和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

四月の養成コース&着せつけの日


先日4月の養成コースがあった。
別に特別なことではない。
今までの方なら月2回程度のこの教室とあと各自参加できる月2回程度の自主練習に参加していたのだが、今年の方々は月8回は教室に顔をだしている。
これは以前に何度か書いている。ドンドン上手になっている。恐ろしい位のスピードである。


・一人目・・・「着物の素材」の講義

   絹・麻・毛・綿という素材とどのようにしてそれが日本に入ってきたのかと言うことを主に各素材の長所、欠点などをからめて着物にどうつかわれているのか、と。


・二人目・・・「男の着物」の講義

   襦袢、着物、帯、袴など女性のものとはどう違うのか、仕立てを絡めて裏地も含めてご主人の着物を持参して説明。


・三人目・・・「子供の晴れ着」の講義


   子供が誕生してからのお宮参り、七五三、十三参り・・・それらのいわれを時代を絡めてどのように変遷して現在に至ったか、自分のお孫さんの晴れ着を持参しての説明。

・四人目・・・「足袋」についての講義。

   素材は勿論のこと、何時の時代からどのように変化して現在の足袋の形になったのか、また、自分で注文して足袋を作った時の経験談などをもとに説明。


各人の時間内に収める講義を聞きながら本当に感無量。
ちょっと胸が熱く成っていた。
よくぞここまでこのひと月の間に勉強したなあ…と。仕事を持ち、家庭を持ち、しかも月8回毎回課題をクリアしないといけない。それをこなしながらここまで話すことができる所まで自分のものにしているのだ。
しかも以前と違い回を追うごとに物凄く上手に話される。
初めは聞き手の顔を見ただけで多分・・・真っ白になったようなたどたどしさがあったのに、今ではにこやかな笑い顔で実に興味深く話すことができるようになっている。更に聞く方の注意をそらせないような上手な説明でとっても分かり良かったし何せ聞いていて楽しかった。

滅多に褒めない私が手放しで褒めるので皆の方が疑わしげな目線を私に向ける。(笑)
「このお婆は何か魂胆があるに違いない」そんな目でじとっと。
信用ないなあ・・本心だよ、と。
物凄く上手でしたよ。一人20分間程の講義内容でしたが充実していた感有り。
20分であれだけの内容を慌てないでしかも余裕を持って凝縮できる皆はエライ!!
養成コース始まってまだ3〜4カ月しかたっていないのに・・・努力の成果が素晴らしい。
ちょっと苛ついて聞いていた最初とは打って変わりこの進歩は目覚ましい。
どんなことも努力があって結果が付いてくるのだ。


そうそう・・一つ・・・晴れ着についていた紋・・・

これは「丸に並び矢」尚武紋である。
家紋の書物以外で今まで見たことがなかった。
神事として伝わる破魔矢は今に伝わる風習でもあり、石川県は能登地方にまだまだ流鏑馬(やぶさめ)として行われているので案外武士としてと言うより神事としての風習かもしれない。ちなみに昔武士たちに人気のあった「鷹の羽紋」はこの矢羽の部分に鷹の羽を使っているものを言う。
珍しい家紋を見せていただきありがと。この「並び矢」の家紋は梶原景時が有名。
写真の指の下にみえる飾り縫いは子供の晴れ着の紐を縫いつける時の決まり縫い。こんなところも実際見ると楽しい。



この日の講義を終えたら早速制服に着替え夕方からの着せつけに備え、手を着物になじませている。
この日の着せつけはこの二人が担当。自分たちの着物を使って暫し練習&互いに確認作業。



結婚式の二次会のパーティーに参加される方の着せつけ依頼。
美容院さん経由なのでお会いするまでご本人の雰囲気不明。
五時前に衣装到着。
訪問着と袋帯。二重太鼓でとのこと。了解。
二人で準備。手際も今では物凄くテキパキと見ていて気持ち良い。
慣れて来ているのが見ていてわかる。

着物はちょっとクラシック・・で帯がなんと今風。アンバランスの感有り。
難しいなあ・・・どんな方かは会うまで不明だが、
この着物と帯はちょっとあわないなあ・・美しい着姿は難しい・・と。
いっそ着物に合わせてどっしりした帯ならまだよい。
逆に帯に合ったシンプルな着物ならそれはそれで素敵に仕上がるだろう。
又共にコテコテならコテコテでなんとか雰囲気出るもの。
帯はあくまで今風なのでさっぱりしている。
着物も帯も生きないなあ。。。どうしょうかあ・・と。
どうしようもくそもない、お客様の持って来てくださるもので着せつけるしかないのだ。


ところがじきに頭をセットされているお客さまから美容院さんを通して突然電話。
飾り結びをしたいとのこと。
「えっ?!」
「無理??」
「いゃあ〜・・この帯はちょっと無理。ワンポイント柄だし、そもそも飾り結び用ではないしね。」と答える。
「急にどしたん?飾り結びの方がいいの?」
話を聞く私。そのパーティー・・・なんと参加はできるだけ着物という趣旨らしい。
皆気合入れて物凄いのを着てくるだろうし、二重太鼓は地味かも・・と。
お母さんかおばあちゃんが適当にタンスから出してくれたはいいが自分でよく見ていない。着物の事よくわからんし・・・と。
「この着物に思い入れある?」と聞く私に「全然〜」と即答。


じゃあ着物か帯をどちらかに合わせて変えよう・・となる。
「パーティ開場はどこ?」
大きなホテルだ。
ホテルの壁は白が基調だ。この着物は諦めた方がよい。
この着物は老舗料亭に物凄く映えるだろう、でもホテルはちょっと・・どうかなあ〜。
ホテルで着て行くなら帯の色と素材、そして結び方を物凄く厳選した方がよい。
いつかそれで結んでご本人を驚かせたい気持ちもあるが、ちょっとそれには準備がいる。

今回は帯を活かそう・・・その時の帯は軽くて薄くてパステル調である。
「この帯をメーンにしよう。この帯に似合う着物何かない?」
ショーの時に使ったものを頭の中で色々考えるが・・・・
その時突然ひらめいた。

あれだ!!

