和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

秋の風


琵琶の音が少しささくれ立っているような・・・

糸のすり減りが目立ってきている。

「糸を変えよう」と突然思い立つ。

ついている四本の糸を全て外す。

 

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絃が切れないと滅多に変えないのだが、この日は何を思ったか一挙外した。

 

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首の竹の部分に石蝋を塗る。

 

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糸の滑りをよくするため。

これがないとキシキシと音がする。

 

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向かって左から一の絃、二の絃、三の絃、四の絃となる。

 

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一の絃を張る。

順次張ってゆき・・・・

 

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完成。

全部張り終えた。

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習い始めた時はチューナーなど使わないので一本ずつしか張り替えるのができなかった。音を確かめながら今日は四の糸・・今度は三の糸・・というように前後左右の音を聞きながら恐る恐るの張り替え作業だった。チューナーを使うようになってすっかりチューナーだよりになってしまった。

大体が音感ゼロ、私の耳はバカ状態。

 

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先日神社の集会所を借りての全員で合同練習。

コロナ感染が心配で中々狭いところで全員集まれないので久しぶり。

いゃあ~とても楽しかった。

今の方々は本当に音感がすこぶる良いのでうらやましい。

特に若い時に楽器を触っていた方はやはりスバ抜けて正確である。

私は「ねえ・・この音、あってる?」などと生徒さんに聞きながらの参加。

「ずれてる!!少し高い!!」と指摘を受けながら調整している。

「今度は上がっていく時は大体いいけど、降りてくる時のラとㇷァが少し低い!!」

音というのは聞いているその瞬間は分かるのだけれど、時間がたつと音が私の頭から消えていていつの間にか他の音に微妙にすり替わっているようだ。しかも押さえる指の感覚だけで音を出しているので毎回違う音になるのだ‥(笑) 精進するしかないね。

すぐに聞き分けられる人って凄い。

先生の身としては本当に恥ずかしい限りであろうが、案外と本人はめげてはいない。(笑)ローマは一日にしてならず・・・である。

すぐにできないのは今に始まったことではない。

しかし、何をさせてもどん臭いのよね、私。。。

中学の時のリードバンドのアコーディオン担当だったが、コンクールの時に「お前は絶対音を出すな」と言われた経験がある。音感もさることながらリズム感が全くなかったらしい。さっさとやめて英語劇のクラブで「ベニスの商人」に挑戦したっけ。デュークか何かの役柄だった。このことは以前中学時代の話としてどこかで書いているはず。

 

ここでちょっと調べてみた。

「中学時代」ではなかった。「私のボイストレーニング」だった。

記憶までややこしい。

参考までに  

 

umryuyanagi104.hatenablog.com

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案外さみしい記憶のはずなのに傷はない。というか、この程度を傷と言っていたら私は全身傷だらけになってしまう。正しい選択をするための一つの「辻」だったのだ。話は違うが「辻」という漢字は音読みがない。こういう字を「国字」という。「辻」の他に「峠」とか「躾」とか「榊」とか。私はこの程度しか知らないがかなりの数あるらしい。「躾」は着物で使うのでその時に気が付いた。

話を元に戻す。今まで琵琶を習ってきた時に自分が全く気にもしなかった「音の正確さ」というものに今向き合っている。琵琶の場合どの程度まで正確さを求められるかは今からの課題。何とか私でもどうかなる範囲であって欲しいと切に願う。まあ今後に期待してくだされ。

 

これからもどうぞよろしく・・・~・・♪

 

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      すすき葉のさ青長葉のしげり葉の

            するどに垂れて風あらずけり (木下利玄)

 

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      身の透けて心あらはになるごとき

            秋の日向の白きに遊ぶ (富小路禎子)

 



夜静かに本を読むのが楽しくなるこの頃・・

久しぶりに短歌の本を開いたらなんだかとても新鮮だった。

もっともワインの量が目茶目茶増えるのだが、それはそれで又よし・・・・

 



 

     

吉野間道

 

今回は着物の事を書くことにする。

 

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最近我が家の庭を自分の庭だと思って住み着いたらしき黒猫

 

 

           ☆ 「吉野間道」 ☆

 

紺屋の白袴」という言葉を皆さんは聞いたことがないだろうか?

