和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

 柘榴(ざくろ)

先日は「ヘクソカズラ」と「洋種ヤマゴボウ」の写真をお見せしましたが、
今日は「柘榴」の写真。

小さい頃は何処の家にも実のなる木が何本かは植えてあったように思う。
沢山の子供のおやつにしたり、食べ物がない時の為の非常食。
蜜柑、柿、栗、グミ、・・・・そのなかに柘榴も。
学校から帰ってきて何も食べるものがない時には裏の庭の柿を一つ二つとっては食し遊びに出かけたものである。
散歩の途中に何時も見る柘榴。
昔懐かしくいつも見ている。もう実となっている。
まだまだ果実は小ぶりだけれど・・・
昔は暑い時に一かじりすると何とも甘酸っぱい味が口中に広がりそれはそれで十分堪能できたのだが、今では酸っぱくて食べられないだろう。
何より種のないものに慣れ親しんだ口には種でざらざらとなりとても楽しめるものではないに違いない。女性の更年期には柘榴のジュースがよいとか・・・飲んだことはまだない。




























ザクロ科ザクロ属。ペルシア・インド原産。日本には平安時代に入ってきていると『日用本草』に記述があるそうな。

柘榴は着物や帯の柄にも使われる。
果実に種子が多いので子孫繁栄、縁起の良い植物と珍重されてきた。
ザクロの帯を見たことがあるが何とも南国的でモダンな雰囲気だった。
南国の鳥などと組み合わせて使われても違和感がない。

一方色でいえば・・・ザクロ石といわれる「ガーネット」色。
赤でも暗い。ザクロの実の色に違いない。

日本名では柘榴色と言うのが二色ある。
暗い赤、朱色の強い赤・・・二色。
暗い赤は柘榴の実からくる赤だと思うが朱色の混ざった赤は多分花の色。
散歩で見ていた時は花が見事に咲いていたのだがその花の色が朱色の鮮やかな赤だった。

また、柘榴と言えば鬼子母神の持つ果物。

王舎城の夜叉神の娘は、千人とも万人ともいう子を生んだとされているが自分の子がものすごく可愛いくせに他人の子を食すので、仏は戒めの為に彼女が一番可愛がっている末の子を隠し戒めた。以後は鬼子母神は仏法の護法神となり、求児、安産、育児の祈願をかなえるようになったとか。←年寄りからの受け売り。何処まで本当かは知らない。

鬼子母神の像は懐に子供、手には柘榴が相場。
仏縁深い果実である。

仏縁深いと言えば「仏手柑」(ぶっしゅかん)「桃」も。
この三つ・・・「柘榴」「仏手柑」「桃」・・・
この三つの組み合わせは「三多文」として福寿子孫繁栄の吉祥紋である。

また、柘榴に葡萄をあしらった模様も良く見る。
どちらも子孫繁栄の吉祥文様ではある。深く考える必要はないかもしれぬ。
ギリシャの葡萄を持つ豊穣神ティケがインドと中国に渡って柘榴を持つようになり、日本で鬼子母神になった・・・と記してある書物もあり。



    【参考までに】


桃・・・・・不老不死の仙人の住む天国の楽園で六千年に一度だけ実をつける桃・・・それを西王母という。(椿の品種でも茶花としてよく好んで一輪活けられる品種に西王母がある。美しい品の良い桃色の椿である)
この西王母の実を食べると長寿が得られるとされる中国の伝説がある。
また日本では伊邪那岐命が桃の枝で邪気を払ったという神話もある。
桃は神聖な霊木として古くより色々なものに意匠化されている。

仏手柑・・・・ミカン科。初夏白い花を咲かす。果実の下側が裂けてふっくらした指を連ねた形に似る。砂糖漬けにして食される。初めて見た時は人の手に見え驚いたものだが、最近は雑誌でお正月の生け花によく使われているのを見る。百聞は一見にしかず・・・気をつけてみているとなんでも目に入ってくるものである。