和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

ひと時の涼〜人としての贅〜♪♪♪

東京に行って来た。
今年はこの時をずっと楽しみにして過ごしていた。

行き先は・・・・敬愛する我が人生の師・・・である。
仕事での師でもあるし、女性としても人間としても私は自分の師匠だと秘かに思っている。
母亡きあと「我が人生の師」と呼べる人は今ではこの人だけとなってしまった。


「遠いところを、ようこそ〜♪」
と迎えて下さった此の方。


玄関には大名竹・・
飛石も美しい。



鷹の葉ススキも風流である。



涼しげな波の藍染め暖簾をくぐり玄関に入る。
勿論この方の作品である。
玄関の石には水をまかれた跡がある。
早くいらっしゃいよ、待っていましたよ・・・と声が聞こえる。


どうぞこちらへ・・・・と導かれた先には・・・





網戸もない。網戸のかわりにすだれがあり・・・


クーラーのかわり・・・


空気清浄機の変わりに炭がある。



ときおり入ってくる蚊には・・・・


微かな風に庭先の風鈴の音が心地よい。
お部屋のあちこちには、




日本ならではの情緒が息づく・・・
長欄間にこの方のスッキリとした潔さまで垣間見える。




まあまあ・・・暑い中をようこそ・・と出して頂いたお菓子とお茶。



お茶碗も菓子受けも何処から何処まで神経を尽くされ涼しさとぜいたくさ満載。
ちょっとおトイレを・・・と行く先には杉戸の美しい一角・・・



庭のお花を美しい花器にひっそりと生けられてあった。
なによりトイレの其処彼処にも藍染めの作品が使われていて「ほっ」とする空間の演出。
何処から何処まで素晴らしく落ち着く・・・という私に
「庭から取ってきた花を生けるだけ」と。
お茶もお花も書道も何も習ったことはないのよ・・と。
藍染め一筋に過ごされていらしたのに、まるでどこもかしこもパーフェクト。
古いお家なのだが、磨きこまれた美しさがすがすがしい。
何処から何処まで塵ひとつない。
昨日今日でここまでできる物ではない。

極められた方の突き抜けた凄さに感動と感嘆。



先生の手作りのおもてなしの数々・・・


上品な薄味・・・・伊万里の器も美しい・・・
丁寧なだしの取り方をされた、頂いたそうめんのつゆの味が忘れられない。
何処から何処まで手を抜くと言うことがない方でもあるのだ。


お部屋のあちこちの額、お軸、漢詩などに蘊蓄を語って頂く・・





応挙あり・・・頼山陽あり・・・鉄斎あり・・・・

贅沢な年代物の袱紗もあり・・・


ひんやりと吹き抜ける優しい風を素戸を通して感じられる。
日本の家屋の美しさが見事である。





こんな空間こそ今では物凄い贅沢になってしまっている。
しかし高度成長だの、競って消費にうつつを抜かしている時に、ひっそりと日本の良さを大切にし静に生きていらしたこの方の生き方を私は本当に美しいと思う。


あの箪笥の中には何が入っているの・・・と聞く私・・・
「見る?」と開けて見せて下さる。



先生がご自身で染められた半襟がびっしり・・・
「今度はどの半襟を付けて行こうか・・と考えるのも楽しいのよね〜」と。

別の段には・・・


タツパーに入った文香が一杯。
香りが抜けるのでこれに入れないと・・・と。
先生から頂く美しい毛筆の手紙には必ず季節の文香が添えられている。
何処を見せて頂いても美しく整理されている。

また別の段には・・・


鳥獣戯画から絵を写し取り・・そして型を彫る。


その型から美しい暖簾が出来上がるのだ。



暖簾だけとは限らない。
帯になったり、着物になったり・・・時にはタペストリーになったりもする。







そう・・・先生は江戸型紙作家・・・そして着物愛好家、文香考案者そして制作者。
数々の雑誌の取材を受けられ、家庭画報などにも幾つもの着物姿の写真を残されている。、随筆、随想も書かれ、作品展などもなさっている。このお家はNHKの「美の壺」でも公開されていらっしゃる。和文化をどう生活の中に身近なものとして取り入れるか・・・と今でも取り組んでいらっしゃる。私の母の年齢に近いながらも今でも生徒さんに教えられ作品を作られている。
庭先で藍染めをなさっている。

木と草の緑の中・・・素戸の木の色と・・・暖簾の藍の色・・・
たったそれだけの色の中で心地よいひと時を満喫。
時間はまさにあっという間。
帰らねば・・と玄関に立つ私


外は滅茶苦茶暑いのだと初めて気がついた。
美しく楽しいひと時を有難うございました。
本当に贅沢なひと時でした。



次の日は朝早くに起き・・


早々に帰ってきた。

確かに機能的、合理的で無駄のない物を追及している現代ではある。

しかし、日々の生活の中では案外機能的でないものの中に心豊かに暮らせるヒントがあるのではなかろうか・・
土の色、木のぬくもり、葉の緑、自然から取った藍の色
使い込むほどに際立つ木目の美しさ・・・
傷がつかないものが美しいのではない・・
木の小さな傷までがいとおしいと感じる事を大切だと感じる心が大切なのではないか・・・


行ってお会いしてきたのはこちらに・・・
和装組曲で以前講習会を開いて下さった方・・


http://www.wasou-kumikyoku.com/img/rireki/2011/2011-05.htm


余裕を持った心で美しい人生を歩みたいと思う。
先生の生き生きとした美しいお顔を拝見しながら自分もキチンと歩まなければ・・と。
自分の生活に何を残し、何を排除しなければいけないか・・・
何が大切で、何が大切ではないのか・・・
しっかりと見極めていかなければ。。。

人に媚びる・・・社会に媚びる・・・時代に媚びる・・・
            そういうことの全くない希有な方である。