和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

京友禅の振袖〜♪

この振袖・・・・




先日の成人式で振り袖を持ってこられた方が先にセッティングされているこの方の振袖を見られて
「あれは何と言う着物ですか?」と聞かれた。
京友禅です。」と答えた。

しかし、合点がいかないような顔をされた。
「これが友禅?」と。
その方の知っている友禅とはちょっと違った雰囲気だったのだろう。
その場での細かい説明はしなかった。
時間の制約もあったので丁寧に説明出来なかったので、今日は何とか簡単に書くことにする。



向かって左は防染の働きをする白い糸目糊がはっきりと出ている。
それに比べて向かって右は白い糸目の上から金(お絵かき帳では金色がないので黄色にした)でなぞっているので白い糸目が隠されている。この両方を見るとお分かりかと思うが、普通向かって左を友禅として認識されるのではないかと思う。しかし、京友禅はその白い糸目が金で塗られているのではっきりとした色の弾(はじ)きがないのである。時には金ではなくて金色の刺繍糸で施される時もある。又京友禅が全て白い糸目糊を金で塗られているわけではない。白いまま糸目糊の物もある。ただ金や銀、また刺繍糸で彩りよく豪華に仕上げているものが多いといえる。その点加賀友禅は案外白い糸目糊のままと言うのが多い。まあ、最近では余り綺麗に線引き出来なくなってきているのではあろうが。

これは色と色が白い色でキチンと浮き立つことを避ける目的もあれば、見た目にも豪華である。
この着物を染められた作家さんは色も物凄く吟味されている。浅くてパチッとはじくような色使いは避けられていて、実にこっくりとまろやかな深い味わいの色ばかりを使われている。

又普通、地色は一色、又はその濃淡の暈しであることが多いのだが、この振り袖は地色をこういう色分け技術を使われて特色ある雰囲気と豪華さ、色みの深さを出されているのである。

ちなみにこの方の帯は



唐織である。
お母様の成人式の時のものであるとか。
横段に糸が浮いて通っているので糸をひっかけ易い。
それで余り凝った結びはしなかった。
シンプルに・・・古典的に・・・という先方のご希望もあった。
着物は新しく新調されてお祖母さまからのプレゼント。


三人で記念写真。

ちなみにお母様は実にすばらしい方なのでちょっと書かせてもらうことにする。
最初は自分で着られるようになりたいといらしたのである。
仕事はフルタイムでしかも責任ある地位に就かれているので毎晩とても遅い。
その合間を縫ってのお稽古。何時まで続くかな・・と心配する私。
しかし何と見事に着物を着ることが出来たのだ。
名古屋帯袋帯も、今では着物を着るのに15分も必要としないだろう。

夜、仕事を終わられて家に帰られ、そこからババツと着物を着て和装組曲に。時には夜10時半頃まで練習なさる。そして自分が着られるようになったら、ご主人にも着せたいと男物も習われた。しかも今度は娘さんが成人式だから、着物に慣れさせるために年末、年始の忙しさを縫って着物を御嬢さんにも着せ付けられた。


年末に我が家の門にお嬢様の姿・・・びっくりである。
「可笑しい所がありませんか?」と。
いえいえ、パーフェクト。
お嬢様の手には早咲きの桜の枝。
お正月に使って下さい、と心配りも凄い。
此の時の着物、帯、羽織は叔母様の若い時のもの。
大事に着られているとこんな風に何代も着ることができるというお手本のようでもある。
ちなみに持ち主の叔母様も和装組曲の生徒さん。
今はお二人で黒留袖に挑戦である。
寸暇を惜しまれながら練習をされる姿に私も脱帽。
お嬢様もすっかり着物ファン。
お正月はご家族で着物で過ごされ親戚にもご挨拶できたとか・・・

着物姿も板についた成人の日の振袖姿〜







生まれて20年・・・・色んな思いの中で育てられはぐくまれていらしたお嬢さんの晴れの日。
一言に20年といってもやはり仕事を持つ身には色々苦労もあっただろう。
当日は成人式の後、お母様、お祖母様、ご本人様と皆さん着物で写真撮影もできたようだ。
おめでとうございました。

私はといえば、インクジェットの振袖ばかりを見ていると、こんな振りそでを選んで
「孫に・・」「娘に・・」と思われる方々がいらっしゃるのが何とも嬉しい。
そしてお嬢様もお母様やお祖母さまのご意見を尊重されている。
伸び伸びと大らかにまるで現代のおひいさまの雰囲気のお嬢様を見ていると本当に心が和んだひと時だった。

成人、本当におめでとうございます。
どうぞ良い人生の船出を・・・と祈るのみである。