている毎日であるとか。

ちなみにお婆ちゃんが直されるの?

と聞く私に、いやいや「息子!」

「昔は夫がやってたんだけど・・」

とシンミリ。

そして電話で色んな事を話しながら分かったことはその方は私と大差ない年齢のようでもある。

まあ、私も充分お婆であるのだが。

 

牡丹は艶やかで華やかではあるけれど牡丹ばかりを見ているとフッとツツジが新鮮に思えた。

 

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綺麗に直って送られてくるのを待ちましょ!

 

 

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