和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

道成寺

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和装組曲の玄関前

随分ブログが疎かになっている…

なってはいるが、私は元気。

毎日琵琶にまい進している。

私だけではない、お弟子さん達全てが日々頑張っている。

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金沢の空・・・鉛色

空はこんな感じでもこの鉛色の雲の上には

青空が広がっている…多分。・・・きっと。そう信じたい。(笑)

11月は忙しかった。否、11月も忙しかった。

12月も忙しさが続いている。

仕事が目茶目茶多いわけではない。

単に私がトロイだけ。

そう・・・いつもの事である。

 

今、お弟子さん達と力を入れて取り組んでいることがある。

道成寺」である。

本当は私一人で謡っていた。

それを聞いたお弟子さんの一人が

「私も先生のバックで参加したい」

と言ったのが最初のきっかけ。

一人だけ特別扱いは出来ぬ。

では参加者を募ろう、と相成った。

ラインで

「やりたい方はも申し出てくれ」と。

一言付け加えたのがいけなかった。

「難しいので初心者は無理だと思う」と。

基本、初心者ばっかりの集団でもある。(笑)

「練習しない方は絶対できないので、頑張る方限定。」と。

 

我も・・・吾も・・・われも・・・と負けず嫌いな人達らしい返信。

ちょっとご家庭の事情で何か月か休まれている方まで

「私もする」と電話。

 

「えっ?・・いゃあ・・・あなたは無理」

と言うが粘る。

「途中でダメなら諦める。でも挑戦する事はさせて欲しい。」と。

 

確かに。それも一理ある。いゃあ、「挑戦」と言う言葉はいつだって私を泣かせる。

 

ところが

「私だってやりたい」

とまだ日の浅い方も手を上げられた。

道成寺」は「静」を歌っている日の浅い方には到底無理。

何せ弾法が格段に難しい。

「崩れ」という早い弾法が幾つか入るし謡い方も激しくて難しい。

語りと弾法が間髪入れずに立て続けて入る。

「絶対無理。」と断固と断る私にその方が言う。

「皆さんがされるのなら、私もできるところまで頑張りたい」と。

 

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確かに月の光も太陽の光もは誰の上にも均等に降り注がねばいけない。

しかし・・・どんなきれい事を言っても

「精神論でクリアーできるレベルではないよ」と。

しかもその方は兵庫から習いに来ている方。

2か月や3か月に一度習いに来たくらいでどうかなるレベルではない。

「最低1か月に1度、それも2~3日泊りがけで集中してやらないと無理。」と。

しかも家で死ぬ気で取り組まないといけない。

「1か月に1度行きます。」

まだ半年もたっていない人に果たして大丈夫か‥とも思う。

「否、否・・・無理」

しかし、何でも立ち向かおうとするのは私の真骨頂でもある。

「やってみんと分らんやろう!!!」

同時に少し頑張ってどうかなるレベルの事ではない、というのも骨身に沁みている。

余りに頑張りすぎると壊すよ、・・・・身体か、心か・・・家庭を。

自分が一番知っている。

しかし、それほど一生懸命になる物をこの年で持つのは確かに宝物だ。

 

「悪いことは言わん。諦めなさい。そのうち機会もあるよ。」

慰めるつもりで言ってて自分で思う。

機会なんて2度とない、今この時がこの人にとっての機会に違いない。

突き放す私に電話の向こうで「・・・・・・」長い沈黙。

了解はしないんだ。。。やりたいんだあ・・・。。。

うちのクラスにはこんな気の強い人ばっかり。負けず嫌いな人ばっかり。(笑)

駄目と言われれば言われるほど、皆食いついてくる。

自分から諦めることや、自分から引き下がることはしない。

 

長い迷いの後・・私の決断。

「みんなの足を引っ張ると判断した時は容赦なく切るよ、それでいい?」と。

「悪いけど、一人の為に皆の努力を無にできないので。」

「構いません。」と。

 

そんなこんなで始めました、皆で「道成寺

 

なんと、今日のブログ、ここまでが前書き。

実はここからが本題。

道成寺はお弟子さん達と連奏を交えながらやる・・・という事に私自身常に初めから迷いがあった。最終的に皆が無理なら私一人でやろう・・・という逃げ道も考えていた。

何といってもどこまでついてくるかが分らない。お弟子さんたちには、仕事もある。家庭もある。趣味である琵琶にどこまでまい進できるのか。多分脱落者も出るに違いない。こんな初心者にあなたは何を考えている、と言われると私は一言も返せない。

でもどこかで信じていた。

きっとみんなは仕上げてくるに違いない、と。

 

長いので皆さん、どうぞスルーしてくだされ。

 

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先ずは道成寺がどういう話なのかを知ってもらいたい。

 

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道成寺縁起

 

道成寺縁起」は安珍清姫物語の原点であるばかりでなく、他分野の芸術に与えた影響の大きさから、日本で最も有名な絵巻の一つとなっている。以下の「道成寺」の話は天音山道成寺が発行している「道成寺縁起」の絵ハガキを使って書いてみる。文は絵葉書の説明からそのまま使用した。

 

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その1

奥州白河から熊野詣でに来た修行僧・安珍は、真砂庄司の娘・清姫に一目惚れされた。

清姫の情熱を断り切れない安珍は熊野からの帰途に再び立ち寄る事を約束する。

 

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その2

約束の日に安珍は帰らない。清姫は人の目も構わず安珍を追い求める。

「そこなる女房の気しきご覧候へ」「誠にもあなあな恐ろしの気色や」

 

