和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

伏籠(ふせご)

お正月も三日目・・・

普段中々目にしないものを・・と思い今日は伏籠(ふせご)をお見せすることにした。

昔の使ったであろう物を忠実にそのまま再現したもの。

釘やねじなどは一切使っていない。
本塗の漆に螺鈿で菊の花を描いている。
細部まで手が込んでいる。
房は本絹の朱房。
朱の細紐だけで開いたり閉じたり・・

むかしむかし・・・着物に香を焚きしめる時に使ったもの。

中に置く香炉は色々諸説があるようで
水を張った器の中に香炉を入れる・・とか
金属の器に香炉を置く・・・とか
香炉そのものが金属でできていた・・とか
いやいや香炉の中に藁灰を入れてあるのでそのままだろう・・とか。

色々想像するのも又楽しい。
この香炉は木製。いぶし木。

組みたてる・・というほどの造作もいらぬ。
簡単にできる。昔の人の知恵ってすごい。
箱に入っているときはこんなにコンパクトなのに。

着物をかけたイメージを持ってもらうために

こんな感じ。
かけた着物はせっかくなので「辻が花」

「辻が花」は今でこそ女性の着物柄だが戦国時代は男性の小袖に使用。
母、妻、娘、姉が・・
明日は戦地に赴く父や夫、兄や弟、家族の為に香を焚いたのだ。
帰ってこれないかもしれぬ・・
二度と合うことができないであろう愛する者の為に。



 
      一日は「ついっ」と立ち・・
       二日は「ふっ」と立ち・・
       三日は「見ない間」に立つ・・

正月の三が日の立つことの速さを昔の年よりはいつもそう言っていた。


皆さん、良い三が日でしたか。

私は明日から仕事。
成人式の帯結びの打ち合わせが始まる。
精一杯その人らしい成人の日の記念になるよう、その方ならではの結びを演出してあげたいと思う。
着物はひらひら、はらはら、こてこて、きんきらと着飾るだけの物ではない。
その一枚に精一杯の家族の想いが有形、無形にこもっているはず。
着物ってそれだけの背景を持っているのではないか・・・

          そんなことを思いながら「伏籠」をだしていた。