「紺屋」というのは染物屋さんの屋号と思ってもらっていい。もっとも今は使わない。昔の話。藍色で白生地を染める業者を「紺屋」といった。読み方は「こんや」とか「こうや」とか読んでいた。それが次第に染物業者一般に「紺屋」という言い方をするようになった。「紺屋の白袴」というのはよそ様の染物仕事ばかりして自分の袴を染める間のないことから「人の為ばかりに働いて自分のことをする時間がない事」をいうようになった。私は子供のころよく母からこの言葉を聞いた。同じように「紺屋の明後日」という言葉も。仕事が忙しすぎて常に遅れがちになることから仕事を受けてもなかなか期日通りにいかない時などに使われる。着物の仕事をするようになって分かったのは藍染めの仕事は天候に非常に左右される・・ということ。自分がしようとしても天気次第で思うとおりに仕事が運ばない最たる職業だったに違いない。

前置きがものすごく長い…・・・

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大家族

 

 

「え?これ、前置き?」

そう、単なる前置き。何故ならここからが本題。

「灰屋」に持って行きたかった。

「灰屋」というのも「紺屋」同様仕事からくる屋号である。

今のように化学染料や化学媒染剤がない時代、「灰」を媒染剤として色を定着させたり、色止めをしたり、はたまた色を変えたりする事で染色の仕事をしていたお店。「灰屋紹益」という人はその仕事で豪商となった江戸初期の京都人である。本阿弥光悦の親戚筋に当たる方で、書、絵、和歌、など各芸事に精通ししかも当時の一流人たちと深く交流し、書物まで書いている。この「灰屋紹益」色んな逸話を残しているのだが、その中でも当時の花魁「吉野太夫」との事はとても有名。「吉野太夫」は京都の寛永三名妓と言われた「吉野太夫」「夕霧大夫」「高尾太夫」のうちの一人で、父親は西国の武士と言われている。

和歌、俳諧、琴、琵琶、書道、花、囲碁などどれをとっても達人の域だったとのこと。こういうことは尾ひれがつくので何処まで本当かは不明であるが、とにかく美しく聡明で優しい人だったようだ。大夫になったのが14歳くらいだったはず。時の関白・・この人は天皇の親戚筋であったらしい・・その関白が吉野太夫を見受けしようとしたという話もある。関白と灰屋紹益は吉野大夫を挟み張り合うのだが、結果的には灰屋紹益が見受けしめでたし・・となったようだ。灰屋紹益の養父は花魁を妻にしたというので一時、灰屋紹益を勘当したとも言われている。ただ吉野太夫の人柄を知りやがては勘当を解いたという話も残っている。その吉野太夫に灰屋紹益が惚れ込み数々の贈り物をするのだが、その一つに珍しい帯があった。その帯がこの「吉野間道」である。

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久しぶりのアオサギ

 

大体「間道」というのは古い縞模様のこと、室町から桃山時代あたりに渡来した格子縞、縞柄を言う。縞の一部に浮織のあるのが特徴で名物裂(きれ)である。

名物とは有名な茶人が名品と認めた茶道具をいうのだが、その茶入れや仕覆、掛け軸、表具、袱紗などに用いられた裂(きれ)を名物裂というのだが、吉野間道もその一つとされている。そのほかには有名なところで

日野大納言輝資(ひのだいなごんてるすえ)所持の日野間道

笹蔓間道、小松弥兵衛にちなんだ弥兵衛間道、聖徳太子に由来する太子間道・・・この辺りは着物二級受験する方は抑えておいた方が良い。もう少しで、今年もきもの検定だね?今年は和装組曲から二級を受ける方が4~5人いるはず。コロナの影響でどうなるかは不明だが、試験会場に応援に行くね。

 

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柵(しがらみ)を超えて

 

笹蔓間道と太子間道は以前ブログで写真を載せているはず。笹蔓間道はいろんなところで目にするのでそんなに珍しいものではないのだが、太子間道はまずお目にかかれない。ただ京都の和泉博山氏の工房で糸の染色から正確に復元されたものは写真で確か載せているはず。

今回「吉野間道」・・・

吉野間道は臙脂、白、茶、深緑、などの細い縞で囲まれた太い縦縞と真田紐状に織り出されている浮き織横縞を組み合わせたものといわれていて、時には格子模様もあるのだが、立体的な縞模様が特徴。

吉野間道を糸の染から草木染に拘り再現しようとされている方の帯があったのでそれをお見せすることにする。これは私好みの実に渋いものなので見ていて面白くはないだろうが、独特のこの織の雰囲気だけは伝わるのではないか、と思う。

