和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

草履について〜♪

最初は簡単に考えていた。
このブログのこと・・・



仕事の延長線上だし、自分のパソコンキーのタイピングの練習にもなる・・
更に、私と言う人間の灰汁や癖や考え方なども分るだろううから嫌だと思う人は最初から来ないだろう・・
沢山ある着付け教室を選ぶ時の参考にもなるだろう・・・それが親切と言うものだ。
着飾りたい方が「和装組曲へ来たのは失敗だった」という時間や労力の無駄も悔しさもないはず・・
何よりそういう方々に時間を取って私が応対する親切丁寧(かなり嘘)な指導の無駄も省ける・・



世の中そんなに甘くない。
いいことばかりじゃあないのだ。

いいことずくめは幻想。
表には必ず裏が付くのだ。そしてそれは切り離し不可能なのだ。
ノートの1ページ目と2ページ目と一緒。
まあ、どちらが表になるか裏になるかはその人次第だろうが。


「草履」という題で何をくどくど書いているのかと言うと、自分の触りたくない領域まで質問されるのだ。
何でも書いてくれる・・教えてくれる・・と読者は思うようだ。
何言っているの・・・書きたくない事もあれば、書けない事も有るのだ。
いや書けない事の方が圧倒的に多いのだ。

特に私のこの性格。
とっても面倒くさいことはできれば避けたい。
さらり〜さらり〜と牛若丸のように身をかわしたい。
(牛若丸は古すぎか・・でも知らない方も無理にでも付いてきて!!)



少し前にメールをもらった。
そのうちに・・機会があれば触れましょう〜・・・と返信しておいた。


 
  *******************************  
  
   お祝いに美しい草履を頂いたのですが、自分には少し窮屈な気がします。
   痛くなく履くことは可能ですか?直してもらうにはどうしたらよいですか?
   幾らぐらいかかりますか?どれぐらい日数がかかりますか?

  ******************************* 

ただで聞けるので何でも聞いて来る。(笑)何処までも聞かないと損〜の勢いである。
これが一つ質問するごとに料金が発生すると多分どうしても知りたい事、1個の質問になるだろう。
雲龍柳はとても親切丁寧(は、は、は・・これも真っ赤な嘘〜)だからして、キチンと分る範囲でお答えしよう。
無償で〜・・・ここが大事。無償と言うのは責任が発生しない事が多い。
であるからして、多少独善的でもご容赦願いたい。
小さな事に突っつかないように・・・。
(そのうちはてなさんから質問一個につきポイントを下さるようになると嬉しいのだが・・・私はすでにあり得ぬ妄想の世界にはいっているようだ・・・笑・・)


小物に関して今まであまり触れていなかったので今回はご質問も有ったことだし、「草履」について書くことにする。
というのは今回どうしても着せ付けで鼻緒を直さないといけない事もあったので・・・。
(こんな風に書くと見逃さぬ人が必ずいる。雲龍柳の所に持って行けば鼻緒を直してもらえる…それもただで・・・と。
とんでもない勘違いである。基本自分の事は自分でしよう・・・という強いメッセージを常に発している所が和装組曲という所なのだ。
勘違いしないように・・・。)


草履は現在のような形に落ち着いてきたのが明治時代だと言われている。
また、素材として靴の素材である皮が使われ出したのが昭和初期と言われている。
ではそれまではどうだったのか・・・

もともとは大陸文化を受けていた日本では上流階級では「靴」を履いていた。
今で言う靴とは随分違うのだが、それは又いつか・・・以前平安装束の所でちらりと触れたと思うのだが、「しとうず」という紐で結ぶ足袋を履き、木をくりぬいた物に布などを貼った木靴に近いものを履いていたのだが・・・ここではここまでにする。でないと物凄い長さになりそうな予感を感ずるのは皆さんだけでなく私も一緒。

その時の庶民は裸足。
やがて藁とかイ草とか、竹の皮などで編んだいわゆるゾウリを履くようになりそれが「草履」の文字の起源になったようである。
実はいつか草鞋(わらじ)の話もしたいと思っていた。草鞋の話は物凄く面白く興味深い。(勿論私にとって。)人間の知恵を感じる最たるもの。私は小さい時に菰(こも)や筵(むしろ)を編むじいちゃんの横で草鞋の作り方を習ったので。最近古民芸でよく売られている布草履ではなく縄で編んだ飛脚などが履いていたそれである。それは又いつか・・・時間のあるときに。

その後どんどん進化して草から紙、コルク、などを経て現在のような素材になったようである。
色んな種類の色や素材として発達したのは戦後・・・とか。
現在はお店で売られているのが既にセッティングされたものである。
しかし、自分で好きな台と鼻緒を組み合わせることは元々自由にできる。
男性用は「雪駄」というのだが、これまで触ると物凄く長くなるので今回はご質問の方ように女性の「草履」のみについて。


大きく分けて
  ・礼装用(振袖、留袖)
  ・準礼装用(訪問着、色無地用)
  ・お洒落用(小紋・紬用)

昔と違い着物そのものを余り着なくなったので厳密に分けて全てを持っていると言う方はそう多くはないと思う。
礼装用と準礼装用を併用したり、準礼装用とお洒落用を併用したりして使用していなさると思う。



へたくそなお絵かきであるが、文句を言ってはいけない
ないよりましである。
向かって左が草履の裏、真ん中が真横から見た所、右が上から見たところである。
雰囲気さえ伝わればいいのだ。(どんな時も自己弁護、自己擁護・・・自分を守るためなら先手必勝さ)