なんと・・・ピッタシのがある、有る、有るのだ。
このブログでおなじみの「thimbleさん」こと「チューダーさん」。
彼女から頂いた着物が。
着物や帯や小物など「そちらで使かってください」と段ボール箱でいただいていたのだ。
たしか、あの着物は物凄く上品で綺麗な色だった、と。帯に合うはず。
柄もひっそりと小さくて、たしか京友禅の訪問着。
知的な品の良さがあった。あれにしよう。



ご本人はとってもエキゾチックで雰囲気のある方なのだが、洋服とはまるで別人に変身。
お顔をお見せできないのが真に残念。
私の膝がもっと曲がるとしゃがんで下から写真を撮れるのに残念。
丈がちょっと短めなのはこの方には少し着物の丈が足りなかった。
三センチは長くしてあげたかったのだが、まあかろうじて許されるかな。

着物姿に限らず女性を一人だけ見ているととっても綺麗で華やかなのだが、大勢集まる所で何十人も見るとやはりその方の全体の雰囲気がとても大切になる。可愛いのは未婚女性の振袖姿にお任せしたらよいのだが、既婚の落ち着いたその方の雰囲気も大切にしつつ、知的で品の良さを加味してあげたい。
そういう意味ではこの着物、そして帯・・・ご本人にはとっても喜んでいただけた。良かった。ほっとする。あくまでも本人が気に入らないと同じ時間を過ごすにも楽しくはないはず。


「おいくらですか?」と聞かれ正直迷った。
普通なら単なる二重太鼓なら五千円、変わり結びを取り入れたら八千円である。振袖は一万円。
しかも今回は着物もこちら持ちである。
クリーニングもある。一万円いただいてもいいかも・・・と。
その時にthimbleさんからの手紙の文面を思い出した。
「この着物が生きる使い方をしてください・・・」と。

思い入れのある大切な着物を和装組曲にくださったのだ。
誰かに譲るのでもなく、知り合いにあげるでもなく、この私、雲竜柳に任せてくれたのだ。
その時決めた。というより口が勝手に喋ってしまっていた。
「五千円で」と。
「えっ?そんな・・・じゃあせめてクリーニングして持ってきます」と。
「クリーニングはこちらでするのでいいよ〜」と。

なまじっか何処かにクリーニング出して着物を痛めても困る。大切にずっと使わせていただきたい。
自分で信頼のおける所にだそう・・・と。
クリーニング代はこの着物に関しては自分持ちにしよう。
(どこまでも経営者失格の私〜)
一部始終を見ていたケセラセラさんがあとでニヤリ〜♪
「絶対先生は五千円と言うだろうと思ってましたよ」と。
すっかり見抜かれている・・・

thimbleさんが私に預けてくださったのだ。
せめて私も何かを負担しよう。
若い方々が着物の着方やお洒落なコーディネートを体験して着物好きになってくださればそれはそれで意味があるのではないか。
そう思って。。。。

この方がどうか、深夜まで二次会で楽しんで良い思い出を作ってくださいますように〜♪

thimbleさん、ありがとうございました。
あなたから頂いた着物、とっても活躍しましたよ。
まだまだ頂いたもの、これからも活躍させますよ。(笑)




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後日談。
この日着せつけ担当をした若いメンバー・・・
コメントでおなじみの「やまみち」さん。

彼女は来月友人の結婚式に着物で参加予定をしている。
振袖着ると物凄く派手になるので振袖を着ないで、訪問着に二重太鼓を自分でひっそりと地味に着て行くつもりだったとか。
それがこの日のこの方の雰囲気を見て・・・
「私もちょっとコーディネート考えてみよう」と。

そしてその場にいた皆が一斉に盛りあがった。
そうそう・・・・振袖であってもひっそり着ることはできるよ。

そして「ビフォアー&アフター」しようと。
一番盛り上がったのは私かも。
折角やもん、自分が一番綺麗に見えるように考えようよ・・・と。
綺麗にする・・というのは何も派手でコテコテ飾り立てると言う物ばかりではない。
ひっそり知的にそしてどこまでも・・・加齢に・・・違う、違う・・・・・華麗に!!




で・・・皆で「やまみちを変身させよう」を企画。
「やまみち」さんは若いながら落ち着いていてあまり派手派手しいのを好まない。
そしてご本人の雰囲気は「知的でクール」。
でも結婚式、ある程度の華やかさや豪華さはあった方が良い。

今からひと月掛けて養成コースメンバーでおおくりします。

      「やまみち誰にも負けない変身〜知的&ゴージャス〜」

副題を「〜コーディネートの妙〜」としよう。
新しいものを買わない。おばあちゃんの物やお母さんのもので合わせ方、結び方で工夫をする。
そんな企画。

ゴージャスと知的がどこまでコラボできるか・・・しかも持っている着物と帯で。
二度とこの話題が私のブログで出ないとしたら、「し〜ん」としていたら、彼女たちが挫折したと思ってたい。(笑)
さあ・・・公言したのだからやるしかない。
みんなの秘かにでもしっかり持っているプライドにかけて・・・・

私は高見の見物さ〜・・・♪
「えっ?」とパソコンの前で言ったやろ?
大丈夫。君たちにはケセラセラさんが付いている・・・・多分・・・