 

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使われている染料は

「鬼胡桃」「揚梅(やまもも)」・・・白茶、茶

「矢車附子(やしゃぶし)」・・・茶も黒

「藍」「臭木」・・・青、水色

 

   ↑  このあたりの材料と媒染剤で色がどう変化するかも抑えておくべし

  これに臙脂などが入ると随分鮮やかになるだろう。又赤系や紫系を糸に入れたかったら、動物染料であるコチニールなどを使うと鮮やかな色が可能となる。

二級を受けるときには苦手かもしれないけど草木染の種類や媒染剤は絶対目を通しておくべき。もし二級で役に立たない出題傾向でも一級では必須。頑張って損なことはない。

 

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ちょっと分かりにくいかもしれないが真田紐状の縦横の浮き織がわかるかな

これがこの間道の特徴。

 

 

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実際お太鼓になる部分はこんな感じかな。

ただ糸も紬糸だし間道という柄からしてもこの帯は格の高いものにはならない。

ただ名物裂なのでちょっとしたお茶席にはOK。

私は江戸小紋と合わせて着る。

帯で着る。

 

黒も完全な黒ではなく、墨色に近い。そこがまたいい。

草木染は何度も何度も糸を染めて色を濃くしていくのでものすごく手間がかかる。でもそれだからこその奥行きの深い味わいがある。化学染料の黒とは一味違う。昔の方々は蚕を飼い、糸を紡ぎ、こうやって身近な植物を使って草木を煮出して、糸を染めてそして一織一織、夜なべ仕事にして織っていったに違いない。

経糸緯糸の織り成す無限の空間・・・

かすかにに感じる歴史の香り・・・

人の手作業で作られたものはどこか暖かい・・・

 

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千利休、今井宋薫、古田織部小堀遠州、更に松平不昧・・・

そう、松平不昧はこの吉野間道の写しを自ら中国に注文したことでも有名。

その美しさに魅せられた茶人たちをちょっと忍んで今回は「間道」について、中でも「吉野間道」を書いてみた。ではでは・・またね。

次はいつになるんだか・・・(笑)

 

と終わるはずだったのに、一つ書き忘れていたことに気づいた。

吉野太夫と灰屋紹益との間には色んな逸話がある。本当だか、作られたものだか、今ではわからないでとても多いのでなるべく脱線しないように書いたので(信じられないだろうけど、本当 !! )面白い話もいっぱいあったのだが、今回は着物優先。間道優先。そう思って横道を横目にまっしぐらに進んできた…進んできたけれどこれだけは最後に書かせて。

吉野太夫は三十代後半に亡くなった。灰屋紹益は吉野太夫より確か四つか五つ下だった。遺体を荼毘に付し全て灰にした。そして壺に入れ身近に何時も置いていたとか。そして毎晩飲む酒の盃にその灰を少しづつ混ぜながら飲んだと。最後にはすべて灰を飲み切ったというのを何かで読んだことがある。灰屋紹益の「灰屋」ならではだと妙に印象に残っている。

 

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ヒヨドリの幼鳥・・母を探して鳴く?

 

 

 

 

錦心流琵琶全国一水会 加賀支部

明日8月1日より新しい支部が始まる。

念願だった。

しかし、正直まだまだ4、5年は掛かると思っていた。

思いもかけぬ沢山のお弟子さんが集まった事と、そのお弟子さん方が頗る真面目で優秀だった事、皆んなとても律儀で善良な方々だった事が私の中では大きかった。

思い切って本部に申請したのだか、この度許可された。関係者の皆様本当にありがとうございます。身の引き締まる思いです。



私自身まだまだ未熟者である事は充分承知しているが、お弟子さん達と楽しくて何処にも無いような新しい支部を運営して行こうと決めた。前途は山あり、川あり、イバラ道が待っているだろうが、この仲間達となら、何とか乗り越えて行けるだろう。

そしてこのメンバーなら例え私が居なくなっても力を合わせて琵琶の普及に努めて行ってくれるに違いない。互いに切磋琢磨して琵琶のスキルを上げて行ってくれるに違いない。


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今までの看板「着付教室」と「琵琶教室」に



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新しくもう1つ加わった。



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錦心流琵琶全国一水会  加賀支部 

である。

明日から新しい支部として動き出す。


こんな社会情勢の中で、しかも残りどれだけあるかわからない人生で、更に新しい夢に挑戦できる事に心から感謝したい。


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琵琶を始めてからの年月を思うと、辞めなくて良かったと改めて感無量である。


