九州の友人からお父様やおじい様の着物の一部を形見分けしていただいた。
昨日届いた。
その中でちょっと気になるもの発見。
まず「芥子縫い」の紋
「芥子」とかいて「けし」と読む。
ものすごく細かい刺繍の一種。
紋を刺繍する時、大きく「相良縫い」「菅縫い」「芥子縫い」がある。
でも今までこんな綺麗で美しい「芥子縫い」は初めて。
彼女の家の紋は抱きミョウガ。
だから周りは飾りだと思う。
男の人は周りは丸い太い輪がつく、普通は。
これはとても装飾性が高い飾りだし大きいので多分舞台に立つ人の紋付かと・・。
で、友人に聞いてみた。
「そう・・おじい様は謡曲をしていて有名だった。」
とのこと。
紋つきは三つ紋。なるほど。
羽織が何枚かあったので羽織裏「羽裏」(はうら)をご紹介。
まず普通のもの・・・
黒い紋付の。
普通に縫い目が背中に。
オーソドックスで無難にまとめている。
次に・・・
縫い目はあっても左右模様がきちんと合っている。
吉祥の文字、ひょうたん、稲藁、宝尽くし、竹、雪もち笹・・
模様もおめでたいものを選んでふんだんに使っている。
地がちょっと凝っている。
ちょっとたとえると塩瀬の半襟のような地、打ち込みがしっかりしていて面白い。
次は・・・
これは一枚の広幅で羽裏の背中に縫い目がない。
一枚の絵のようになっているこんな羽裏を「額裏」(がくうら)という。
この羽織は泥大島のアンサンブルの羽織の裏。
紋付のものと違いおもいっきり遊んでつけたものだろう。
中々男物を見る機会がないので・・参考になれば・・と。
昔の方は表は何の変哲もない黒、紺、茶など地味なものを選んでいても
ここぞという時、羽織を脱ぐ・・
するとそこにはびっくりするような絵や短歌や詩吟、漢詩が現れる。
ものすごい世界を持っていたのだと改めて感嘆。
成人式に金や銀の羽織袴で人の目を集める人たちがいるが、
昔の人の方がはるかに粋で洒落心があったのではないか・・と。
付いている羽織紐は笹波の組み方で手組。
しかも環で乳にかけるものでなくて本式のもの。
これは羽織紐が結べないと着る事が出来ない。
落語家などの人が舞台で羽織紐を解いて脱いだり着たりする、まさに本式のもの。
今では中々見る事が出来ないもの。
良いものを見せてくれた友人に感謝。
惜しげもなく私に送ってくださった彼女のお母様にも心から深謝。
大切に使うことで御恩返しをと思う。