和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

縫いあげ&肩あげ

裄や丈の長い着物を縫いあげるやり方にちょっと触れておこう。


色々なやり方があると思うし、その子の背丈や年齢にもよるので一概に「これ!!」・・とは言えない気がする。
着物が一つ身なのか、三つ身なのか、はたまた四つ身なのか大人用なのか、にもよって違ってくるだろうし、その子の体のポリームによっても違う。

普通はお母さんがその子の成長に合わせて微妙にやり繰りして着やすいように工夫するものなのだがそんな時代でもない。

前回、まりんかさんが福島の子供たちに大人用の浴衣を着せつけたいのだが縫いあげの仕方が自己流で不安・・・とのことなのでちょっと参考になればと書くことにした。
何でも自己流でいいのだと私は思っている。命に別条があるものでもないのだ。
ただ知っていた方が楽・・と言うこともあるし、どうせなら綺麗にしてあげたいとも思う。
又、そんなことでもないと注意して考えもしない・・ということもある。
で、まりんかさんの自己流は良しとして、私の知っていることも書いておけば何時か、何かの時に役に立つやもしれぬ・・と思った次第。面倒だと思う方は自己流を通すのも又いいかも。
こうでなければならぬ、などと言う物は案外少ない。臨機応変でちっとも構わない。
それらしくなれば十分なのだ。
知っている方は自分の知っていることをそれでないといけないように言うのだが、人の命がかかったり、法律に触れるようなことならいざ知らず、着物の縫いあげが多少どうあろうと態勢に影響はないのだ。(笑)
その道の教科書に出ているやり方でない方が、簡単なことは案外実際あるのだから。
ただ今回は話のついで・・・と言っては何だが、私は書くと言ったので書かずばなるまい。

大人用の着物を小学校高学年に着せるのはそのまま着せても大丈夫。
今の5年生や6年生は150センチ〜160センチあるので。
以前ショーをした時、150センチの女の子に170センチの振袖を着せつけたことがあった。
案外大丈夫だったという経験がある。大人用でも案外おはしょりで何とかできるものである。

ただ小学生でも低学年、中学年の場合そうもいかぬ。

女の子と男の子でも違う。
男の子は楽である。
おはしょりがないので長い分そのままあげればよい。
何処で上げるか、だけの問題。
揚げをする場所としては女の事とほぼ一緒。

ここではややこしい女の子を例にとる。
140センチの女の子を想定するとする。
140センチの子の一番着やすい着物の丈は140センチ。
(ちなみに140センチの男の子が一番着やすい着物の丈は120センチくらいだ。男の子の場合はおはしょりを取らないので。)
頭の部分が丁度おはしょりになる。肩からはおっても頭部の20〜25センチくらいはおはしょりになるので具合がいいのである。
ちなみに男の子は身長から20〜25センチくらい引いたら着物丈が丁度良く成るはず。
(大人と違って子供は頭が小さいので20センチでもいいのだが、浴衣はぞろりと長くする必要もないだろうから25センチ位までとした。)
これも昔と今の子たちの身長の中に頭の占める割合も違うので一概に言えぬ。
今の子たちは顔が小さくて、手足が物凄く長いので。
では140センチの子に160センチの大人用の着物を着せる時、着せやすいように縫いあげをするとする。
20センチ長いので10センチの丈(10センチ×2)の縫いあげとなるはずであるが実際は本来のおはしょりの分があるので20センチ程度の揚げとなる。20センチの揚げといっても半分に折っての話なので実際は40センチ揚げで丈が短くなるということである。
裄は両肩で揚げをするので20センチ長いと言うことは片方5センチ(5センチ×2それが左右)ほどの肩上げとなる。
これもまた、5センチと言っても折り曲げて5センチなので実際は10センチなのだ。
それを左右の肩でするので20センチ全体の裄は短く成る。
揚げが20センチくらいまでは良しとして、それ以上はどうするのか・・
25センチや30センチの揚げはちょっと見るからにやぼったく重いぞ、と。
そういう時は揚げを二重にする。
揚げの下にもう一つ揚げを小さく作る要領となる。
裄の場合でも、丈の場合でも同じである。

ここまではいいだろうか。。。

では実際どの部分で揚げをするか・・・という問題。
これが案外出来の良し悪しを決めたりするから気を抜けぬ。

肩の縫い揚げは今まで見てきた中では大きく2通りある。
肩幅の3分の2のところで揚げをする場合と、2分の1のところで揚げをする場合と。
右肩と左肩で違えて図に書いてみた。
どちらでも。
小さい子なら襟のすぐ近くの2分の1あたりでも可愛い。
ちょっと大きく成ると3分の2あたりがいいかも。
揚げが顔から離れた方が案外落ち着く。
こればかりは好みなので・・好き好き。
浴衣の場合はあまり変わらない気がする。
これが十三参りのような大人びた年齢だと、着物も振袖となるので揚げは顔からちょっと離れた方が柄的にも落ち着くような気がする。和裁の専門家は又違う意見があるかもしれないのだが。

