和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

破軍の星

北斗七星は北天の大熊座にある七つの星だが、その斗(ひしゃく)の柄にあたる第七星を破軍という。
剣の先のように見えるという。
陰陽道ではその剣先の示す方向は「万事に不吉なり」とされ忌んでいるとか。


破軍の星 (集英社文庫)

破軍の星 (集英社文庫)



今回読んだのは北方謙三氏のこの本。
此の人の歴史小説はやはり面白い。
と、いっても「波王の秋」以来の2冊目に過ぎぬのだが。(笑)

時は南北朝の頃。主人公は北畠顕家(あきいえ)。村上源氏の血をひく公卿の名門で宮廷内でもその名の高い北畠親房の嫡男である。建武の新政権で後醍醐天皇辺境警備の重要性を説く政権構想に従い陸奥守として帝の六歳の親王を支得るべく辺境の地に下る。なんとその時に顕家は16歳であった。各地で起こる反乱を鎮めながら奥州統治に着手する。「若輩者が・・・」「公卿ごときに・・・」という揶揄の中を一つ一つ舌を巻くような活躍をし、鎮静し整備していく。周りを取り込みながら地道に改革をやり遂げて行く。

足利尊氏の反逆後、尊氏を打つべく京へと登る。
楠木正成と呼応しながら凄まじい勢いで追いつめて行くのだが、新田義貞の不用意さから後一歩で尊氏を九州に逃がしてしまう。

東国に戻った顕家を待っていた物は土地に潜む武士の度重なる反乱。
国府を移しながら防戦となる。

そんななか再び帝から尊氏を討つべき命が何度も下る。
奥州を少しでも戦のない平穏な地と変えるのが先か・・・
帝の命に従い沢山の人々の血を流しながら京にいくべきか・・・
別の策はあるのか・・・
顕家は自分の心と向き合い続ける。

16歳から21歳までの僅か5年間の話である。しかしその見識の広さと武力に秀でた一公卿の生涯を峻烈にしかも何処までも爽やかに描いている。裏切りもなければ胸の悪くなるような駆け引きもない。真摯に真っ直ぐに、しかも目線はいつも遙か彼方を見据えている。騎馬隊を何処までも鍛え、そして配下に気を配る。誰に対しても公平で有ろうとし、奮戦する時は自分が一番に敵陣に乗り込む。



中でも足利尊氏打倒に京に向かう時、むずかる幼い親王に懇々と説くくだりもいい。
・・・寒いだの疲れただの、ひもじいだの言うてはなりませぬ。まして食べた物を吐くなど死んでもしてはなりませぬ。皆その食事も取れずに命を掛けて戦っているのですから・・・と。
又、小さな身で戦場に駆り出すのを懸念する人たちには・・・主上の名で皆戦うのです。死んでいくもの、飢えて行くもの、凍死するもの、せめて皆その目で見て頂かないといけない・・と。兵士が通れば食糧など無くなる、何万という軍隊なのだから。近辺の農民は軍隊の通った後飢えて死んでしまうのです。武士は武士で戦うが、農民も農民での戦いなのだと。戦うと言うことはそういうことなのだと。お主上も堪えることが今主上にできる戦いなのですと。
「うん、分った。吐かぬ。死んでも吐かぬ。」と親王は答える。この親王が後の後村上天皇となる。

後見するとはいいものばかり見せて都合の悪いものは見せない、聞かせない・・と言うのではいけない。京にいる帝もまた然り。傍にいる公家が自分たちの栄耀栄華をむさぶりわが世の春ばかりを求めてはいけない。帝への厳しい言葉も登場する。読んでいて小気味よい。

多分実在の人物ではないであろう忍者「如月」も何とも物語を引き締めて良い。
武士でもなく、公家でもない、山の民としてどっかりと地に足を付けて生きる藤原氏の末裔を匂わせる安家一族の存在も物語に厚みを持たせて面白い。

そして人は皆死んでいく。
顕家も百騎の兵で八万の大軍に切りこんで壮絶な死を遂げる。
その血をこの世に残して。
時代はそうして続いて行く。



読んでいて思ったこと。北方謙三氏の歴史小説は小気味が良いと言うこと。主人公が人として崇高であること。そして夢はいつも国の今ではなく未来をとらえていること。私利私欲は全くない・・に等しいと言うこと。ないわけではない、しかし物凄く厳しい姿勢で自らを戒め律していると言うこと。だから迷った時に取る道も読者を見事に納得させて行くのだ。
一言で言うと、物凄く爽快なのだ。
物凄く気持ちのいい読後感なのだ。
これ大切〜♪


面白かった。
作家ってすごいね。
一気に読めた。

夜10時過ぎ頃から読み始めた。
適当なところでやめておくつもりだった。
読み終えた。朝方だった。


ちょっと普通の歴史小説とは一線を画す気がする。



武王の門〈上〉 (新潮文庫)

武王の門〈上〉 (新潮文庫)


武王の門〈下〉 (新潮文庫)

武王の門〈下〉 (新潮文庫)



次は時間を見つけて「武王の門」を読む。
こちらは同じ南北朝の時、後醍醐帝のもう1人の皇子、懐良王が九州で統一を目指す話。

今マイブームは南北朝
足利尊氏北朝で、追われた後醍醐帝が吉野に南朝を開く。
今度、新しく琵琶で挑戦する弾き語りが「吉野落ち」。
後醍醐天皇の軍が足利尊氏に追われ吉野に追われる時、親王を逃す為に命を掛けた男の話なのだ。

今年この弾き語りに挑戦できると知った時は鳥肌が立った。
私も死ぬ気で練習しよう。

それはまた、いつか時間のある時に。

ではでは・・・・・〜♪




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「えっ?」着物の話はないの?
今年からは一級受験する方は自分で課題を見つけよう。
今回ブログに出てきた人の家紋くらいは言えるようにしよう。

  北畠親房、顕家  足利尊氏  楠木正成  新田義貞  

書けるようにしよう。
それくらいは自分で考えよう。
もう手取り足取りはしないと決めた。
寄りかからず全て自分で考えよう。
それもまた楽しいはず。
今から私は夜の部の教室さ。。。。

ではでは・・・一級受験の姐さん方・・・アディオス〜☆