和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

磯馴松(そなれまつ)

今日はお正月には欠かせない松の話・・・・

過去に何度か松の話をしてきた。
風雪に耐え一年中、緑の葉を保つ松は長寿の象徴。
正月には門松を立て年神様を迎える習わしもある。
松の意匠を使うようになったのは平安時代からと言われているが多様化したのは江戸期。

  若松 五葉松 笠松 扇面松 根引き松 枝松 老松

大王松は明治に入ってから日本に入ってきたので着物の柄としてはそれ以降となる。

中でも年月を経て風格を増した松を「老松」という。能舞台の鏡板に描かれているのもこの老松である。
留袖や訪問着など格式のあるものには案外この老松が描かれている。
「友白髪」のバックもこの老松が多い。松は神が宿る木とも言われている。

このあたりまでは以前に書いた気がする。
そうそう、光琳松も以前に触れたと思う。
どうみてもシイタケに見える・・・とかなんとか。

今日は初めて触れるかもしれぬ「磯馴松」・・
「磯馴松」と書いて「そなれまつ」と読む。
かなり本を読む方でも、着物の知識が相当ある方でも案外この松は聞いたことがないのではないか、と思う。
名前は聞いたことがなくても見ると分かる。
「ああ・・・これか」と。
かたがって生える松の事である。


        ・・・・・・・・・・・磯 馴 松・・・・・・・・・・・


一般に地上に出ている木の枝の大きさを見ると地中の根の幅が分かると言われている。
真っ直ぐに上に伸びる幅の無いたとえば杉のような木は根は深くても根の幅がない。
だから風に倒れやすい。
反対に欅(けやき)の木のように枝の幅の広がっている木は地中の根の幅も広くどっしりと広がっている。街路樹に多いのもうなずける。
コンクリートの下にしっかりと根を張り日よけや風除けなどに役立ってくれる。
普通松に限らず樹木は剪定されない限り真っ直ぐに天上に伸びる。
狭くて何か障害物があれば別であるが。

さて・・・・海岸など砂浜で周りが広いのに垂直に伸びないで角度を付けて伸びる松がある。
潮風や吹き付ける寒風に耐えながらかたがって伸びるのである。
そういう松を「磯馴松」という。

着物の柄にまれにある。花嫁のれんにも時々見かける。
何故真っ直ぐな松を書かぬのか・・・

北国の海沿いの松林を思い出してもらえたら嬉しい。
かたがりながらも寒い潮風、北風、寒風に耐えそれでも一生懸命生えている松。
傾斜している方の枝が遥かに長く横に広がっている。
つまり広がっている枝の所まで地中に根があるのである。

植えられたその場所に耐え、必死にその環境に適そうとかたがりながらも成長していく。
枝を張り、根を張りかたがって生えている。そしてちょっとの風にもビクともしない強固な松になって行く。
そういう松の姿に、嫁いで行くその土地、その家、その家族に馴れて従順にかつ粘り強く折れずに適応していく健気さを重ねたに違いない。
そういう風に枝を張り根を張りしっかりとした土台を築いてほしいと望んだに違いない。




今日の金沢・・・寒い。
昨日も寒かった。


最高気温が1度ないとか。
今からはこんな日が続くに違いない。
雪や霜を受けても緑を保ちひたすら春を「まつ」・・・

皆さま風邪など召されませんように。