1.底  2.かかと 3.鼻緒 4. 前つぼ 5.台 6.後つぼ

横から見た時分りやすいように色を違えたのだが、その境目を「巻き」という。
礼装用などでここに幾つも巻きが入り台の高いものほど格が高いと言われている。
草履を選ぶ時に参考にされたし。

で・・・今回ご質問のあった鼻緒が痛い・・・と言うことについて。
実は鼻緒を調整する事が出来るのだ。
勿論買ったお店に持って行けば職人さんがとても素早く直して下さる。
しかし頂きものの場合や近くに直せる職人さんのいないデパートなどでは時間がかかったり、丁寧に断られたりするので中々面倒である。
遠い専門店に送ったり、日にちがかかったり、なおかつ手数料、送料、工賃まで払って更に足に合わない・・と言うこともある。
で・・・自分で治す方法を書こうと思う。
自分で私はするのだが、心配な方は専門店に出されることをお勧めしたい。
ただ自分で直すと自分の足に合うようにできることと、回数を重ねるたびに早く上手にできるようになる利点はある。
自分で治す時には上の図の赤い丸印の中を触ることになる。
足の親指あたりが窮屈なら前つぼの方を・・・足の後ろの方が窮屈でスッキリ足がおさまらないようなら後つぼの方を。

前つぼの方は以前

「山ぶどうの下駄」
http://d.hatena.ne.jp/umryuyanagi104/20111117/1321485539

のブログでちょっと触れたことがある。
で今度は後つぼにする。
 
絵で書いてもへたくそな絵なので此処からは写真にする。

まずは真上から見た草履・・・
これは以前25.5センチの方が履いたもの。前に履かれた方の足の形になっているのはお許しを。
今回27センチ近くの人が履く予定。
しかも甲が高いのでちょっと鼻緒を緩めたい。
勿論台の大きい物を手に入れられればそれに越したことはないのだが。
何とか鼻緒で調整する事にした。

横から見るとこんな形。
この草履は巻きがない。
素材は艶を消した皮。


裏はこんな形。
ボランティアで着せ付ける時の為の貸し出し用なので何度も履いてもらっている。
(ここで読む方は「えっ?ただで着せ付けてもらえるの?」と思われるかもしれぬが日本文化を学ぶため来日されている外国の学生さんのみである。
「私・・・日本語わからない・・・」等と言って和装組曲に来るという、よくない料簡を起さないように。)



ここで我が愛用のミニ工具。
何でもしないといけない、お婆人生の毎日。
案外それはそれで楽しいものだ。


今回はこの工具をチョイス。



で・・・この工具で何をするかと言うと・・・


針をはずす。
中をめくると・・・・こういう状態。


そう・・・鼻緒の中には綿が入っていてその芯は麻ひもなのである。
しっかりと綺麗におさまっている。


麻ひもを緩めると・・・


鼻緒を緩めることができる。


緩めたいだけ緩めて・・・・


麻ひもをしっかりと結ぶ。



鼻緒を緩めたものと緩めないものとはこれだけ差ができる。
勿論緩め方は各人のお好みなので自分の足に合せながら調整すればよい。

もう片方の鼻緒も同じように緩め、最後は裏の針を木づちもしくは金鎚で打って出来上がりである。

此処で注意する事が二点。

まず一点目・・・
向かって右の草履は鼻緒を引き上げる時後つぼの皮がちょっと飛びあがっているのがお分かり頂けますか。
向かって左のように綺麗に「つぼ」の中に入れること。皮に傷がつかないように工具でできる。

そしてもう一点・・・

鼻緒を後つぼに入れる時に鼻緒をすこーし半回転してねじってあげると履くときに痛くない。こことっても大事。
向かって右のようにそのまま真っ直ぐに入れ込むと長時間履いているととても足が痛くなるのだ。
お店で売られている草履でもちょっと値の張る物はこの辺が実にきれいである。
反対に物凄く安い物は向かって右・・・・(笑)
また草履はなるべく裏にも神経を行き届かせて選んでほしい。
シールをめくると麻ひもの下に紙とか、コルクとか、木とか、樹脂とか、プラスチックとか・・・いろんな素材が顔を出す。
昔は紙で作られたものが多かったため、雨の日には草履をはくとすぐダメになる・・と言われたようだ。
今ではプラスチックなどの合成樹脂っぽい物が多い。
私は物凄く高いコルクを見たことがある。
こんな話をしだすと物凄く長くなるのでまた・・・いつか。


鼻緒の緩め方は誰でもできるよ・・・といいたいができない人もいる。
荷物の梱包が下手な方は案外こういうことも下手である。
段ボールに掛けたビニールテープがすぐ緩む・・・と言う方はやめた方がよい。
シールの中の麻ひもの縛り方がまずいと履く度に緩んでくる・・・ということもあるかも・・・。

だだどんなことも回数をこなせば段々上手になってくるものである。
大切な事は
「何故?」「どうして?」「何処が悪い?」
色々考えることである。

それもそれで案外楽しいものである。

前にも書いたように草鞋の履き方、紐の結び方をやると何でもしっかりとした結び方ができるようになるものだが、此処では余りに長くなるので・・・又いつか。そんな機会があるんだか・・・ないんだか・・・。何と言ってもできないからどうということもない事だから・・・。
できない方や不安に思う方はお金を払って時間的余裕を持って専門店に出して下さい。
くれぐれも私の所に送って来ないように。

ではでは・・・・皆さん、またねん。