                    皆んな、本当にありがとう〜♪

  

                     皆んな、頑張って行こうな〜♪


山葡萄の下駄 4

山葡萄の下駄で4まで続くとは思わなかった。

でもここまで来たらもう書くしかなかろう。

 

昨日遂に・・・届いた。

山葡萄の下駄。

修理完了。

包装紙も洒落ている。

亀甲花菱か・・

ひょっとして亀甲剣花菱かも。

 

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電話の方は流石達筆。

しかも文が実に良い。

 

ドキドキ・・はやる心。

 

どうだ!

 

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 山葡萄の傷みはキレイに修復されている。

鼻緒が後ろ壺に実に良い角度で入っている。

この捻りがないと履きにくいのだ。

 

umryuyanagi104.hatenablog.com

 

 

 

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お〜っ、実に美しい。

 

 

 

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桐の柾目が台の所に来るようにそれは美しい。

痛まないように裏にゴムを貼ってくださったんだあ。

北国では雨や雪で滑りやすいのでゴムがないと超危険。

しかも直ぐに減っていくヤツではない。

中々頑固なゴムである。

鼻緒のすげ処理もそりやあ見事。

麻の鼻緒芯も真新しくしっかりとしていて美しい。

 

完璧〜♪♪♪

 

ありがとうございます〜☆

 

折角なので記事に花を添える。

 

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ついでに蜂も添えた。

 

 

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多分蜂は・・・

 

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フタモンアシナガバチ・・・とみた。

違っていたら教えてたも。。。。。

 

今回で山葡萄の下駄は「   お・し・ま・い  」である。

ちやんと修復できるかが頗る心配であったが、何とか無事終わった。

めでたし、めでたし、である。

山葡萄の下駄 3

散歩途中で見かけた牡丹の写真を挟みながら「山葡萄の2」の続きを書く。

 

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「東京や京都、大阪ならいざ知らず、こんな所に果たして下駄を直してくれる店があるんだろうか?」

半信半疑ながら「材料の仕入れから販売まで一貫して・・・」という歌い文句に惹かれて恐る恐る電話してみた。

何十という店、問屋にアクセスしても体良く断られたり、やんわりと新しい山葡萄の下駄を勧められたりもした。気持ちは完全に底値安定(笑)テンション下がりっぱなし。

 

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「新しい山葡萄のを買われた方が貼り替えるより安くあがるんとちやいますか?」と。「新しい山葡萄のは幾らしますか?」「五万も有ればお釣り来ます」と。「それって日本製ですか?」と言う私に「日本製って、あんた。このグローバルな時代に・・」と。グローバルかあ?時代に取り残されたお婆ちゃんに思われてしまった。ある意味、当たってはいるのだか。

中には「山葡萄?いつの時代の話?」と言わんばかりの応対もある。「二千円で真新しい下駄が買える時代に貼り替えて欲しい?」と言わんばかりの正直ムッとさせられる応対もあった。

 

電話をかけるたびに意気消沈する私であるからして、恐る恐るという心境にもなって行くというもの。「無理なんかなあ〜」と半ば諦めかかっていた。此処で駄目なら、暫くこの下駄はお蔵入りやなあ。

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長い電話の呼び出し音のあと

「はい・・」

出られた方は相当年配のお婆ちゃんらしき。

「直ぐ出られませんで・・」

ハアハアと息を切らしながらドッコイショと坐られている気配。

「すみません。下駄を直して欲しいのですが、お願いできますか?」

という私に

「出来ますよ」

即答された。

 

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「山葡萄の下駄なんですが。」

分かるかなあ、と恐縮しながらも尋ねる私に間髪いれず、

「いつ買われたものですか?」

と畳み掛けられた。おっ?出来るな、お主。

「25年位前でしょうか?」

答えながらこのお婆ちゃん、誰か話の分かる職人さんに代わってもらえないかなあ、とも不埒に考えてもみる。

しかし、次の返事には驚いた。

「25年前位なら、青森の材を使っていると思うの。先ずは修復できますよ。最近の物は体裁はいいけど海外の産だから痛んだ蔓を変えるのが中々難しいのよ。うちは国産しか使ってないので。まずは見てみないと。」

