秋の野に咲きたる花を指(および)折りかきかぞふれば七種(ななくさ)の花
萩が(の)花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花
【尾花】
これも七草のひとつ。
薄、芒、とも記す。別名も多い。振袖草という名もある。尾花というのは古い呼び名で、花が終わると穂が尻尾のようになってくるところから付いた名前。茅(かや)ともいいススキで屋根をふいた刈屋根の意味から。
茎・葉 屋根材、家畜のえさ 根茎 解熱・利尿剤
お月見の時にススキを飾るのは、神へのお供え物の意味と共に、豊かな穂が実りの秋を連想させることから豊穣豊作祈願。
秋草の中でもっとも文様化されているのは萩。一方単独で用いられることが一番少ないのはこのススキかもしれぬ。
さみしく荒れたイメージを連想させるためか、単独の物はものすごく少ない。ススキに雪が降り積もる文様は「芒に雪文様」としてある。
色のイメージとしては明るく渋くほんの少し橙色が入ったような色か。
万葉の時代から日本人の身近にあった色なので見ているだけで心が穏やかになる。
私は着物の好みがものすごく渋い・・・というか地味。
でもその地味な中でもこの芒の色が一番好きである。
以前、森下礼さんが私のそのことを書いたブログのコメント欄で
「旅に病んで夢は枯野を駆け廻る」と芭蕉の歌を書いてくださった。まさにその風景。
枯れ草だけの荒涼とした風景は郷愁を感じさせてくれ何とも穏やかで静かな気持ちにさせてくれる。
「枯」・・・華やかさも雅さも、元気さも明るさもない・・・
でも一面枯れ野原であっても心落ち着き、何処までも身近に感じているのではないか。
茅色、枯色、枯野色・・芒に近い色はどこかほっとさせてくれる。
ちなみに日本の色名を探しても「すすき色」というのは見当たらないのだが
襲の色目としてはある。表白、裏は薄縹(うすはなだ)色。
教室の設えでススキの蝙蝠扇子(かわほり)を使う。
ただ余りにも寂しいので秋の実を一つのせた。
かやぶきの屋根の田舎の家の珠洲焼の香炉とともに・・・
こんな日は「沈香」の香を焚いて・・
雨、風、雷…今日の金沢は荒れ狂う天気である。