和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

小千谷縮(2)

縮(ちぢみ)と言えば盛夏の着物。
サラリとした清涼感のあるシボが特徴。

有名なのが明石縮と小千谷縮
明石縮は経糸に生糸、緯糸に強い撚りを掛けた練糸を用いた薄物着物地である。
つまり明石縮は経糸緯糸も絹を使用して作られている。
それに比べ小千谷縮経糸緯糸ともに麻である。
 
昔は麻は山に自生している「山苧」(やまそ)を用いていた。かなり昔から新潟、越後ではその麻を元に上等な越後麻布が織られていたようである。勿論一般の人々も麻布を衣服に用いてはいたのだが冬は寒いので何枚も重ね着したり、刺し子で補強したりしていたらしいのだが、丈夫で美しいので段々人気が出て有名になって行った。上等の麻布・越後上布として有名になるにつれ山で自生している「山苧」(やまそ)では足りなくなり、畑で作られるようになっていく。それが「苧麻」(ちょま)である。「苧麻」はイラクサ科の多年草で、刈り取った「苧麻」の茎の青皮をはいだものが「青苧」(あおそ)である。

「山苧」(やまそ)と「青苧」(あおそ)の違いについてメールで質問されたのだが、お分かりいただけただろうか。


江戸時代、播州明石の浪人・堀次郎将俊(通称・明石次郎)が越後に移り住み、越後上布に明石縮の工法を活かせないかと、工夫し成功したものが今の小千谷縮のもとである。堀次郎将俊には妻・お満と二人の娘がいたらしいが家族総出で小千谷縮を工夫しシボを出すべく奮闘したらしい。「明石堂」や「お満が池」は、年に一度関係者によって祭礼が今でも行われている。一度は見ておきたいと思っている。

さて・・・さて・・・
これらの事を踏まえて今回は
         
            「小千谷縮」について



簡単に工程をいうと・・・

「苧積み」→「糸に撚り」→「絣くくり」→「染色」→「織り」→「湯もみ」→「雪晒し」→「仕上げ」

という段階を踏む。

「苧積み」(うづみ)・・・・刈り取った「青苧」を剥ぎ糸を作る工程

    青苧をぬるま湯につけて柔らかくし水気をとる。
    それを口にくわえながら爪や指先を使って髪の細さに裂く。
    裂いた糸を唾液で湿らせながら指で繋いでいく。

    この工程は冬の寒い湿度のある時期でないと糸がプツンプツンと切れていく。    
    麻は乾燥を嫌うので雪国ならではの糸作りであり、着物の織りの自然な仕組みともいえる。

となるのだが、ここでもう一つ、「湯もみ」と「雪晒し」という工程も面白い。

撚りを掛けた糸を糊で固めて織るのだが織り上がった後、その糊を落とす作業が「湯もみ」である。
堀次郎将俊の妻お満が池で糊を落としたところから今でも「お満が池」として存在して祭られているのだが、江戸時代は舟と呼ばれる木製の水槽の中で脚で押して糊を落としていた事が「縮布製造真図」に図として載っている。湯もみ工程を終えた布は柔らかくなり、最後の「雪晒し」の工程となる。
一週間前後をかけて雪の上に反物を広げお日様にあてるのである。
雪の上に発生するオゾンが殺菌、漂白作用を反物に施してくれ、白は鮮やかな白に、色は落ち着いた色にしっかり仕上げてくれるのだ。

年月を経た小千谷縮でも再び雪の上に晒すと鮮やかによみがえり美しくなることから「小千谷の里帰り」と呼ばれている。
金沢では浅野川友禅流しが見られるように、小千谷では雪の上に反物が並ぶ雪晒しの風景は春の訪れを知らせる越後の
風物詩だろう。

ちなみに小千谷縮は1955年、越後上布と共に国の重要無形文化財の指定を受けている。重要無形文化財の指定条件は以下の五条件を満たさないといけない。

   1.全て苧麻(ちょま)を手うみした糸を使用すること。
   2.絣模様を付ける場合は手くびりであること。
   3.いざり機で織ること。
   4.シボとりは湯もみ、足ぶみであること。
   5.雪さらしをすること。

