和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

着物や帯に使われている自然のモチーフは

   月 星 雲 水 雪 波 霞 自然風景・・・・・

などなど・・・さまざまなものがある。
なかには形としてとらえられないものもある。
しかし、それらを形としてとらえ図案として構成してきた文様が飛鳥・奈良時代から存在する。
日本人は自然に対する根強い畏怖と憧憬を持ち続けて、それを実現し形に残すために恐ろしいくらいに美意識を研ぎ澄ませて来たに違いない。伝統的な文様を時代と共に少しずつアレンジして身近なものにして来たため、意味合いも当時の物と少しづつ違ってきてはいる。その模様の持つ意味合いを知ることにより私たちは着物や帯を更に楽しみ、ワンランク上の合わせ方まで考える手助けになるのではないか・・・今日は「雲」の文様について。


       「雲」     

雲はその日の天候を左右する大切な働きがある。
中国では雲から万物が生み出されたとし、色、形、動き、などで吉凶を占い、雲にさまざまな意味合いを込めたようである。それが日本に伝わったのが飛鳥時代。文様としては仏教周辺に多かったようだ。時代とともに雲の瑞祥性はなくなって行くが模様自体は現在も生きている。

   
     たなびく雲の形により様々な呼び名がある。

      飛雲  瑞雲  渦巻雲  流雲  霊芝雲 雲七宝 雲鶴

     その中でよく使われるものが瑞雲と霊芝雲

     中国の霊芝は薬用となり乾燥しても腐らないので万年茸ともよばれる。
     縁起が良いことから瑞雲でも特にこの茸の様相を呈しているものを霊芝雲と言う。
     書物によっては区別なく使用しているものもある。でも一応ちょっとした区別として書いておく。

       

     左の図が霊芝雲、右を瑞雲と。
     いかにも漫画チックに見えて正直私はあまり好きな図柄ではないが叙勲や祝賀会に好んで使われるようだ。
     豊臣秀吉に仕えた茶人の富田知信の所有とされる名物裂の富田金襴は霊芝雲を斜めに配し隙間に宝尽くしを並べた模様。

飛雲はどう違うのか・・・
如何にも飛ぶ雲・・背景に山があったり、海があったり、森があったり・・

      

しかし、実際問題 飛雲、瑞雲、にあまり区別をつけられない場合もある。
怪しい妖気を帯びた雲は妖雲、異変を暗示するような雲は怪雲・・と名付けられてはいるが着物や帯には使われない。もし登場するとすれば喪の帯、不祝儀の色無地か。
見たことはない。

     雲でもよく使われるのが・・・・雲取り

     雲を輪郭線でとらえ雲の中に花や幾何学模様をあしらったもの。
     ふわふわした輪郭のものをいうことが多い。
     吉祥性より画面構成の一助として使われている場合が多いので一概に雲文は格調高いともいえないのだ。

     

     写真の帯は雲取りの中に亀甲花菱を配したもの。

     「雲取り」の中でも「源氏絵巻」の中で見られる金箔を塗り込めた雲の形を「源氏雲」と呼ぶ。


雲は写実的よりもむしろ少し楽しい印象のものが多い。
ちょっとしたもくもく感があって怪しい雰囲気のないもの。
「向い鶴菱」のところで「雲鶴」として触れたように「雲」そのものが格の高い模様として考えられていた時代がある。その中でも格調のある「龍」「鳳凰」と「瑞雲」を組み合わせたものは格別なものとして現在でも神社仏閣、個人の家では仏壇周りに使われているはず。特に「打ち敷き」のような掛ける布を見てもらえまいか ・・。
仏壇周りでもお坊さんの敷く座布団あたりは「牡丹唐草」。正倉院文様であるので格としてはかなり高いはずなのにワンランク下の柄行きとなるのはそういうわけ。
これらはあくまで織りのもの限定。染めの物はちょっと違って軽くなる。
まあ、とにかく沢山の染めや織りの物を見る事をお勧めする。
一応「もくもく感のあるものは雲」と覚えておけばよい。しかし・・・全てかというと・・そうでもない。
羊羹をスパッと切るような美しい線引きとはいかぬのだ。
でも、沢山見ていると何となくではあるが・・・分かってくるはず。

    雲取りなのか・・・霞取りなのか・・・道長取りなのか・・・
    州浜なのか・・・はたまた流水なのか・・・

帯は着物よりも格調の高いものを締めるべき・・・帯はまさにその方の顔なのだから・・とこれは誰でも知っていること。
何処ぞの方が「霊芝雲に鳳凰」の図柄の色留を着られていたのを見たことがある。
その方の帯は間道でちょっと違和感を覚えた。
着物で手いっぱいの格にすると帯がぴったり合うのがなくなりちぐはぐになる。

女性を見ていると呉服の展示会や新作発表会などで
「あっ、私これ好き」
「私はこれ嫌い」
などと柄や色の好き嫌い・・単にそれで終始するのだが、それだけではなく一つ一つの模様や柄の組み合わせでどういう場所にどういう意図で着られるものなのか、又その意図やTPOに合わせれば帯はどれがいいのか、自分は持っているのかということも考えながら選ぶ必要がある。
「だって、呉服屋さんがこれを勧めたから」
「何にでも会うと呉服屋さんに言われた」
とか。
いい年をして最後は人のせいにしないでおこう。
自分の身に纏う物くらい自分で見極めないで誰が選ぶのか・・。
呉服屋さんでも信用のおける場合は問題ないし、色々その機会に習うのも一つの手だ。
しかし、本当に適当なことを言う人が多いのだ。相手も商売、売れればいいと言う店も決して少なくない。
もとをただせば、そういう呉服屋さんを選ぶ自分も悪いのだ。
要は知らないから失敗するのだ。
なら、勉強すればよいだけのこと・・・
頑張ろう。こんな勉強は楽しい・・とっても。
お金をかけずに「ワクワク、ドキドキ」が味わえる。
ごめん・・・話がどんどんそれて行く。

「雲」の話だった。
そうそう・・・家紋にもある。
これはどちらかというと怪しい雰囲気がある。
二つや、三つ巴になったものや五つ重なったものなどがあるとか・・・
私はまだ雲の家紋、書物以外で見たことはない。

正直「雲」の文様はなるべく触れたくなかった。
ドンドンわからなくなって行くし、何より絵が漫画チックになって描きにくいから。
どう書いてもものすごく下手くそに見える・・・
書き終わってやっとホッとしたのが正直な感想。

そろそろお正月気分も終わりだね・・・