和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

武蔵野〜

秋の七草の事を簡単に書いたついで・・・といっては何だが・・
「武蔵野」の事もここで触れておかないともう機会もないかと思うので。

「武蔵野」といえば国木田独歩
武蔵野の自然を余すところなく美しく書きあげているとか・・・
読んではいない。受験の時無理やり押し込んだ記憶だけ。

「武蔵野」・・・着物の柄行きにもある。
美しい秋の草花文様に「月」を配したものを言う。
秋草文様はなんでもいいのである。

また、余談になるが 
「武蔵野」・・・お酒のみの人は知っているはず、大きな杯のこともこう言う。
余りに広くて「野を見尽くせない」・・から。「飲み尽くせない」。

こういう面白い言い方は名字にもあって
たとえば

        小鳥遊・・・と書いて「たかなし」さんという名字

        月見里・・・とかいて「やまなし」さんという名字。

ちょいと余談が過ぎるが、何故こんなことを書くかと言うと着物の世界の話にもあるので。

        四月一日・・・と書いて「わたぬき」さんと読ます名字。

四月朔日とも書く。
案外知っている方もいると思うのだがこれは
平安時代から四月一日から九月九日(勿論旧暦で)が衣替えの時期だった。
四月一日はそれまで着ていた綿の入った着物を脱ぎ袷(あわせ)に、五月五日には単衣(ひとえ)、帷子(かたびら)に替える日。九月一日にはまた袷、重陽節句の旧歴九月九日には又綿入れを着出す日だったため。
勿論新暦になってからは六月一日と十月一日が衣替えの日となった。
今では綿入れなど着ている人もいないし、綿入れなるものがどういう物か知る人もいないのではないか。
私の子供のころは綿入れ・・とか、どてら・・とかいって囲炉裏しかない寒い家では雪深い冬の必需品だった。新しい綿入れを作ってもらい何処に行くのもそれを着ていくのが楽しくてしょうがなかつた記憶もある。

以前新聞のお悔やみ欄で「四月一日」で「わたぬき」さんなる名字を見た時
「ああ・・本当にこんな名字の方がいるのだ」と思ったものである。

で・・話をもどすと・・
着物の柄行きで柄と名前がある程度決まっているものをせっかくなのでこの機会にいくつか紹介。

    武蔵野   ・・・・秋草模様に月
    塩山蒔絵文様・・・・波、磯、千鳥
    和歌浦蒔絵文様・・・波、磯、鶴

塗りの工芸品や九谷焼などを展覧会で見ていると名前の付け方など参考になるので面白い。

文学作品との絡みというのも模様にとても多い。

   「伊勢物語」    ・・・・・八つ橋 、筒井筒
   「源氏物語」若菜  ・・・・風景の中、軒先に猫
   「源氏物語」須磨  ・・・・公達二人、海
   「源氏物語」野わけ・・・・・風景の中に虫籠
   「源氏物語」紅葉賀・・・・・煙幕、楽太鼓




















など、源氏物語が多いのは作られた江戸時代の人々のあこがれの世界だったのかもしれない。
物語とは別に、模様の中に短歌や、漢詩、能の世界、暗示する物語のストーリーなどちょっと見ると単なる風景や草花に見えてもよく見ると隠れた字がちりばめられていたりするものもある。
縮緬地橘君が代模様小袖・・・18世紀に造られたものだが不老不死の橘の文様に君が代の文字がちりばめられている。←「葦手絵」という。

着物の世界はきらびやかで雅(「雅」と言う言葉は「宮ぶり」と言う言葉からでている、宮廷生活にあこがれた・・と言うくらいの意味)な一面もあるが、何気なく着ている着物の中に着る方の品格だけでなく、知識、教養、感性全てが含まれるといっても過言ではない世界を演出してくれるのではないか。

勿論、一枚一枚手作りの世界での話。
江戸時代は大量生産ができない、一つ一つが手作りで作られていた時代なのでこういう楽しみ方がまたおもしろかったに違いない。

その時、呉服屋で参考にしていたのが「ひながた」本。
ちなみに現存する雛形本で最古・・と言われるものが
1666年「新撰御ひいながた」本。
爆発的な流行時もあったようだが縞柄、格子柄が人気を博すようになって(いつかこの粋でモダンな柄についても話すね)徐々にすたれていったようである。

話が色々飛ぶが教室で「ひいながた」の質問が出てその時の話を参加していなかった人にも伝えたくて今日はあちこち飛びながら書いた。
「ひいながた」は江戸時代のファッション雑誌であり、着物模様の見本帳というとわかりやすい。
江戸時代にも時代の先端を行くファッション雑誌があふれていたのである。
まあ、私の説明では分かったのか、分からないのがはなはだ疑問ではあるのだが。

その時に別の方からでき質問。
小千谷ちぢみ」の話。
長くなるのでそれはまた今度・・ということで。