和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

金糸&銀糸

先日写真を載せた「金木犀」と「銀木犀」

「金」と「銀」という名前だが実際、花は「濃い橙」と「白」。
その芳香とともに愛でて、「金」と「銀」に置いたのだろう。

「金色」と「銀色」はいわゆる金属の色目で、通常の色目に金属光沢を合せた色目。
顔料にはこの色目はあるが金属粉を混ぜた色、通常の四色刷り印刷では表現は難しく、濃淡や色合いの変化で金属光沢を感じさせるような印刷になるとか。(←・・・本の受け売り。当てにはならぬ、私の知識・・)

では着物や帯の金銀の色について・・
着物や帯でこの金や銀をどう表現するか・・・今日はその話。

    「引き箔」

結婚式や各種のお祝いの席に欠かせないのが「金銀の糸」の華やかな帯。
そこに使われている箔。
金箔や銀箔を薄くのばし、和紙に貼り付け0.5〜1ミリくらいに細く裁断したものを直接緯糸にしたり、箔を芯になる糸に巻きつけて撚りをかけて使う。この箔を織り込む技術を「引き箔」という。
錦帯に金、銀の糸で華やかに織成しているのすぐ想像できると思う。
一方、そのまま箔を裁断したものを緯糸にしたもの・・・
何か分かりやすい物はないかと探してみた。



この金、銀の帯は芯の糸に箔を巻き付けたものではなく緯糸として箔を織り込んだもの。金ぴかにならず落ち着いた色になる。


これは一本の帯に金と銀との箔を緯糸で織り込んだもの。
模様としては「日月」。金糸で「太陽」銀糸で「月」を表現。

話はちょっとそれるがこの帯・・・案外締めにくい。
と・・・言うのは身体にではない。
身体にはとても楽。なにせ手織。
柄の出方がである。帯の柄として大きいので思う柄を出すのが結構大変。
前に好きな月の柄が出ても、後ろには月が出なくて太陽となる。
まあ、そういう風に織ってあるのだろうがどちらも月を出したい時もある。
(琵琶の「新撰組」を謡う時、月の光を浴びて打ち入るのでどちらも月を出したかったのである…)
ものすごい余談・・失礼〜♪
買うときはそういうことも考えることが必要。

最近、和紙ではなくて薄いフィルムに本金箔を直接コーティングしたものを糸状にカットして色糸とともに緯糸に用いる方法もあるとか・・・私は見たことはまだない。

そうそう・・・最後に・・
上の金銀の帯の模様を。

あと金銀糸を使ったもので糸として織りこむのではなく上から散らすとか蒔くというやり方もある。

下の部分は螺鈿と金糸を織り込んである帯だが、上の方の部分は「真綿引き箔」である。通称「真綿引き」。
帯の上に真綿を置き上から細かい箔を散らすのである。
真綿があるので箔はべっとりつかない。真綿越しにつく。よく見ると真綿の糸の跡まで見える。こうすることで「暈し(ぼかし)」により立体感、奥行きが加わる。


実際真綿につく金や銀が多く着物や帯には使った程はつかないのだかそれはそれ・・・金ぴかに光るのをよしとしない方々にはおススメ。
このやり方は着物にも使う。


真綿の糸のひき具合までわかりやすい。
四角い箔は「切り金(かね)散らし」といい箔をそのままくっつけたものをいう。
帯などにも使うが織りこむよりも手間暇はかからない。


最後に・・・

 金色は古代では貴金属の最高位になる金を「くかね」「くがね」と言った。
     
   すめろきの御代栄えむと東なるみちのく山にくかね花咲く
                            ( 大伴家持 )


 銀色は「しろがねいろ」と。
西洋では銀食器の光り輝くイメージがあるのだが、日本人が「銀色」に抱くイメージはあくまでいぶし銀のように沈んだ控え目な色。また雪の色にもたとえられる。金色の華やかな光沢とは一線を画し静で控え目な色のイメージ。
  
   銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも
                            ( 山上憶良 )


その後、金は「こがね」となり、銀は「しろがね」、鉄は「くろがね」、鉛は「あおがね」、胴は「あかがね」と呼ばれるようになった・・・・




舞台とかライトの当たる場所では銀はかなり地味に見えるので目立ちたい時は金がおススメ。ライトに照らされ若干オレンジ色を浴びた方が温かみが加わるので。ただ自分が主役でない時は銀が控えめで静かで美しい。金か銀か・・・どちらを選ぶか迷った時には参考に。