和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

「日本の色 世界の色」

ものすごく美しい本を見つけた。




全く違う切り口の二冊の本だがとてもいい。
すこぶるいい・・・と思った。
「日本の伝統色 配色とかさねの事典」については次回機会をつくって・・ということで
今回は
「日本の色 世界の色」
について少しだけ書こうと思う。

    

日本の色・世界の色

日本の色・世界の色


      「日本の色 世界の色」
            写真でひもとく487色の名前

ナツメ社で本体価格は2,000円。
全く違う本を本屋さんに買いに行った時、偶然見つけた。
欲しい本の隣に無造作に一冊だけ置いてあった。
題に惹かれた、カバー写真の美しさに惹かれた。
何よりパラパラとめくった時の写真がものすごくきれいなことと写真の配置が実にお洒落。じっくり手に取り内容を少し読む。
とても分かりやすい。
面倒くさい説明をそれは見事にしかも愉快に解説してある。
愉快に・・と書いたのは・・
「緑色」の項目で外国のゴミ箱を写していたりするのだ。
それがちっとも汚くない。むしろ美しい。
又「藍色」のところで地下足袋を切り取ったり。
グレーのところで10羽近くのハトを横並びに撮ったり・・と。
各写真は多分その道のプロの作品を使用しているようだが選択し配置したのは監修者のはず。
どんな写真も美しさにこだわり切り取り口の綺麗さ、配置のクールさにこだわっている。
迷わず買った。
レジに行くまで料金さえ見ようとは思わなかった。
それほど美しい本だった。

たとえば・・・・

色というのはとても分かりにくく著者の思う色と、写真の色と、読者の思う色が一致するとは限らない。むしろ微妙にずれているのが普通のことではないかと思う。

この本では日本の色の「猩々緋」(しょうじょうひ)の色のところに
小早川秀秋の猩々緋羅紗地違い鎌模様陣羽織の写真を使ってある。
重要文化財東京国立博物館の所蔵だが背中に大きな2つの鎌の文様のある陣羽織と言えば案外知っている方も多いはず。
よく猩々緋の色の説明に登場する写真である。
ところがこの本はその横にポインセチアの写真をそえてある。
確かに・・・納得。
この陣羽織は昔は本当はこんな色だったに違いない。
ポインセチアのことを「猩々木」(しょうじょうぼく)という解説文まである。

和の色は作者の色と写真の色と読者の思う色が必ずしも一致しないとさきほど書いたが
確かに・・・これは分かりやすい。
博物館や美術館の所蔵品の写真もふんだんにあるのでたまらない。
自分の身近にある色を示してくれているし解説もしてくれている。
なおかつ染料にまで言及し写真も載せてくれていてものすごく親切。
しかも野暮ったくない。何処までもスマートな載せ方である。
おまけに、解説文と写真の占める割合が絶妙にいい。
文が多くもなし…写真が多くもなし・・

普通この手の本は綺麗な美しい写真を載せている。
ところが・・・この本の面白いところはまさしく美しいないものも載せているのだが、
それがあら・・・不思議。美しくないもののはずがとても美しい。

たとえば 「錆色」「赤錆色」「鼠色」・・・
錆びた鉄の写真だが、美しい。
鼠の写真だが実にいい。
灰色の瓦の色もいい、何より屋根の上に並ぶ幾何学的な美しさ、そこに地味な色だが光の陰影をうつして1枚1枚違う色に見えさえする。
まさに江戸小紋の世界が展開する。
鼠色のところでは鼠色の振袖4枚を載せている。
いわゆる着物のあでやかさのかけらもない色のはずだが実に雰囲気がある。
こんな載せ方する人は今までいなかったのではないか・・・とさえ思う。

「いいなあ・・・この人〜♪」
思わずどんな人が監修しているのか経歴まで見てしまった。

私的には近年まれにみるヒットな書物、絶賛書物でした。
最近ちょっと怠惰で自己反省の日々だったがこの本をぺらぺらめくっている私さ〜♪

ちょっと・・・
いや、結構・・・
いやいや、かなり、・・・今第一のおススメの色の本。

もう一冊の「日本の伝統色 配色とかさねの事典」の方は全くこの本と対照的。


     

日本の伝統色 配色とかさねの事典

日本の伝統色 配色とかさねの事典

写真という物がほとんどない。
でもものすごくキュートな雰囲気。
着物好きにはたまらない本。
次回機会があれば・・・なるべく早くに中身についてふれるね、この本もすごく素敵、ということで今日はこの辺で。


     【p.s.】
       言うまでもないことだが、ナツメ社ともこの本の監修者ともなんのつながりも、一切のかかわりもないことだけは申し添えておくね。
なんらかのつながりがあったらどんなに幸せだろう・・・とさえ思うけど。