和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

黒橡(くろつるばみ)色


    紅は移ろふものぞ橡(つるばみ)の馴(な)れにし衣になほ若(し)かめやも


万葉集にある大伴家持の歌。

妻がいるのに若い女に心変わりした部下を諭した歌。
美しい紅は華やかで人目を引く美しい色だが色が落ちやすい。
それに比べて慣れ親しんだ橡(つるばみ)の色のように地味ではあってもいつまでも変わらない妻に勝るものはいないのだ・・と。

橡(つるばみ)はクヌギの古名。
クヌギの実ドングリを煎じて鉄媒染した色が黒橡(くろつるばみ)。橡(つるばみ)といえば黒橡(くろつるばみ)と決まっていた。

古代、橡(つるばみ)といえば身分の低い方の色。安価で、堅牢だったから。
華やかさの全くない色で人の目を引きつけない。のちにこの色に紅を入れた黄橡(きつるばみ)の色が出来て初めて四位以上の袍(ほう)の色に昇格はしたのだが。

今の色でたとえると「黒緑」が近いかと。
緑を黒で閉じ込めたような色。
私は森の奥の日の当らない木の茂みの更に奥の奥の色・・・かと。





光があたり過ぎたのでちょっと明るい色になっているが室内ではかなり暗い色のはず。帯も同じような色にした。
奥深い森の上を一羽の鶴が飛んでいるイメージ。
この帯の色を室内で見た時の色が近いのではないかと思っている。
森の大きさを考えると鶴は何処までも小さくないといけなかった…