小千谷縮として沢山市販されてはいるがほとんどが本製小千谷縮ではない。
値段的には上の5条件を満たす重要無形文化財としての小千谷縮はとても手が出るような額ではないのだが、市販されているもので十分さらさら感を楽しめるし、夏の着物の醍醐味を満喫できるはず。

   藍色の小千谷縮に麻の帯を合わせてみた。
   袋帯でこんなふうな感じなら縮でもちょっとしたよそ行きになる。

  
  
  

  


  胸元にはこんな和装扇をちょっと使う〜。。
  カワセミの・・・

   
   


  
   いやあ・・・もっとざっくりした普段着っぽいものがいい・・と言う方には

  
  

   科布の帯はいかがだろうか。こんな帯を使う時は帯枕はへちまを使ってほしい。
   なんとも背に風を通し爽やかな着心地を楽しめる。
   帯が模様のないあっさりした無地であれば帯締めで遊ぶのも着物の醍醐味。

  
   


  柄があったらちょっと使いにくいようないろんな色を使った帯締めでもしっくりと楽しい。
  

  ちょっと普段は使わないような帯留やとんぼ玉も時には楽しい。
  帯留がないときはブローチでもよい。

   
   

  
 
夏の着物は透け感が大切。
黒とか藍とか緑とか暗い色でも透けて下の白い襦袢が写るのでとっても涼しげにみえる。
それでも白い色を何処かに持ってきたい方は、半襟、足袋、日傘を白に。
手に持つハンカチーフはレースの白に。バックを洋服用の白いものでもそれはそれでお洒落である。若い方なら白いポシェット・・・というのも可愛い。あまり難しく考えない方が良い。


   
   
麻の襦袢、麻の半襟、麻の足袋を合せて日傘をさして楽しんでいただければ、洋服では味わえぬ涼やかなひと時をお楽しみいただけるのではないだろうか。自分だけではなく見る人にも爽やかな一陣の風〜・・・・それも着物の楽しさである。
真夏に着る着物が寒い雪国、越後で雪に埋もれながら黙々と作られているのも涼しい気持ちが伝わってくるようで嬉しい。

ちなみに現在は「青苧」(あおそ)から作られる糸は福島県昭和村でほとんど作られている。
 




        雪中に糸となし
        雪中に織り
        雪水に洒ぎ
        雪上に晒す
        雪ありて縮あり
         ・
         ・
         ・
        されば越後縮は雪と人と気力相半ばして名産の名あり
        魚沼郡の雪は縮の親といふべし                  

                                   鈴木牧之の「北越雪譜」より


       
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今日の1枚は題して   
             
                〜  帰ろ、帰ろ・・・お家に帰ろ〜♪   〜



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ついでと言っては何だけれど・・・・今日の一言

           
                〜 ぬちぐすい 〜

ぬち・・・は「いのち」  ぐすい・・・は「くすり」

沖縄の言葉である。「ぬちぐすい」は「いのちのくすり」という意味。
沖縄で起死回生用として伝えられている食事・・・というよりくすり。

どんぶりにたっぷりの鰹節、おろしショウガを小さじ1〜2 薄口しょうゆを掛けて蓋をする。
一分蒸らしてスープだけを呑む。時に梅干しをしのばせる。


辰巳芳子 スープの手ほどき 和の部 (文春新書)

辰巳芳子 スープの手ほどき 和の部 (文春新書)



この本にどれだけ今まで助けられただろう。
家族が悪い時、自分が悪い時、動けぬ時・・・・、もうだめかも・・とあきらめかけた時。。。。
高熱で動けぬ時、手術の後一人で動けぬ時、自分が動かぬと食べ物が口に入らぬ時・・・・
生きるか死ぬかの時ですらこの本一冊あれば何とかなると思わせてくれる力がこの本にはある。
本来食べ物とはそういう力を持っているはずなのだ。
辰巳芳子さんは書の中で書かれている。

    「生きるということは命を完成させること」

「ぬちぐすい」とはこの本に出てくる沖縄の起死回生の自己救済術の一つ・・・
今日のブログはこの言葉でおしまいにしよう〜♪