さて、丈の揚げは着物の丈の半分あたりにするときれい。
襟先の下でする方がやりやすいことはやりやすいのだが、そうすると兵児帯の下に縫い目が出る。これはちょっとやぼったい。
出来れば縫い目は兵児帯の下に隠れると美しいし可愛い。
襟先が少しかかるくらいの揚げになってちょっとやりにくいかもしれぬ。
なぜなら下手にするとゆがんでしまう。
襟のところのカーブで2個ほど小さなダーツをとると綺麗になる。
着姿は男女ともその方がすっきりときれい。


中々説明が難しいので何か分かりやすいものがないかを探してみた。

これは胴抜き仕立てと言って「胴裏」の羽二重がついていない。
昔はこんな仕立てが多かった。
勿論これは普通の着物の場合で浴衣ではない。
でも揚げのやり方は一緒なので参考に。

多い分量だけ半分にして縫うので実際は5センチの縫い目に見えるがその倍はあげられているのがお分かりかと思う。
縞なので実は良く分かるかと思うのだが、丈の縫い揚げを見てほしい。
縫いあげた所と下のところの縞の模様がキチンとあっている。肩の縫いあげも縞の柄の並びを壊していない。
まさしくこんなところもプロの技。
素人がやるとかなりずれる。
「ここが揚げた場所」とはっきり分かるような仕事になるのだが、プロは目立たないように美しい仕事をするのだ。

話が違うが、この子供の着物・・・・可愛いでしょ?
こんな着物、どこにも売っていないはず。
和装組曲がオープンする時、実は頂いたもの。手作り。
作られたのが当時90歳をゆうに超えられた方だったと思う。
生粋の江戸っ子のおばあちゃん。
昔、和裁学校で教えていらしただけあり物凄く仕事が丁寧。
しかも、実際の寸法を縦横3分の1に縮小して完全に作られたものなので実際は本当の大きさの9分の1ということになろうか。袖の丸みまで正確。この方は肩は2分の1のところで、丈は襟も含めて揚げをしてあるので兵児帯の下に縫い目が行くような揚げとなっている。ダーツも綺麗に取って襟が綺麗に仕上げられている。
私が縞が好きなので縞の紬で作って下さった。

以前、7年以上前、パソコンなど触ったことのない私はタイピング練習を兼ねてブログなどを見よう見まねでやってみた。半年ほどでやめてしまったのだが。その時知り合った方がいた。


着付け教室をやろうと決めたはいいが、資本がない。
できるだけお金をかけないで・・と自分で内部図面を引いた。

大学の時に町屋の研究で有名な建築家が講師としていらしたので、講義を取ったことがある。
物凄く面白く昔の人の知恵が凝縮していると感動しながら毎回受講した記憶がある。
その先生の野外調査で東山の茶屋街を調査する一員として参加した経験もあることから設計図面を引く機会もあったのが参考にもなった。若い時はちょっと見には全く関係ない分野の事でも何時どんな時自分を助けてくれるかもしれぬとどんな講義でもすすんで受講したものだ。
余談の・・更に余談の領域になるが、大学の時に案外皆さんさぼられていた。
私は授業料がもったいないので受けられるものは皆受けた。
うける講義がなくなったら他の学部まででかけた。
許可のされない場合は潜りで聞いた。
医学部の解剖学の講義や、法学部の家庭の中の法律、薬学部の薬草講座も行ったことがある。
建築学や住居学はそんな中での一つだったかもしれぬ。
なにせ大昔の事、記憶も案外朧。

とにかく改装図面だけでも毎日10枚以上書いていたように思う。
その枚数だけで500枚は超えたはず。それくらい上手くいかない難しい状態だった。
以前は納屋の物置小屋。だから強度はあるので内装だけの話。
だが外装を触らず、窓の位置を全く触らず、トイレの位置を触らず、梯子で登っていた階段をどう作るか・・・
天井に大きな大きな鉄筋が強度を保つため入っている。それのおかげで階段を何処に作っても鉄筋が邪魔をした。
その鉄筋を邪魔しないように階段の幅や高さをどうするか、どの角度でどう屈折させるか。
2階の教室にどう階段を合わせるか・・2階の洗面所の場所も配管を触りたくなかったのもある。
1年はゆうにじっくりと取り組んでいたので、問題は一つづつ取り除かれ、どうしても上手くいかないところが最後一か所だけ残った。
こんなことをブログに載せていいのだろうかと思い悩みはしたが、餅は餅屋・・とばかりにプロの意見を聞いてみることにした。
「この窓を半分にしろ」とか
「玄関の位置をかえたほうが・・」とか
「トイレ位置をずらせた方が・・」とか。
なんでも少し触ると凄いお金が発生する。
窓を触ると外装を変えないといけない。
玄関の位置を触ると外装だけでなく壁まで変えないといけない。
トイレの場所を変えると排水管の角度や地面のコンクリートの傾斜までかえないといけない。
内装のお金は回収できないお金なので極力抑えたかった。
最後は階段だけは特注にするしかないかも…と。
何とか市販の階段を使いたかった。
自分の思いとは裏腹に
「気に入ったものにするために金を惜しむな」
などと非現実的なお叱りまで受けて苦笑するしかなかった。