 

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その方、

「山葡萄の下駄をはいたら、他の下駄は履けないよね?」と。

そうなんよ。履いている時の足の美しさや、脱いだ時の下駄の美しさは塗りの下駄に勝る物はない。でも履き心地は山葡萄の下駄に勝る物はないのだ。履いた人しか分からない。

 

仏様に逢えた気分。

一頻り山葡萄の話で2人で盛り上がりスッカリ気分はお友達。お婆ちゃんの病気や病院通いの話なども交えながら

「どの程度の傷み具合か見てみないと費用の見積もりは出来ないので一度送って」と。

山葡萄の台が傷みが激しくても代わりの蔓で修復も出来るから安心しなされ、とも。

「あったのね、こんな所が。やっぱ絶対いるのよ、凄い方々が。」

 

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直ぐ送りますとも。見積もりなど取らなくていいので確実に直して貰えればそれでいい。話の応対からの感じでは、とても誠実で律儀な雰囲気が伝わってきたから。セッカチな私は直ぐ包装し送った次第。郵便局に行く私の足はスキップしていたに違いない。直るぞ、直に〜♪。やっと又履けるよ、これを。嬉しい〜♪

 

後日・・

山葡萄の台の痛みは殆んどないので台を変えれば綺麗になりますよ、と連絡を受ける。神様だね。台は桐にした、鼻緒は私が勝手に選んだと(笑)。彼処まで地味な鼻緒はないので、渋目の鼻緒に前壺は赤のものと。「赤かあ、・・」と一瞬思う。でも贅沢は言えぬ。

その私の一瞬の沈黙が分かったに違いない。

その方間髪いれず

「渋好みは分かっている。あなたのこんな鼻緒は地味過ぎてそうそうはない。まあ今回はその辺で手を打ってください。鼻緒は申し訳ないけど高いよ。小千谷縮だしね、裏は本天で7500円よ。」と電話口で笑っていなさる。構いませんとも。小千谷縮なら致し方ない。

 

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小千谷縮で裏は実は本天という鼻緒で7500円は決して高くはないのだ。小千谷縮は知らない方は検索してくだされ。直ぐ分かる。

 

umryuyanagi104.hatenablog.com

 

umryuyanagi104.hatenablog.com

 

問題は「本天」。ホンテンと読む。本物の絹、しかもビロード。ビロードは漢字で「天鵞絨」と書く。絹の天鵞絨である。鼻緒の裏は常に皮膚に当たるので素材は大切。当たりは柔らかで化繊に比べ耐久性も悪くない。「本天」、時々使われるので着物検定を受けられる方は要チェック。

 

かくして、連休中に修復して送って下さるとのこと。皆さんに美しくなった姿お見せできる。

ちなみに時間を作って今度その工房を見学させて貰うつもり。

 

 

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東南アジアや中国の材料を使っているとこんなご時世、材料が入らないということもある。このお家のように国産に拘り全ての作業を自社工房で賄っていると関係なく仕事をこなされている毎日であるとか。

ちなみにお婆ちゃんが直されるの?

と聞く私に、いやいや「息子!」

「昔は夫がやってたんだけど・・」

とシンミリ。

そして電話で色んな事を話しながら分かったことはその方は私と大差ない年齢のようでもある。

まあ、私も充分お婆であるのだが。

 

牡丹は艶やかで華やかではあるけれど牡丹ばかりを見ているとフッとツツジが新鮮に思えた。

 

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綺麗に直って送られてくるのを待ちましょ!

 

 

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山葡萄の下駄 2

以前9年前に「山葡萄の下駄」を書いた。

 

d.hatena.ne.jp

4、5年前に突然コメントがあった。

tさんという方からだった。

「その下駄は今どうなってる?」

「そのうちにアップしますね」

と答えた。忘れていたわけではない。

忘れていたわけではないのだか、お見せできる状態ではなかった。余りにもバタバタと傷み酷かったから。

 

