和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

菖蒲湯の日〜♪


五月五日・・・

小さい時から「子供の日」というより「菖蒲湯の日」として記憶している。
いつもこの日はお風呂に入りながらおじいちゃんからそのいわれを聞いた。
毎年・・毎年・・である。
私の幼稚園くらいの時なので五十年は優に超える。

今日はその時聞いた話を皆さんにも・・・おすそ分け。

    
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昔・・昔の話。
1人の男がおった。
ある日、美しい嫁をもらった。
毎日それはそれはおいしい食事を作ってくれて男はみるみる太っていく。
それとは裏腹に来る日も来る日もこの嫁・・・自分はご飯という物を食べない。
しかしながら、朝から晩までそれはよく働く。
夜遅くまで「あま」(今でいう二階の物置きのようなところで藁や農作業の道具が置かれている・・←こんな言葉を知っている人はいないかも・・ひょっとして方言か!?)で何やら起きて仕事をしている。
男が寝てもそれは長く起きているような感心な嫁であったとか。

ある夜・・・
男は寝たふりをして自分の寝た後、嫁が何をしているか気になり嫁の後をつけることにした。
毎日何も口に入れないで仕事ができるものなのか・・男は半信半疑であったのだ。

「あま」に行く梯子(はしご)をそれはするすると馴れた調子で登る嫁。
嫁の手には大きなおひつ(今でいうジャーですな・・・笑・・)が抱えられている。
梯子をそっと登り中の様子を見た男・・・びっくり腰を抜かした。
嫁は頭の後ろの長い黒髪を大きく二つに分け、そこにある真っ赤な口におひつの米を皆流し込んでいる。

なんと嫁は大蛇の化身だったのである。

いつか男を丸のみするために毎日毎日太らせていたようなのだ・・
それと気付いた男、梯子から転げ落ち夜の道を逃げる・・逃げる・・「食べられてなるものか!!」
正体を見られた嫁である大蛇、男を太らす必要もなくなり一気に飲み込もうと追う・・追う・・「逃してなるものか!!」

ふと気付くと村はずれの湧水のそば。
菖蒲が生い茂り蓬が密生している。
男はその中に身を隠す。

大蛇は菖蒲の匂い、蓬の匂いがあまりにも強く近づくこともできず逃げ去ったと。
それ以来その村では冬眠していた色々な虫や動物が出てきて病や疫病がはやらぬように
五月五日、一番菖蒲の芳香の強い時に菖蒲と蓬を軒先につるしたり、風呂に入れて身体に沁みこませたりしたそうな・・・

      
        ・・・・・・・・・・・・・・

事務所にも二階の待合室にも今日はこれしかないでしょう・・・と器に入れた。





我が家の庭に咲きだした葉はまだこんなに小さくて可愛いのだが。

菖蒲は水のこんこんとわき出るようなところの物はすくすくと1メートル位になる。
昔私の家では家族全員が必ず菖蒲湯に入らされた。
病気で風呂に入れない場合は新聞紙にくるんだ菖蒲を布団の下に入れたりもした。
小さな子供は頭に菖蒲の葉を巻いたりもした。
また蓬は内臓の虫よけとしておもちに入れてその日は食べないといけなかった。
蓬の匂いや味が嫌いな小さい子に「大蛇の嫁」の話をして何としても食べさせたのである。

今日はふとそんな昔の話を思い出したので・・・

着物柄としての菖蒲は
「勝負」「尚武」に通じるため、又形状が刀を連想されるため雄々しい男の子のイメージの柄となる。
女性の着物にあでやかな菖蒲の一面の花柄も悪くはないが
裾に菖蒲の葉が描かれていると匂い立つ菖蒲の香気を連想し悪くないと思うのは私だけか・・・・・

また「蓬」(よもぎ)のかさねの色目は
表は薄い萌葱、裏は濃い萌葱。

もう一つ・・添えるとすれば「薬玉」
「薬玉」とかいて「くすだま」

毎年造花の花でつくりその下に蓬と菖蒲の葉を束ねて逆さにして付けて座敷の隅にかけてあった
時代によりその中に薬を入れたり、または芳香の物を綿の袋に入れたらしい。
平安時代は「麝香」「沈香」「丁子」などが入れられたらしい。もともとは中国から伝わったとか。柱や簾に掛けられたと記載があった。わが生家では薬玉を掛ける台があったのを記憶している。
着物柄にも「薬玉」はよく出てくる。
主に子供の振りそでなどに多かった。
私は紫いろの振袖に一面薬玉模様の着物を着た記憶がある。
薬玉に五色の長い糸が結ばれているのも記憶に新しい。
五色の糸・・・赤、白、黒、青、黄が一般的とか。
勿論魔よけの意味。
自分の厄年の時に帯締めの房にその五色の色を付けて帯締めを組んだ記憶がある。

運動会の時のくすだまを割ると五色どころか・・・もっと多い色の・・小さな四角い金銀色紙が風に舞って飛ぶのも・・案外そのあたりからきているのかも・・・

書きだしたら中々終わらない・・

                         今日はこの辺で・・おしまい