和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

一本の電話

一昨日は仕事休み
久しぶりにのんびり・・読書。

その時、かかってきた一本の電話。
ためらいがちに・・
「もしもし・・大変失礼かと思いますが・・」
と。声の感じでは60〜70代か。
品の良い話方、はっきりした声の出し方の方である。

最初は着つけの問い合わせか見学希望の方かと思う。
セールスや営業でかかってくる電話は「もしもし」から感じが違う。
そういう電話は、どこか押しつけがましく微動だにしないものいいのニュアンスがあるものである。
それに比べ、こんな遠慮がちな電話は大抵は心配しながら問い合わせをしてくる方に多い。
恐ろしいお婆が出たらどうしよう・・何か売りつけられたらどうしよう・・電話したために不快な思いをしたら嫌だなあ・・と思いながら皆さんかけてこられるようだ。
昨日のは違った。


かいつまんで言うと初めて電話してきた方。
いつも新聞で毎月のうちのイベントを楽しみに見ている方とか。
自分は何とか着物が着れるには着れるが外へ来て行くほどの度胸もないとか。
(着物を着るに度胸はいらぬのだが・・話の腰をおるのは控えた。静かに聞く私。)
でもいつも和装組曲のイベントを新聞で読むたびにちょっと風変わりな着付け教室のイメージだったとか。
特にどこも中々やっていないことを定期的に行っていて記事を読むのが楽しみだと。
雑誌とかテレビで私を見て何だか以前から知り合いのような気がして…と。
ここからが本題。突然聞かれた。
「どこかお悪いのですか?」と。

「えっ??」

一瞬何と答えるべきか迷う。
「そう・・・とっても悪いの!!顔も口も根性も!!」
なんて答えようかと思う。
いやいや・・真面目な方にはキチンと真面目に答えないと。

とっても元気ですよ・・と答えると畳みかけるようにいわれる。
最近何にもイベントされていないでしょう、と。
確かに。

以前は誰も知らないだろうから色々なイベントをしてうちを知ってもらおうと思ってほとんど毎月ちょっとひとひねりしたでも質の高いイベントをやっていた・・・つもり。あくまで一般の方向け。

五周年を機会に一般の方参加のイベントを控えた。
もうそろそろ金沢の皆さんは和装組曲を名前だけでも知っていてくださる。(・・と勝手に決めている)
それと、もうひとつ。
本当に着物に本腰入れて知識を知りたい方向けのイベントに切り替えた。

    こういう催しなら人が来るだろう・・・反応するだろう・・

それはもうしないでおこうと。もう私にも和装組曲でも不要だと。
着物に詳しい方、更に知識を深めたい方の為の中身の濃く深い講座に切り替えていくことにした。
だから新聞社の後援やラジオでのPRなど一切していない。
もう人を集めたり名前を知ってもらうためのイベントより、着物の勉強をしたい方には、知る人ぞ知る・・という場所にしていきたい。そういう場所があるようでない。

色々な着物や帯を買い、着飾るところだけが着付け教室ではない。少人数でよい、たった一枚の着物、たった一本の帯でよいのだ、糸のつくりから勉強しよう。織りの成り立ち、染めの工程から勉強しよう。着物の歴史、変遷も勉強しよう。着物として成り立っていくその工程、技巧、和裁の仕立てまでも踏み込んで行こう、全て楽しみながら。
人生人は何時までも若くはないのだ。一時一時を大切にせねば。
着飾ったりどこか探せば余所でやっているようなことをして自分の時間もエネルギーも使うのはやめようと。
勉強したい方が切望するような講座に切り替えた。
まず誰より自分が欲しないものを発信するのはやめようと。