暫く休みもある事だしと、その下駄を直しに出そうとネットで検索。

何処かがきっと直してくださるはず、と。

ところが何処にも悉く断わられた。

京都の下駄屋さんにも、東京の下駄屋さんや問屋さんにも。

買うときは100年持ちますよ、とかいつでも貼り替えます、とか言っていたのに。ちなみに買ったお店は既に廃業していた。

山葡萄の表面を剥がして、新しく台を作り其処に剥がした山葡萄の表面を貼る、それだけの事ではないか。段々腹が立ってきた。何をそんなに勿体をつけるのか・・・

しかし問い合わせた問屋さんと色々話していて気づいた。事はそんなに簡単ではなかった。

今はこんな感じ。

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上から見るとまだ履けそう。しかし

 

 

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踵がもうない。

 

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常にアキレス腱を伸ばすリハビリ用にしか見えない〜(笑)

鼻緒も泥染の渋い奴だが、過酷な使い方に遂に耐え切れず〜

台もさることながら、鼻緒も変えないとあまりである。

下駄や草履の衰退は着物の衰退から想像に難くない。今は杉や桐の下駄などより安価で手頃なプラスチックものばかり。磨り減ったら捨てるのである。ましてや山葡萄など張り替えるなんぞ今の時勢やる人がいるわけない、と電話口。しかも下手をしたら山葡萄の皮を剥がす時万が一失敗したら弁償物。誰だってそんな危険をおかしたくはない。もし上手く何とか形になっても傷んでしまった山葡萄の蔓までは修復出来ない。いやあ昔は傷んだ蔓まで綺麗にそっと抜いて新しい蔓を入れて修復する職人さん、居たんだよなあ〜〜と懐かしむ人もいた。今は輸入物の山葡萄使っているからねぇ…と。そして「今は無理、諦めなはれ・・」ときた。

そうかい、もう頼まぬ。自分で探す。

きっと何処にいるはず。

「任せな!」

そして言う。

「綺麗に直してやるよ!」

「姐さん、待ってな!」

と。

「うん、待ってる~♪」

私は少女のように答えるのだ。

きっと私の目はキラキラと星が輝いているはず。

(話変わるが、先週私の目に小さな何かゴミらしき物がはいった。余りにも痛いので目医者に行ってきた。何と小さな金属片とか。しかも入ったときに手でこすったらしい。その先生曰く「キラキラしてる。金属だね」目に刺さっているとか。麻酔をして取って貰った。私には3度目。小さな目の癖に何でもよく入るのだ、余談〜♪キラキラで思い出した。)

 

話戻して・・・

絶対何処にいなせな職人さんがいるはず。

 

その人は吉原繋ぎの手拭いを頭に巻いている、きっと、首に下げているかも。イヤイヤ腰に下げてるかも。その三箇所ともだったら笑っちゃう。

きっと生徒さんの中には「吉原繋ぎってどんな柄?それも分かりやすく出して!!」

という人がいるはず。それくらいは自分で探しなはれ。

自分で調べたものしか記憶には残らないよ、きっと。

 格好いい柄さ。案外男物の浴衣に多い。若々しい柄。

かくして山葡萄の下駄復活作戦が始まった。

以下、次回という事で。

は、は、は・・・・いたよ・・・・

4/20発売の月刊「金澤」5月号

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散歩はしてもちっとも構わないとの事。

でも散歩していても何となく閉塞感。

早くコロナが終息して欲しい。

せめて少し終息の兆しが見えて欲しい。

そうすれば気持ちも少し明るくなるに違いない。


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農家の方は黙々と仕事をしていらっしやる。


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我が家の牡丹も知らぬ間に蕾を付けている。

見習わないと。

私も粛々と自分のやるべきことをやっていこう。


さて、今日発売された月刊「金澤」に見開きで私がでている。撮影は先月スタッフの方々がマスクを掛けて撮影して下さった。私も撮影のその一瞬マスクを外した。マスクのゴムの跡がついているのではないか、気が気でなかった。大丈夫そう。


実は発売日は聞いていたのだが、コロナで日々過ごすうち、スッカリ失念。生徒さんからの「見たよ〜♪」メールでハッと思い出した次第。


着物を時代が好調な時にだけ許される贅沢な物として捉えたくはない。着物を欠く生活が如何に味気ないかを私は充分知っているから。心を豊かにしてくれるものと捉えたい。



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生徒さん方、本屋さんに行く事があったらちょっと覗いてみてね。

そして皆んなで笑いあって着物を楽しむ日がやがて来ることを祈りましょう。

きっともう直ぐ・・・

お家に花でも飾って待ちましょう。



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毎年我が家に来てくれるツグミ・・・

今年も忘れずに来てくれてありがとう♪♪♪