和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

寿ぎの春〜♪



全く着物を着られない方が3月の結婚式を目標に黒留袖に挑戦された。
勿論、少しずつの練習である。
一週間おきの時もあれば、月1度の時もある。
しかも仕事が済んで家族に食事を供してその後教室に来られるのであるから、夜の8時過ぎとなる。まずはご本人たちの希望で、紬と名古屋帯、訪問着と袋帯、などもされてもいた。少しずつ外にも出て、人さまの前にも着物姿をご披露し、着物の所作も身に付けられながらの事である。

それもこれも最終的には結婚式での黒留袖を着るためであった。
1人は息子さんの・・・もう一人はその甥っこの・・・2人その目標を掲げての挑戦である。
頑張る二人に周囲は案外冷やかな反応で
「無謀な事は考えずにその辺で手を打ち、黒留めは美容師さんに・・」との声。



確かに。
訪問着も、一つ紋の無地も大抵のものは着ることができても、結婚式の黒留めは中々皆さん躊躇されるし、どうかするとそれはプロに着せてもらうものだと最初から決めている人の方が圧倒的に多い。まして、自分で着ることができる人はどれだけいるだろう・・・。女性が百人いても黒留袖を着ることのできる人は1人いるかいないか・・・いやいやほとんどいないだろう。

  どっしりと重い生地、比翼衿、五つの紋の位置、袋帯で二重太鼓、

帯を結んでいるうちにどんどん着くずれて行く。
普通の常識としては「無謀」な事かもしれない。
でもこの方々は「着る」と決められた。
そして黒留袖を当日着るだけに終わらず着物にまつわる常識も日々勉強されてもいた。そこが偉い。

扇子は何故必要?訪問着の時の扇子と黒留めの時の扇子は違うの?半襟はどうなの?自分で縫うにはどうすればいい?草履は?そもそも足袋は?セレモニーとちょっとした外出でどう違う?
着物と帯の格は?
黒留袖に見合う格のある帯は?

この方々の向学心は凄かった。
質問されたことを説明するのに「それを説明しだすと今日は練習できませんけど・・」と言うと「かまいません」と。
知識欲の方が遙かに優っていた時もあった。

向学心だけでなく、彼女たちの寸暇を惜しんでの練習には毎回目を見張ったものである。
でも物凄く私は楽しかった。こういう方々は本当に数少ないないから。
中途半端なのに自分はこれで万全と思う人の方がはるかに多い。
ただ何と言っても当日どうなるか・・・それは誰も分らない。
なにせ当日はしないといけないことや親としての段取りが多すぎるのも確か。
時間の制約のなか、緊張しての普段通りの着方は中々難しい。
都会のように親であっても会場に他のお客さまと一緒に入る・・それでいい場合は別である。

結婚式までの練習の最後の日・・・・夜・・・



お二人着物でいらっしゃる。玄関で、
「どのくらい着るのにかかった?」
と聞く私に、お二人とも
「帯をやり直していたら20分かかってしまった」と。
やり直ししなくても美容師さんでこの方々の時間で足袋からはじまり、最後まで着せつけられたら大したものである。
30分かかって普通のはず。しかもこの方々云うまでもなく、最後まで鏡を見ないのである。




結婚式の当日、キチンと着られるかしら・・・などと言いながら。
勿論当日は家族の食事やご主人の服装、子供たちへの準備など主婦としての役割も大変である。

そして結婚式の当日。


新郎である息子さんの雪駄

中々気を付けてみる機会もないでしょうが、鼻緒は白である。




そして息子さん。


物凄く凛々しく男らしいハンサムガイである。
ただ残念ながらブログに顔を出してもいいかと、承諾を取りつける事を私は失念。
多分嫌とは仰らないだろうとは思うが、承諾を受けていないものは出せないのでご了承頂きたい。
ただ私以外に其の日は着せ付けスタッフあと2人いた。
彼女たちも感動していた。
「格好いい〜♪」と。
着姿も勿論、晴れの日の凛々しさが全身に漂い物凄く男らしく清々しかった。
人生の大きな節目、それをこれだけの緊張と爽やかさ、雄々しさと周りへの気配りで迎えることのできる若者は本当に素晴らしいと。
正直な感想。

新郎のあとにこの方の振袖の着せ付け。






叔母さんの成人式の時の振袖・・・およそ40年前のもの
そして大伯母さん(この方のお祖母ちゃんの妹さん)の帯・・・50年前のもの
勿論、色も柄も雰囲気も今の流行りのものとは程遠くとてもクラシカル。



しかし、何と言う存在感。

物凄く似合っていた。
着物ってすごいね、こんな昔の物を今存在感を持ってしかもとても格調高く着ることができるって。
どんな着物姿の中に入っても一段と光るはず。

そこへお2人、黒留袖で登場。
「可笑しかったら直して下さい。」と。
勿論何処も手直ししません。
ご本人さん達が物凄く頑張って着た成果。
簡単に触ることなどできません。

で・・・・じゃあ3人で写真を・・・



皆さんとてもいいお顔〜

おめでとうございます。
さて・・・当日頂いた「五色饅頭」。
金沢では昔から結婚式の時に登場。
私の40年前の結婚式の時も親戚やご近所さんに配られた。
今も静に脈々と続けられているお家があることも感動。
今では知らない方の方が多いかも・・・


美味しくいただきました、ありがとうございます。


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夜10時頃、お二人からメールが入る。
要約すると、

   今、帰宅。着くずれすることなく最後までキチンと着物を着られました。
   脱ぐのがもったいないくらいに今も着た時のままです。物凄く嬉しく満足な一日でした。
   当初の目標の結婚式には自分で留袖が着られるようになりたい、という希望が達成できて自分でも誇らしい気持ち。

と言うような感動と達成感と私への感謝の言葉。
「自分一人で黒留袖、大丈夫?手伝おうか?」と心配されたご実家のお母様や伯母さま等も又、1人で着られたその姿を見られて感動されたことなど添えられてあった。
着物ってすごいね。そして結果は練習と言う過程を裏切らないね。
彼女たちはもう二度と帯結びを忘れないだろう。
私も物凄くいい勉強をさせて頂いた気がする。
こちらこそありがとうございました。





後日2人と話したことで物凄く嬉しかった言葉・・・

着物って決して敷居の高いものではない、自分が勝手に敷居を高くして難しいものとしていたこと。
本当に気軽に楽しく着られるアイテムの一つとして今では考えられるようになったこと。「スーツにしようか、ワンピースにしようか、それとも着物にするかな」と。とてもごたいそうだと思っていたのに、案外身近な楽しいアイテムの一つになった。
それもこれも黒留袖という一番難しいと言われる着物を自分で着られ人前に出て皆さんにとてもほめられたことが大きな自信になったのだと。


本当に嬉しい言葉をありがとう。
これからも着物ライフ、存分に楽しんで下され〜☆

            私が一番嬉しいかも〜♪♪♪