諦めていた時ある方にアドバイスされた。

「壁を斜めにしろ」「直角にこだわるな」
・・・・その一言で目の前の霧が晴れて行くのが分かった。目から鱗。全て問題解決。

凄い感覚だと舌を巻いた。人の目には錯覚があるのだと。少しの事で広くも感じ、狭くも感じる。そこを利用しろ、と。
とにかく経験を積んだベテランは思いこんでいくところがあるが、本当のプロは実に柔軟な頭なのだと舌を巻いたものだ。パラリと発想がかわるという面白さを経験させてもらった。そこから発想を転換し事務所のドアは平面の壁ではなく隅の角を切り取って付けようと言う発想へと広がった。かくして・・・我が和装組曲のトイレの壁が直角でなくなり、だからこそ洗面所が広くなり、普通の企画の戸が付ける事可能になり、玄関の場所が開けて、階段をずらせて付けられたのだ。鉄筋は少しも削らず、さわらず、そのまんま。。。

話の結論に中々行きつかぬ・・・この着物、実はそのブロガーのお母さんの作。
着付け教室が完成された暁に送ってくださった。
いつか役に立つかも…と。今は時々教室内にディスプレイ。
そのブロガー、後でわかったが恐ろしいくらい物凄い方だった、という落ちまで付くのだが。
が・・・その話はまたの機会に。機会があればだが。。。余りにも長くなりすぎ〜♪

ちなみにその時のブロガーで別の一人が和装組曲のホームページを現在も作成してくださっている。
ブログに何気なくアップされた、その方の写真に惚れこんでしまった。
ヤモリが車に入り込んで座席にいる写真だった。
レンズを通してヤモリに向けるその人の温かなまなざしが伝わってきた。
温かみのある、誠実で、実直で、正直な方・・・今時そういない、と直感した。
で、HPをその方に即決した私。
7年のお付き合いである。
現在も大変お世話になっているのだが、お声を聞いたことも電話で話したこともない。
メールのやり取りだけで私のHPは出来上がっているのだ。どんな方かも知らぬ。(笑)
HPのみならず、パンフレット、各種案内、ショーのパンフレット、ポスター等々・・
その方にお願いしたことを後悔したことは一度もない。
ブログって面白いと思った瞬間でもあった〜☆
お二方ともその節は本当にありがとうございました。

さて、話がドンドンそれて行くので戻ろう・・・・最後にもう一つ・・・

大人の物を小さな子供に揚げをして着せつける時、一つ注意。
大人の浴衣の柄はとっても大きくてダイナミック。
特に大人用として作られているので当たり前。
子供用には物凄く違和感のある大きさになるはず。
たとえば大きな朝顔、ハイビスカス、芭蕉の葉、・・・等々。
大人にはいいが子供には少し無理がある。
で、大人の浴衣でも、たとえば撫子のような柄、桜柄、花火のような柄・・と言う風に子供でも可愛く着られるような少し小さな柄のものがいいかと。。。

ごめん・・・・まさに老婆心・・・すんません。

       

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

明日は早朝から丹後の縮緬&精錬工場の見学に泊りがけで行ってくるね。
前々から一度生で機械を見たかった。
帰ってきたらご報告するね。
興味のある方がいたら珍しい、多分。
誰も興味ないよね。正直なところ。
興味のない方は、ごめんなされ〜。

でもね・・・
美しいもの、人を感動させるもの、人を引き付けるもの、
そんなものには必ず縁の下の方々がいるのだ。
美しい友禅を作り上げるには素晴らしいどっしりした縮緬が必要なのだ。
細かい江戸小紋を作り上げるには土台となるきめの細かい良質な縮緬が必要なのだ。
着物の華やかさを人は愛でても、素材の良さまでは中々気持ちが行かない。それが正直なところ。
誰に分かってもらうでもなくコツコツ地道に励む人たちを見て来たいと思う。
そしてむしろそういう方々のほうが毎日それこそ地味な努力と精進を絶え間なく繰り返しているに違いないのだ。
人は華やかで雅で人目を引くものばかりに注目するが、本当はそういう地味なことこそ大切で重要なのではなかろうか、と思う私である。

だれも気にも留めないかもしれない。
読みたくもないかもしれない。
でもいいのだ。私のブログだ。開き直っている。

      こんなブログさ〜・・・こんなお婆さ〜・・・
             そう思ってサラリとかわしてくだされ。。。。

地道なものをしっかり発信していきたいと念じている私。


       ・・・・ではではみなさん、行ってくるざます〜・・・