和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

梅咲きぬ

散歩をするコースに公民館を入れてみた。




丁度中ほど過ぎのあたりに入るよう散歩コースを時々変えてみた。
その公民館で借りた本で面白かったのが何冊かあったのでご紹介。
他の方のブログで確か紹介があったような気がしたものが目に留まったので。



 ○ 親鸞    激動編 上・下

親鸞 激動篇(上) (講談社文庫)

親鸞 激動篇(上) (講談社文庫)


親鸞の本は二十代の時に吉川栄治氏か誰かの物を読んだことがある。ちょっと自信がない。はるか大昔のことなので。
今回は五木寛之氏のもの。
中々面白かった。大衆性というか読みやすく親鸞をとても人間的な面からとらえているところが多々。
たとえば、親鸞夫妻が口をきけぬ姪を養女にして一緒に暮らしている時に、妻が親鸞にその娘に好きな人がいるようだ、言う。しかもその相手は家庭を持っている人だ、と。親鸞は激高し思わず言ってしまう。「許さぬ!!」と。

その言葉を聞くとすかさず妻は言う。「あなたは人の思いを許すだの、許さぬだの言うほどいつからそんなに偉くなったのですか?」と。ここで親鸞は妻の顔を打つ・・・・
結果的にはその夫婦の争いを止めに入った娘が初めて口を開き声を発する・・ということにつながるのだが、このような夫婦のいさかいがとっても面白い。何と言っても時代は鎌倉。しかも人々に慕われ辻で念仏を説く親鸞の赤裸々な人間性に、いろんな意味で楽しませていただきましたよ。

型苦しくなく一挙に読める。
着物にまつわる描写も時々出てきて嬉しい。
この時代は女性はこうだったんね?僧侶は宗派によってこうだったんね?・・・と。

私は今五木寛之氏の「蓮如」を手に取っている。
どのような人として蓮如上人を描いているのかも楽しみ〜
なにせ親鸞の書を彼の死後禁書にしたのはたしか蓮如上人のはず。
しかもかたや破壊僧、かたや法王と言ってもよい人の息子。
同じ作者がどのような切り口を見せてくださるのか・・・


   ○ 利休にたずねよ

利休にたずねよ (PHP文芸文庫)

利休にたずねよ (PHP文芸文庫)



直木賞をとった山本兼一氏の著。
どなたかのブログでこの映画を見に行った感想を扱っていたので原書を読もうと決めていた。
ひゃあ〜・・・・物凄く面白かった。
一気でした。内容も以前に読んだ「豊臣秀吉」「織田信長」「徳川家康」などの書物の中で触れられている千利休のイメージしかなかったので全く違う切り口でその日は読み終えるまでには寝むれなかった。とくに高麗の女性が本当に存在していたのか、創作上の人かは別としてその描写が興味深かった。韓紅色(からくれない)に象徴されるその高麗李王朝の女性の衣服の件も面白い。又、利休の正妻がお気に入りの着物で後に正妻となる妾のところに出かけるくだりの二人の着物の衣装も面白い。お妾さんの家から出てきた着物の模様を見て「負けた」と思うあたり・・・この本を書いたのが男性とはとても思えぬ説得力であった。
養成コースの面々が何時か読まれるであろうから細部の色や模様の描写は書かないでおこう。(そう・・・女は何時の時代も意地が悪い〜♪)

床の間の椿の一輪もここまでこだわる?と言う位のこだわりも何だかすこぶる愉快。
金屏風の前には赤い椿か白い椿か・・と言うところも面白く「そうそう・・・私もそう思うわ」と、暫し参加させていただいたりもした。お茶を習う方はお茶はもとより活け花、書、香道、焼き物、懐石・・全てに知識がないといけないのね、と感動もした。



しかしこの本を読んで茶道を私も習おうかな・・・と真剣に考えた位迫力のあるお茶の情景であり、利休への興味もさることながら茶道の世界へのあこがれは尽きなかった。



  ○ 梅咲きぬ


山本一力氏の作品はどこか山本周五郎氏の作品に似た読後感がある。
ほんのり暖かく気持ちが落ち着き、ドキドキしなくても落とし所が気持ち良い。
老舗料亭の女将とその娘の話。古いしきたりや格式の中で生きる母娘の物語ではあるが、底辺には江戸の人情、心意気、そして思いやり。なにせ表紙が良い。喜多川歌麿の「立姿美人画」である。

一つ二つ気に入ったところをあげる。

たとえば母が娘を連れて傘を買いに行く件。
身分不相応のものは逆に人の笑うところ、かといって粗末なものは行けない。
色も目立ってはいけない。地味であり過ぎるのもいけない。で娘は気に言ったものを一つ見つけ出すというくだり。母は娘が吟味している中、じっと待つ。目立たぬながら一番良い傘職人の物を選び出す。何気ない文なのに感動した。

梅咲きぬ

梅咲きぬ


先の「利休に・・・」の本のなかにも出てきた。
「侘びだの寂びだのいうと人は地味であればいいように思うのだが、違う。地味で一見目立たぬ中に艶がないとただの枯れているだけのものになってしまう。何処かに人を引き付ける力がないといけない」みたいな事を言っていた。なにせ本を既に公民館に返しているので正確な言葉ではないが、そんなような言葉だった。その同じことをこの本では老舗旅館の女将に言わせているのだ。



又この店に女将の居ぬ間に30人の高級予約を受けてしまう。
ところがそれが今で言う詐欺、脅しの類と後で分かる。
散々食べて飲みその後いちゃもんつけて大金をせしめるつもり。
何処の料亭も泣きをみている。
しかし、一旦受けた予約、断るわけにはいかぬ。名がすたる。
そこで一計・・・娘の知恵で難を逃れる。逃れるばかりではなく店の名前を更にあげることになる。実に江戸っ子の惚れ惚れする気風と心意気が随所に現れ面白い。



年をとると余りに残虐な描写はどうも嫌だと思う方も多いだろうし、今の時代何処を向いても暗くて先のない話ばかりなのでたまにはこんな暖かな小説はいかがだろうか?
着物に関わる方は江戸っ子の祭りの衣装や芸子衆の粋な着物姿を想像しながら読めるのでおススメ〜




とうとう・・・我が家の梅も咲きました。