和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

NHKふれあいホールギャラリー〜♪

東京二日目は二か所・・・


まずは

      渋谷・NHKふれあいホールギャラリー
  
前回に簡単に説明した江戸型彫の矢田先生と、私の敬愛する安齋先生にお目にかかりに行く。
開場が10時30分・・。


開場はこんな感じ。

安齋先生のこの日のいでたち。後ろ姿だけうつさせていただく。

いつもながら実に粋。
江戸小紋、毛万筋の着物におもだかの帯。
物凄く美しい方であでやか。
そのくせ話をするとチャキチャキの江戸っ子気質。

一つ、二つ・・先生との会話で懐かしい逸話をご披露しよう。


     二年前の作品展の時 



「先生・・・折角なので何か金沢のお土産お持ちしたいのですが・・・何がいいですか?」
「何も要らないわよ。来てくださるだけで十分!!」
「金沢には輪島塗や九谷焼ありますし・・・」と私は粘る。
「輪島塗??あなた、そんな高いものもらった日には肩がこる。いらないわよ。」と。
「いやいや、安いのもありますよ」と私。
「安いもの?なおいらない!!」

二人で大爆笑でしたよ。
私の母もよく言っていた。
年をとると何も要らなくなる。
下手にあるとゴミになる。
無駄なものは一切いらない、と。
本当にいいもの、美しいものがほんの少しあれば十分、と。

こんなこと実にはっきり言えるのはまさに江戸っ子だね。
いっぺんに先生の事を好きになりましたよ。

     三周年のショーの前 


何せ初めての大きなショーである。
帯結び、コーディネート、モデルとの打ち合わせ、会場の準備からライト裏方さん、司会者、全ての方と打ち合わせを一人でこなさないといけなかった。勿論有る程度の事、帯結びなどのことは当時のチーム・HASEGAWAのメンバーに任せながら私は映像や照明、音量、音楽など主に当日かまえない領域の裏方の事を主に手抜かりがないか最終チェックに余念のない毎日。それでも弁当の数は数えるたびに違うし、着物やコーディネートでは予測しない手違いが起こるし、前日まで右往左往走り回る。おまけにヘアやメイクの方々のアクシデント、司会者のおうちでの不幸、出演者の突然のトラブルや出演辞退など・・・本当にショーってこんなに大変・・・とつくづく思う毎日。ここまで来たら何としてもやり遂げようとピリピリした日を過ごしていた時に安齋先生と電話で話すことがあった。

どうにもならないことを愚痴る私に
「あなた・・失敗した方がいいのよ!!」開口一番先生は仰った。
唖然とし、続いて憮然とする私・・・・にこう続けられた。

「成功していると問題点が何時までも見えてこない。」と。
「失敗したらその時よく考える。どこが良くなかったかを。自分に何が欠けているかを。」と。
「失敗こそが次の成功につながる種となるのよ。」と。
「ゆくゆく成功したかったらいっぱ〜い失敗することよ。」と電話口で高らかに笑われた。

何だか目の前がパーっと開けた。
なにせやったことがないのでパーフェクトを目指してもどこが問題なのかも、大事なのかも、分からない。
その時の考えられる最大の神経の使い方しか出来ないのだ。
ギリギリに張り詰めていた神経がふっと緩み楽になった。

成功し続けている人は詰まんないものよ・・
色々紆余曲折、苦労している人の方が味があるのよ・・・
だからそのためにも失敗をお勧めするわ・・・なんて。
優しい言葉は一つも使われないのに言葉の背後に優しい気持ちが脈々とあるのがわかる。

凄い人だ・・・・と思った。
大した人だ・・・とも。
この方とのご縁を何としてもつなげたいと心底望んだ人でもあった。

ついでにもう一つ・・・金沢に来られた時の話を。
幾つでも逸話は有るのだが、長くなるのでこれを最後にするね。


    和装組曲に講演に来ていただいたときの話 


講演の翌日、新聞に載った。それを見た方が朝早くに電話してこられた。
先生の作品などを扱う大きなお店の重要なポストを占める方で先生が金沢に来られたようなら是非お会いしたいと。
こんな機会はめったにない。連絡してもらえないかと。
先生も何年来のお仕事相手なのでお会いしたいだろうと早速連絡する。
「お泊りのホテル、もしくは電話番号を教えてもいいですか?」と。
その時の先生の答え・・・
「私は今回は和装組曲さんのお招きで金沢に来たのよ。交通費も宿泊費も講演費用も出していただいたの。自分の別の用事や別の仕事の話の為に時間を使う気はないし、使うべきではないと思う。」と断られた。
びっくりした。そんなに仰らずに、相手の方も待っていらっしゃるはず・・・という私にぴしゃりと。
「私の気持ちの問題。信義の問題。」と。

江戸っ子だねぇ〜・・・
粋だねぇ〜・・・
流石だわ〜・・・

多分私への深い配慮ではないかと思う。
本当に心底優しい方なのだ。
その自分の優しさを絶対見せない、感じさせない物言いをされる。
惚れ惚れしましたよ。。。
こんな人、もう今時いない。



和装組曲のHPのドキュメントをご覧いただくと先生のお顔、ご覧頂ける。

        http://www.wasou-kumikyoku.com/img/rireki/2011/2011-05.htm

さて・・・会場・・こんな雰囲気。

御高齢にもかかわらず矢田先生は型彫について熱く語ってくださった。
金沢の友禅にはこんな型紙が使われるよ・・・なんて。。


勿論会場内は撮影禁止。
特別に安齋先生から許可をいただきはしたのだが、そこは私の事。
根っから控えめ、遠慮が服を着ているような人間なので、
物凄く恐縮して最小限度の撮影にとどまることにした。
あとは皆さんの想像力で・・・


ちなみにこの催し、9日の日曜日まで開催、見に行ける方は気楽にどうぞ。
一般の生徒さんの作品もあれば矢田先生、安齋先生の染めた作品も見られる。
私は会場入り口の安齋先生の「霜月」のツワブキと蝙蝠のタペストリーに心奪われてしまったのだが。

話したいこと、お聞きしたいことなど盛りだくさんだったが
両先生は次から次に来場される方々のお相手でお忙しいので
一時間余りで私たちは次の場所に。。。

次の江戸小紋染工場ではふんだんに写真を撮らせていただいた。
で・・・次回・・ということで。
次回も余りにも長く成りそうな予感。


明日は仕事がちょっと詰まっているので日曜日になんとかアップできるように頑張る。
江戸小紋は書物で読んでも中々細かいことが分かりづらい。
なんとか写真で分かりやすいようにと思っている。
待ってくださっている方、もう少し・・・お待ちを。