和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

稲妻柄〜☆

先だっての雷・・凄かった。

 

落雷したところもあったらしい。電車まで止まった。
で・・今日は「稲妻」または「雷文」の柄について。


                「稲妻or雷文」

自然文様は「月」「雨」「霞」「星」「流水」「風景」など着物柄には色々使われている。
中でも面白いのが「稲妻」。屈折した直線で表現されたものが多く、能装束に多い。
また荒々しい役柄の時に身につける事も多い。
中華料理屋さんで良く見る渦巻きの羅列したものも「稲妻」柄の一つ。

さて、この稲妻柄、着物や帯にしたら・・・どうなるか・・・。
手織で丸帯、しなやかで何でも結ぶことが可能。
かなり結びこんでいるのでクタクタ、古しい感じだがもの凄く考えてある帯。
私のお気に入り、とっておきの一本。

単純で寂しそうな柄にみえるが・・・重ねると・・

かなり雰囲気が違ってくる。
着物も反物で見るのと仕立ててみるのとでは雰囲気が違うように
帯も後ろで結ぶと柄と柄が重なり案外複雑そうなものに見えるのだから不思議。

ただし直線の間にもう一度屈折して角度を入れ込むものもある。
「松皮菱」の片面がまさにそう・・。


和装組曲ではイベント「琵琶とフラメンコの競演」の時、フラメンコダンサーの手下イリアさんに身につけていただき踊ってもらった。琵琶の曲は「茨木」。
ショー「MUSOU」の時には西崎萌葉さんにも日舞を踊ってもらった。勿論同じ「茨木」。

「茨木」は「羅生門」の続編とでもいうべきもので「羅生門」で腕を切り取られた鬼・茨木が切り取られた腕を渡辺綱(わたなべのつな)の屋敷に奪還に来るという物語。安倍清明のはった結界を破り見事奪還してガハハ笑いとともに消えていく、とある意味痛快な話。フラメンコも日舞もどちらも迫力あり見ごたえがあったことは言うまでもないが、今日は「稲妻」柄の話。なるべく余談はすまい・・・と決心。

その鬼を演ずるお二人に着ていただいた帯がまさしくこの柄。
西崎さんに日舞の前に写真を撮らせていただいた。
西崎さんの美しいお顔をお見せしないのは「ブログ」に載せる事を事前にお断りしていないため。
HP用はご了解いただいているのでご覧になりたい方は「MUSOU」のショーの履歴をご覧ください。素敵に格好いい方。

着物は墨色の訪問着。
大きく何処までも大胆に月の柄。もの凄い技術で月に似せて箔で仕上げてもらった。

    月は朧に白衣(しらぎぬ)の打ち掛け着たる1人の老婆〜  ♪
    
    館の前に現れて、門ほとほと・・と打ちたたく〜   ♪

と続く。間に琵琶のオドロオドロシイ間奏がはいる。

この老婆は渡辺綱にお前のおばさんだよ・・・
雨の日も風の日も、お前を抱き、寒さからも暑さからも守ってやった・・・
・・・覚えていないかい?と訴える。
中に入れておくれでないかい?・・・と頼む。
で・・・
後ろの結びは「後見結び」とした。
この結び以外ないだろう・・・と。

勿論登場する時は鬼は左手が切り取られてないので袂の中にいれて外には出していない。
なんとも粋な計らいで踊りがはじまる・・・・という段取り。

その時に使った帯が正に「稲妻」柄。
普通のギザギザに見えるただの模様かもしれぬが舞台で色々な役割を果たしてくれる。
また結ぶと雰囲気も変わってくる。
上の写真は日舞バージョンだが、フラメンコバージョンは結びも違う。
帯締めも帯上げも一切使わず「片流し」結びとした。
ライトの当たり具合で背後に不気味な影が浮かびあがる・・
日舞と違い髪を振り乱しダイナミックに踊っていただいたのも又一味違い鳥肌がたったものだ。
こちらも和装組曲の履歴に残してあるのでHPでご覧いただけるはず。

ちなみに
フラメンコの時の琵琶奏者は尾山峰水さん、私の琵琶の先生。
日舞の時の琵琶奏者は嶺瑛水さん、私の大先輩。

誤解がないように・・・一言。
今日の着物と帯。あくまで舞台用。
こんないでたちでちょっと外には出られない・・・
違う人になってしまうので誤解なきように・・ね。
あくまで舞台用ですよ。
   (でも・・・いつか・・実際着よう・・と思っている私・・・笑・・
     もっともその時は比翼も襦袢は紅絹の色ではなく金茶色、もしくは甕覗き色
          小物は爽やかに薄汚しか白殺しで・・・と思っている。)
                 ↑
       今ではこんな文も楽々分かってイマジネーションできる・・・はず。

今日は稲妻がない日だけど、ものすごく寒い。
風が身体を凍えさせ道路は冷たく、雪は解けず。
つるっつるぅの路面・・・二台の車が交差点で滑って動けなかった。
その傍を、そぉっとそぉっと運転して帰ってきた。
皆さんも運転、気をつけて・・〜