和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

浴衣&木綿の着物を着る

朝からグングン気温が上がり37度まで上がった日のこと・・・
自分たちで縫った浴衣を実際着てみましょう・・ということで集まった。
勿論自分で縫わなかった人は手持ちの浴衣や綿の着物〜。



「こんにちわ」の声が飛び交う。
私は事務所にいて皆さんを迎えた。
ニュースでは35度の予想。しかし昼には35度は超えていた。
暑さは、はなから承知の事。まして着物。
「暑かったでしょう?」
声をかける私に
「バイパスの外気温時計38度さしてました」と。
でも流石にどなたも
「暑いね」
とは仰らない。(笑)
それも凄い。


しかし・・・
皆さんの姿を見てあげてください。
物凄くきれい。





襟もとも胸もともとっても吟味されてキリリと美しい。
何としても美しく着るのだという覚悟の程が見て取れる。





前回意地悪いほどに膝に置くハンカチの事まで触れたので皆さんどこまでも吟味されたのが分かる。で・・今回も一つ。頂いたお菓子を下に置くのなら、懐紙をバックに入れておくこともおすすめ。でないなら、頂いたら膝の上か手に持つのがよろしいかと。ちょっと気になる、老婆心。

ただ考えもなくやったことは何回繰り返してもプラスにはならない。
ゼロはどこまで足していってもゼロなのだ。
物凄く考えてやったことは次に確実につながるのだ。
それが例え0,1であっても・・0,01であったとしても。
そしてそういう小さくて些細なことが後々物凄く大きくなっていくのだ。







夏の着物は勿論本人も涼しい気持ちで着てほしいのだが、見る人にも爽やかな涼感を与えたらこんな素敵なことはない。
着物は勿論の事、着物の下に何を着たらいいのか、小物はどうしたらいいのか、そんな話を混ぜながら話をした。
麻というものについて、絹というものについて、そして綿というものについても。

特に麻はとても涼しいのだが、取り扱いや洗濯について注意したいことなどを混ぜながら。
この日私が着たのは勿論皆さんと一緒に縫っていた綿縮。
私はこの日こんな風に着てみた。




襦袢は白い麻の襦袢。小物も全て麻にできるものはした。帯枕はヘチマ。
着物は縫っていた時より若干白っぽく見えるのは襦袢の白が写るので。
写るような素材は写ることを想定して色を選ばないと自分の思うような雰囲気にはならぬ。気を付けて。
これは反物を選んで縫ってもらうときにも言える。白いブラウスやTシャツを着て、ほしい反物を選ぶとよい。どの程度の透け感かが一目瞭然となる。


前の柄は・・・「あふみの海」


後ろのお太鼓は・・・「夕波千鳥汝がなけば」


             あふみの海 夕波千鳥汝(な)が啼けば

                 心もしのに 古(いにしへ)思ほゆ   (柿本人麻呂)


の上の句を前の柄と後ろの柄に書いてもらったもの。
帯締めは普通はあまり帯どめを使わないのだが、この日は頂き物の帯どめがあったので三分紐二本を使って絞めた。



この「あふみの海」というのは今の琵琶湖のこと。天智天皇の頃都があった近江の頃を懐かしく読んだもの。
「み」の音と「な」の音の配列の妙に音楽性があると言われていて軽快感がある。

今から10年位前だろうか。滋賀県の琵琶湖の見える建物で講演を頼まれた時に、手持ちの帯に書家さんに書いてもらったもの。
なんとなくこの帯を締めると広々とした琵琶湖の湖面の波立つ風景と、白い千鳥が飛び交う哀愁が自分を気持ちよくさせてくれるので今回はこの帯にした。
この帯を締めている間中、私は「あふみの海」と共にいる。


余談だが…・・(私のブログは余談ばっかりなので今更ですが・・)

この講演依頼があった時に当時事務方を手伝ってもらっていた方と食事に行った時の事。
どんな歌を帯に書いてもらおうかと二人でいろんな話を行きつ戻りつ。
私は万葉集から選びたかった。彼女は皆が見てもそれでは分かりづらいだろう、と。
私は全人に分かってもらう必要がどこにある?分かる人だけ分かってくれればよい・・と。
カウンターで喧々諤々どの歌がいいか、と色々思案していた時の事、私の横に座っていた男性が途中から話に参入。結局この歌にしたいという私を後押ししてくれたのだ。帰りしなに私に言われた。「いつでもいらっしゃい。書いてほしい歌を書いてあげましょう。楽しいひと時を過ごさせてもらったお礼に」と名刺をくださった。その人が帰えられた後、店のオーナーに聞いた。名刺を頂いても私は分からなかった。「あの方誰?」と。「え〜!!うっそ〜!!」と驚く有名な書家だった。

この帯を見ると思い出す。勿論その方ではなく違う方にお願いしましたが。
そんなもん、のこのこ行けません。余りに恐れ多くて〜。(笑)



物凄くそれた。
元に戻る。

この日の彼女たちはとにかくどなたも毅然として美しい着姿だった。
何だかちょっと感激。
手厳しい言葉や容赦ないアドバイスでも、彼女たちが物凄く前向きに受け止めてくれていたのが嬉しい。

そしてもう一つ。
この日、着物であるイベントの受付をするはずの二人。
この教室には来られなかったのだが、無事着物を着て県外からのたくさんのお客様を迎えることができたと電話を頂いた。最初は受付の人たちが盛り上がってみんなで着物を着ましょう・・となったのだが、あの暑さ。実際ふたを開けたらほんの一握りの着物姿。しかもほとんどの方は美容院で。流石に午前中は元気だったらしいが午後は慣れない着物姿に死んだようにお疲れモード。しかしわが教室のお二人はとっても元気で溌剌。本当に自分で着たの?と言われるくらいきれいだったようだ。夜九時までその着物姿で、そして「バスに乗って帰ってきました。」と。玄関では若い娘が慣れぬ着物姿でどうだったか心配されていたお母さま。元気に帰ってきた娘にほっ。「お疲れさま」と母に言われました、と本人。
「自分で着ることって大切ですね」と。
「とにかくとっても楽だった」と。

私にとってもとても嬉しい一日でした。
お・し・ま・い〜☆