一週間前の日曜日・・・
県立音楽堂で琵琶の会があり、私は「新撰組」を弾き語りした。
それはさておき、その時の話。
石川県の琵琶人口も少ないところに持ってきて、私自身もまだまだ新参者。
会場の準備や受付、お弁当の配布やお茶の配置など細々した仕事があり、
自分のこれから始まる演奏もそっちのけで足り回っていた楽屋でのこと。
音合わせのため、篠笛や琵琶の音があちこちできがねそうに聞こえる。
とその時、どなたかの詩吟・・・・
露と落ち〜・・・・
びっくりした。
露と消えにし〜・・・
と続く。瞬間全身鳥肌が立つ。
「誰??」「何??」
声の低さもさることながら何とも表現のしようのない素晴らしい歌声。
その方は渋いグレーの一見無地に見える着物にほとんど目立たぬ帯。
所々に金の桜がいくつか舞っている。
着姿もこれまた素敵で申し分ない。
多分自分で着られたにちがいない。実にゆったりと楽そうに着ていなさる。
「露と落ち 露と消えにし わが身かな
難波のことも 夢のまた夢」
たったこれだけの歌だったらしい。
らしい・・・と書いたのは私は上の句しか聞けなかったから。
下の句はどうもこういう句らしかったのだが自分の耳では聞いていない。
と、いうのは受付の方に呼ばれたから。
舞台が終わりその詩吟の方と話をした。
秀吉の辞世の句とのこと。
千利休が謡った・・・というなら納得できるのに「秀吉??」と驚いた私。
一週間たったが、その方の声が私の脳裏に焼き付いている。
素晴らしい詩吟、素晴らしい辞世の句・・・
これを感動と言わずなんというのか?
人の力の凄さをまざまざと見せつけられたようでその方の人生まで垣間見るような思いだった。
自分の演奏も、他の方の演奏も全く記憶に残っていない。
露と落ち・・・・
露と消えにし・・・わが身かな