和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

本屋で見かけた・・・着物姿〜♪

昨日、午後ちょっと思い立って本屋に行った。
時刻は午後二時。暑い最中。1時間で帰る予定で。

目的は「井伊大老」の本で面白いのがないか探したかったので。
今琵琶で私が弾き語りを練習している曲。
安政の大獄の後、世論の非難の真っただ中、桜田門外で襲われ命を落とすまさにその部分の謡。
   
   ちなみに井伊直弼の辞世の句は

       「春あさみ 野中の清水凍りゐて 底の心を汲む人ぞなき」

まさに雛祭り朝登城の時のこと。

それはさておき・・・・中々本やで思う本が見つからない。
しゃがみこんで下の段まで探していた(なにせ目が悪いので・・)
最近、近眼も老眼も拍車がかかり、パソコンで変換ミスをしても全く気がつかない私。
(変換ミスがあってもひそかにここで弁解しておけばなんとか許してもらえるだろうという姑息な性格は健在)

その時・・・ここからが今日の本題
  ( 「前置きがなげーよ!!」 と怒られそうだが、は・は・は・・いつものことさ〜)

            ・・・・・・・・・・・・・・♪・・・・



「からーん、・・ころーん」と下駄の音。
店内にかすかに響く。

心地のよい音である。桐の下駄でないとこんな音はでない。
杉の下駄だともう少し軽く響く。
花火大会も済み盆踊りの日でもない。
後ろから聞こえる。

音の大きさから推測するにかなり体格の良い方。
音と音の間合いからすると男性の歩幅に違いない。
女性だと「カラン、コロン」となるはず。歩幅が違う。
私の後ろから脇にゆっくり抜けていく。
しゃがみこんでいる私にその人の足元が見える。
下駄はやはり桐、下駄の歯は外に向けてすり減っている。
外股に堂々と歩く人なのだろう。
かなり使い込んでいるようである。
鼻緒は黒で綿素材、ゆるみが十分ある。履きやすく足になじんでいるのが分かる。

どんな方だろう・・・と思うが何せシャイな私。あからさまに見るのも気が引ける。
その方が戻ってきて何か探している様子で書架の前に立つ。正に私の斜め後ろの位置になる。
で・・・失礼ながらも後ろ姿拝見。

着物は綿、白に細いストライプが何本も寄って太い縞になっている。黒過ぎないのも暑苦しくなくて爽やかである。ものすごく着こんでいるので所々すり減ってそで口などかなりボロボロ。
帯は茶色の綿のしっかりした角帯。これも結び目がすり減り年輪を感じる。
帯結びは貝の口。こんなかっこいい貝の口を結ぶことができる男の人はあまりいない。

で・・・・おもわず声をかけてしまった。
ブログに載せるのも許可を受けた。
これこそお婆の強み。私が若いと声なんぞかけられやしない。
私より特に相手が・・いやだろうから。
本人には顔を出してもかまわない・・と男らしく言ってもらったのだがそこはそれ・・・
面倒なことになっても嫌なので格好いい貝の口をメーンに・・写真を撮らせてもらった。



デジカメなんぞもっていない・・携帯で撮らせてもらったのだがなにせ沢山人のいる
店内。距離を測ったりなどできないし迷惑。何時もならしゃがんで取るのだが上から撮ったので雰囲気が今一つ。本人のためここで釈明。格好よさをお届けできないとしたら
悪いのはひとえに私の写真技術にある。

六年前くらいから仕事以外は毎日着物で過ごすことに決めたそうである。
この着物も帯もものすごく気に入っていてどこもここもすり減りボロボロだが中々他の物に変えられない執着があるとのこと。
年配の方はこんな着物を見ると顔をしかめるかもしれないが、ジーンズをわざとやぶしたりボロボロにしたり穴をあけたりして来ている若者の感覚ではそれはそれでお洒落の極致なのかもしれない。
そう・・・何年も着ていると生地はすり減り薄くなり、破れやすくは成るが実に涼しく肌触りが良くなるのも事実。
金沢にこんな若者がいるのだ・・・と感激。
そう・・・30〜35歳あたりか・・。

「どんな仕事??」
まるでテレビのレポーターのように失礼を省みず聞く私に、何ともおおらかで優しい、でも誇らしげに
「漁師!!」と。
「おお!!」思わず叫んでおりました。
海の男はやっぱ、格好いいね。自分の美学を持っているのだ。

ところで一つ・・・
その方は手にタオル。

確かにタオルはこの時節結構皆さん首にかけているのを見かける。漁師の方ならなおさら、手ぬぐいは頭に巻く必需品に違いない。私的には手ぬぐいか薄手のタオルを丁寧におって懐に入れておいてほしかったなあ〜、3分の1位、懐からのぞかせて・・・のぞかせるなら紺か黒か茶か・・などと一人思いをはせる・・余計なお世話だ、はい、十分承知している。

でも暑い時期、若者も老人も中高年も、男も女も・・・タンクトップかティシャツ、それに短パンが多い中、この兄さん、ひときわ存在感あったわぁ〜。
とっても素敵でした。
着物を着て堂々としているのも良かった。

そう・・・着物が似合うとか、似合わないとか、着方がどうとか、帯結びがどうとか・・・そんなことはどうでもよいのだ。本人が気に入って気持ちよく堂々と着ている、着物を楽しんでいる・・・それがいいのだ。見ていて気持ちがよいものだ。


結局「井伊大老」の本を探す時間がなくていつもながら何やってんだか・・・・