今年は「十二単の着せつけ」を五回で習得できるアカデミー講座である。

十二単」といえば華やかな宮廷衣装というイメージだがあくまで着物の原点がそこにある。
日本の民族衣装がどう発展しどう改良され現代にいたるのかを考えるよい機会。
さらに友禅やプリントなどのない時代、織りでのみ表現されていたため模様とは違い色を重ねる事によって季節感、着る人のこだわりを表現していた。そのあたりを「襲の色目」を交えながら勉強できればいいなあ・・と。
日本の住宅と衣服との関連までイメージして自分の中で進めていけたらいいなあ・・と思う。
講師は高倉流衣紋道京都道場会頭、熊谷宝子さま。私の熱い思いと色々な方の御尽力で実現の運びとなる。

その方とそんな話をしながら・・・その方の賛同も得られ話が弾む。
「今までで一番うちのイベントで気に入ったものなんでしょうか」
と聞いてみた。
「むーーーん、難しい。聞香会、秋草の生け花、お茶の頂き方も楽しかった。でも・・・一番は・・」
半襟つけかな」
と。
「えーーーっ?!」
何と地味な返答。考えてもいなかった答。
確かに知っているようで案外知らないし、本格的なつけ方になり過ぎて個人がするにはちょっと・・・という分野。それを30分くらいで出来るようなつけ方を教えた時がある。あれは画期的で素敵でしたよ・・・と。
秘かなファンだね・・・嬉しい。

2〜3日前に教室で教えていた半襟つけ・・・挑戦されたお二人の様子を。



出来るようで案外自分でサッサッサーと出来ないもの〜。
お客様の要望があればいつでもマンツーマンで教えますよ。
自分で着物を着られる方の必須習得事項。出来ないと丸洗い襦袢の購入となる。
美しい絹の肌触りや絹なりの音の心地良さ、時間の経過とともに自分の肌と一体化していく絹の吸湿性、保温性。着てみないと永遠にわからない。絹の襦袢を着たら化繊はもう着たくなくなるほどの絹の魅力。必要に応じで化繊を足もとの悪い時やTPOに合わせて使われるのも各人の選択なのでそれはそれでよい。しかし、半襟を付け替えられるようにしておいて損なこともないはず。

着付けの「奥伝」の免許持っていると言う方でも自分で綺麗に半襟つけできる方はあまりいない。
どうかすると半襟がついているか、いないかさえ分からない方もいる。
着付けの「皆伝」の免許を持っていると言う方でも半襟つけは仕立て屋さんに頼むほど煩わしい分野。

美しい半襟つけは着物を着て初めて分かること。出来上がった時美しい仕立て屋さんのつける半襟とは一味違う。
海外旅行を着物で・・という方にはワンタッチでできる両面テープの半襟もあるにはある。
でも普段は自分のつける半襟を縫うことができるのも又楽しい。
素敵な刺繍の半襟を選ぶ楽しみもできる。



















フランスのデザイナーの方が言っていた・・・とか。
世界広しといえど顔のすぐ近く、そして顔から一番遠い足元・・
この二か所に真っ白を持ってくる民族衣装は他にない。
二つの白の間にどんな色を持ってきても誰にでも似合うように考えられている・・と。

半襟も足袋もいつも美しい白でいたいと思う。



ちなみに電話のかかってきた時、
12月に発売された宮本武蔵の「五輪書」を読んでいた。



五輪書 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ5)

五輪書 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ5)





実は今日この話を書こうと思っていたのだが、
一本の電話から急きょ差し替えした。

  「五輪書」はまたいつの日か・・・永遠にないかも・・
                 ・・・・う〜・・・ん、守れないかもしれぬ約束はしないでおこう。
    多分今年の琵琶の演奏会は「巌流島」の予定。まだ未定だか。
        来月あたりから集中練習にはいる。それも又楽しみ〜♪

一昨日の電話の主の方、去年も一昨年も私の琵琶の演奏会に来て弾き語りを聞いてくださっていたとか・・。
思いもかけぬご縁、感謝、深謝・・・
色々な方に支えられているのですね・・・・