土曜日の日、けいこさんが来た。
今日はけいこさんの話をしよう。
「けいこ」のハンドルネームで時々コメントを入れてくださる方。
この方、初めて和装組曲に来た時
「京都へ玉三郎の京都賞授賞式に行くのに着物で行きたい。」
と、習いにいらした。
勿論着物や帯の種類も畳み方も知らない状態。
とにかく自分で着物を着られるように・・・と。
で・・・着物で玉三郎さんの授賞式に行きなさった。
する・・と決めたらする・・というお人。
北陸では案外こういう方は少ない。
一旦決めても 「でも・・・」とか「やっぱり・・・」とか「色々な事情で・・・」とか言う人が圧倒的多い。
「家族が・・・」「天気が・・・」「どうしても・・・」とか。
このけいこさん、実に潔い。
土砂降りであろうが、大雪であろうが、台風であろうが着物を着ると決めたら着るのだ。
行くと決めたら余程の事がない限り行くのだ。
いつだったかそんな話になった時、
「だって、天気のせいにしていたら北陸では外出られん。
家族のせいにしていたらお婆さんになるまで着物なんて着られん。
絶対着ると言う自分の気持ち次第やわ〜。」と。
私の中で「けいこさん=ノンドタキャンさん」である。
この日はこんないでたち。
何だか面白い小紋の柄だ。時節がら絽の着物。
「流れ星〜?」と聞くと
「マッチ棒!!」
「えっ、マッチ棒・・・?!」
皆で驚く。何故にそんな柄・・・
「私に火を付けて〜」ってかあ?
「ダメダメ・・・これだけあると火ダルマさあ」なんて皆で大笑い。
帯は明つづれ。
着物と帯が合うようで合わない。
着物は軽快なのに帯の柄がこころなし重い。
色は濃淡で合わなくもなさそうなのに難しいなあ・・・コーディネートって。
そんな話をしていたら、今度祝賀パーティーに行きたいのでどの着物と帯がいい・・と聞く。
大きな風呂敷包みを開き、結局これになった。
紋も付いている。ちょっと赤味が強いが華やかで祝賀ムード一杯なのでいいんじゃあないの・・と。
マッチ棒よりはいいやろ、となる。
ちょっと着てみるね・・・とさ・さ・さーと着替える。
その早さったら凄い。
顔をうつさないでおこうという私の配慮を逆手に取り、
「ちょっと見返り美人〜♪」
「こんな・・顔〜♪」
何て言いながら・・・突然振り向いて私の反応を楽しまれていた。
おちゃめな少女のようなけいこさん。
本人は実際あでやかで物凄く色っぽい。
松のダイナミックな書き方も悪くない。
ところで・・・この鳥は何??
けいこさん曰く、「ツメナガセキレイ」だと。
野鳥の会の方に聞いたらしい。
けいこさんは鳥が大好きなのだ。
ここまで来て・・・さて・・帯締めはどうする・・・
皆でああでもない・・・こうでもない・・と。。
ここまで来たら好みの問題。強烈なグリーンや黄緑もよし。
「持ってない色をいうてもだめやろ?!」
「確かに。有るもので。」
大事なことです。なるべくお金をかけないでおこう。
楽しい一時でした。
ありがとう。
ところで・・・最後に私が聞く。
「物凄くチャッチャ〜ッと着替えたけど、どの位でいつも着る?」
「ん??計ったことはないけど着ようと思ってから10分はかからんよ。」
いやあ、10分はかかってない。何しろ脱ぐのも着るのも実に手馴れている。
「どのくらい回数着ている??」
「今年は・・・・ん・・・ん・・30回はゆうに着たかなあ〜。だけど何時も同じ着物やわ!!」
と高らかに笑う。
お友達と着物で出かけるのでももう着せてあげているようだ。すごいね。
着物は着られるようになっても着ないと着られなくなるし、何処か着姿が下手になる。
で、ここからが凄い。
「毎月必ず着ようと決めた・・・で、月命日の墓参りには必ず着物で行く。どんな天気でも。」
そうすれば月に一回は着る事になる。
あと、そうね・・・と考えて・・
「友達と何処かへ行く時、家族と出かけるとき、食事に行く時、親戚の方と会う時・・・年配の方なら喜んでくれるだろうと想像するような場合は何時も着物にする。」と。息子さんやご主人とのお出かけも勿論着物。
こう書くとどこぞの奥様と・・思うでしょ?バリバリに仕事してはる人ですよ。
最近ではね・・・と彼女。
岐阜の95歳の親戚のお年寄りにお会いするのに着物で一人でドライブがてら行った、と。
物凄く喜んでくれたと。
そのあとがけい子さんらしい。
「着物で、オープンカーで。。。。」
けいこさん・・・
あなたは偉い。格好良すぎ。
最後にこういった。
「先生の琵琶の演奏会も着物で行くよ。この組み合わせで。」と。
参加される方、このツメナガセキレイの帯を見られたら、その方がけいこさん・・・・。
【ご報告】
先だって書いた86歳のご婦人。
土曜日仕上がりました。
疲れたら時々椅子に座りながら・・・
他の方のを見られながら・・・
皆との会話を楽しみながら・・・
「若い方たちには負けられないわ」
なんておっしゃりながら、自分の理想とする美しい帯の形に挑戦されました。
着物は長い間着ていらしたのでさ・さ・さーといく。
帯が上手くいかないと来られたのだ。
帯だけで全四回。
「そう・・・こんな帯の形が好きなの〜♪」と。
午前中手首に打った注射の針の絆創膏がどこか痛々しい。
それでも休まずに練習に来られたのだ。
手本だね。こういう方は。
私はこんな白い帯締めが物凄く好きなのよ・・・若い時から・・なんてしんみり言いながら
帯締めの結びもちゃんと習得されて行かれた。
きっと白い帯締めに忘れられない思い出があるに違いない。心のうちで思う。
なんとか無事終わったことに感謝。
とにかく疲れないように・・・楽しんでもらえるように・・・と色々工夫し、言葉を変えながら選びながら応対してくれたケセラセラさん、お疲れ様でした。
「これで一人で着られるわ。とっても楽しくて迷ったけど、来て良かったわ〜♪」と。
喜んでいただけるのはいつの場合もとてもうれしい。
「でもね・・・着ないとまたすぐ忘れるかも。だから忘れたらいつでも遊びにいらしてくださいね。」と送り出す。
私的には怪我や突発事項などなく、無事終えられたことにひたすら感謝。
車で毎回送り迎えを担当された方、何かあった時の為に同じ時間にお願いした看護師さん、そしてケセラセラさん・・・・同じ教室になった生徒の皆さん・・・色々お世話をおかけいたしました。
そして皆様のおかげです。ありがとうございました。
とっても素敵な帯を見せていただいた。
そして・・・なんと最後に結ばれた帯はお太鼓とたれの模様が期せずして見事に一致。理想的な結びとなった。
皆さんにご報告できて良かった〜☆