 

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その3

やっと安珍に追いついたものの、人違いと言われて清姫は激怒、

「おのれはどこどこ迄やるまじきものを」

安珍「南無金剛童子、助け給え」と熊野権現に祈る。

 

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その4

祈りで目がくらんだ清姫安珍を見失い更に逆上、清姫の怒りと悲哀

「先世にいかなる悪業を作りて今生にかかる縁に報らん、南無観世音、この世も後の世もたすけ給へ」

 

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その5

日高川に到った安珍は船で渡るが、船頭は清姫を渡そうとしない。

ついに一念の毒蛇となって川を渡る。

浄瑠璃日高川入相花王」(ひだかがわいりあいざくら)の名場面。

舞台もいよいよ道成寺へ。

 

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その6

道成寺に逃げ込んだ安珍を匿う僧。

「その鐘をお堂の中に入よ、戸を立つべし」

女難の安珍に同情しない僧も。

「・・・ひきかづきて過ちすな」

「ただ置け。これほどのものを」

 

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その7

「この蛇、跡を尋ねて当寺に追い到り、鐘を巻いて龍頭をくわえ尾をもてたたく、さて三時余り火炎燃え上がり、人近付く様なし。」

クライマックス「鐘巻」の場面。

 

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その8

安珍が焼死、清姫が入水自殺した後、住持は二人が蛇道に転生した夢を見た、法華経供養を営むと、二人が天人の姿で夢に現れ、熊野権現観音菩薩の化身だった事を明かす。

 

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と、こういうストーリーである。

これがいわば前編の「道成寺」である。

では後編とは・・・

1代目の鐘が焼けた後、2代目の鐘を作るのであるが1代目の鐘の顛末もあるので2代目の鐘のお披露目は女人禁制となる。

ところが寺の僧たちはたまたま訪ねてきた美しい白拍子を中に入れてしまう。

鐘の近くで舞う白拍子の余りの美しさに寺の僧たちはうっとりとしてしまう。その隙に

「思えばこの鐘うらめしや」と白拍子は鐘の中に入り込んでします。驚いた僧たちは住職を呼び祈り続けるのである。やがて僧たちのお経で鐘が持ち上がり中から大蛇が出てくる…大蛇と住職たちの祈りがせめぎ合い、ついに大蛇は日高川の深淵に消えてしまう・・という話。能の「道成寺」はこの後半の筋立て。琵琶もこの2代目の鐘にまつわる筋立てである。

 

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釣鐘

道成寺の2代目の釣鐘である。
道成寺の絵解き本の裏表紙から。

 

今年10月の末にニュースで偶然この鐘が出た。

長い間京都の寺にあったこの2代目の鐘が本来の道成寺に戻ったというニュース。

これも何かの縁だな、と思った次第。道成寺を歌っていなければ見過ごしたであろうニュースでもあった。

色んな意味で興味深い。

 

 

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11月、皆で呼ばれて琵琶を披露した料亭のお座敷。

その時の本館の狭い廊下の片隅に能衣装の人形。

非常に目立たず、自らの存在を打ち消すような風にひっそりと佇んでいた。

が、よく見れば古いが確かに道成寺白拍子の人形であった。

烏帽子をつけ、能の女面をつけ、華やかな打掛の下には鱗柄の白小袖。

どう見ても道成寺がテーマ。こんな人形を知っていて飾るわけがない。飾った人も知らずに飾ったに違いない。

その時も「ああ~、誰かが私の肩を押してくれている」と感じたっけ。

 

さて、今回こんな風に皆さんやお弟子さんたちにこの道成寺の事をお知らせできたのは偏にブログ友の「ふらここさん」のお陰。

ふらここさんがドライブに出かけ見つけたこれらの道成寺グッズを私に送ってくださった。

 

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道成寺絵解き本(宗教法人道成寺発行)と道成寺縁起(天音山道成寺発行)

 

ありがとう。ありがとう。本当にありがとうございます。

ふらここさんは何気なくでかけ、何気なく私に送ってくださったのだろうけど、私にはとってもタイムリーでナイスなプレゼント。

お弟子さん達と朝の9時から5時までの8時間、ずっと道成寺を掛け合いで練習し、それでも舞台でやれるかどうかも迷いながらの帰途だった。確かに皆は期待以上に上手だった。でもこんなレベルではまだまだ駄目だ。辞めるなら早い方が良い。何人かを斬るなら早い方が傷が深くない。迷いながらの日々であった。

今では5時半は真っ暗。

こんな練習が毎週のように続く。時には半日。時には1日。

「私の前途?」なんて自虐ネタを心で思いながらどんよりと暗い我が家にたどり着いた。

テーブルの上に小包。

なんと・・・・

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ふらここさんから

嬉しかったわあ。。。

道成寺の様々なグッズ。

一番嬉しかったのは「道成寺縁起」と「道成寺絵とき本」。

欲しかったのだ。ずっと。

道成寺をやれ・・・と肩を押されたような、そんな気がした。

もうやるしかない、ね。

 

やる・・・!!!

決めた。

    10人で。

 

失敗を回避する為、危険な何人かを切ろうと迷ってもいた。

根は物凄く小心者。

でも・・・決めた。

1人も脱落させない。

絶対ついて来いよ‥皆。

7月の演奏会でやる。

修正をして11月の東京での全国大会でもやる。

千手観音の千本の手が私の背中を押してくれている。

今日、ブログに書いたのは私の決意表明。

凄い「道成寺」完成しような。

 

それまでは雲龍柳は鬼になる。