和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

あじさいコンサート&諸々

4月の「はなみずきコンサート」の第2弾〜・・・♪

まだチラシも出来上がっていないのだが、出来上がるころには既に満席になっているはずなので和装組曲関係者には先にご案内。
はなみずきのコンサートに、既に満席で入れなかった方・・・今回金沢での演奏となるので宜しければどうぞ。
100名は入れる開場なのだが、主催者の方によれば今回は50名で打ち切るとのこと。




2軒の旧家でコラボ。
1軒でお食事し、その後もう1軒に移動してコンサートとなる。
どちらもとても大きな邸なのでゆったり楽しめるはず。
移動・・・といっても間に1軒か2軒のおうちがある程度でどちらに車を置いていても可。

お食事不要の方は予約の時に申し出てくだされば良しとの事。
多分パンフレットは直に出来上がるはず。
そうなれば前回同様すぐに一杯になる。
どうぞ早めに。
今回は早めにお知らせする旨、お約束していたので〜・・・

私の琵琶の演奏曲は「祇園精舎」を予定している。
多分これは藤舎さんの笛とのコラボ。
もう一曲はまだ決めてはいない。
単独15分の持ち時間が可能なら「琵琶塚」
そして10分程度の持ち時間なら「重衡」
を考えているのだが、それも今後変動するかもしれない・・・
主催者側の意向にもよるので。
どちらにしても演奏前に少し解説の時間をとって説明しますね。


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最近何冊か本を読んだ。
中でもちょっと面白かったのが・・・・3冊

まずはこれ・・・・


闇に咲く

闇に咲く


この世に思いを残して死んで行った人の姿が見える「おいち」が主人公。
血の匂いを纏った商家の若旦那は生まれて引き離された双子の姉がいた。
しかし幼くして死んでしまいその姉が自分の体の中にいて時々現れ自分を支配してしまうと訴える。
折も折、深川界隈で夜鷹が立て続けに殺されて行く。
おいちは岡っ引きと力を合わせながら真相に迫っていく・・というストーリー。
この人の本は今まで読んだことがなかったのだが、この世に思いを残して死んで行った人たちは琵琶の世界と絡むので今回ちょっと読んでみようと思ったのだ。
どちらかと言えばストーリーで読ませる感。
それはそれで面白いのだが、「この世に思いを残して死んで行った人たち」という所が私の中では今一つ怨念が足りなかったし多少期待外れの感。
多分これは作者の責任ではなく、出版社の本の帯を書く人の責かな、とも。
まあ、若い世代を対象にしているのだろうからこれはこれで良しなのかもしれない。
何も考えずにストーリーでグイグイ引き込まれたい方にはお薦め。


もう一つはこれ・・・


銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)



前回紹介した高田郁さんの本。
今回は寒天問屋の話。
父を亡くした武家の少年を銀二貫で寒天問屋の主人和助が買い取る。
その銀二貫は手を付けてはいけない天満宮再建のお金でもあった。
和助はその少年に商家の厳しい躾と生活を叩きこんでいく。
そして天満宮再建を望む店の人たちの思いや大阪天満の度重なる大火を交えながらつづる。
少年はやがて成人し、自分を助けてくれた周りにやがては恩を返し立派な商人と成長していくのである。
いつも自分を支えてくれていた真帆という娘が大火で顔に大やけどを負ってしまう。
醜く引き連れた化け物と言われる顔を手ぬぐいで隠しながらそれでも懸命に働き生きていく真帆だが、やがては手ぬぐいを外して胸を張って生きていく過程が中々けなげで力強い。
これまでのブログには書いていないのだが、かつて45年前、私は全身火傷で入院し、退院してからも完全に治るまでに辛い思いをしたことなどが思い出され読んでいて切なかった。


どちらも中々読ませて面白い。
私が20代か、30代なら「闇に咲く」が印象深かったに違いない。
ストーリーで引っ張って読ませてくれるから。
でも今では「銀二貫」が圧倒的に面白い。

高田郁さんという作家さんは恐ろしい位に時代背景に拘る方である。
多分膨大な資料を準備し、江戸期の大火や大阪の人情、商いの心得、商家の繋がり、それらを実に丁寧にそして律儀に書かれているに違いない。
呉服問屋の時もしかり、料亭の時もしかり、お寺を舞台にした三昧聖の時もしかり、今回の寒天問屋もしかり、この方の書はどれを読んでもストーリーだけで読ませるのではなくバックグランドの蘊蓄が凄い。読んでいて自分の中にある点や線にひたひたと迫って繋げてくれる。そして点在していた自分の知識がふっとつながった時の嬉しさったらないのだ。
例えば・・・・呉服問屋の時は「甚三紅」という言葉・・着物の紅色の胴裏の事だが、何故これが「甚三紅」と言われるのかとか。三昧聖での三昧での樒の果たす役割など母や祖母に聞いていたことと微妙にリンクしていく。又今回の寒天問屋では「寒天」と「糸寒天」の作り方の違いなど、又蒸し羊羹と羊羹の固め方の違いや工夫など。こういう事は中々文献などを読んだからといって的確に書けるものではなかろう。この方は寒天を自宅で煮て実際に作ってみたとのこと…なるほど・・体得してからの執筆なのかと納得する。
静かに丁寧に、そして嫌味なく恐ろしくサラサラと読める文体なのだが、実に人を納得させるものがあるのはそういう事かとも。
だからこの方の本は私には肩透かしと言うものが全くない。
今回は表紙の絵も漫画チックでなくて手に取っていてもイライラ感がなく気持ちが良かった。


そしてもう一冊・・・・
こちらは実に重いテーマ、
いや現代ではある意味日常茶飯事の軽いテーマかもしれない。

緋文字 (光文社古典新訳文庫)

緋文字 (光文社古典新訳文庫)


この本は50年前、一度読んだことがある。
私は高校生の時、部活で「日本文学研究会」と「世界文学研究会」という課外サークル活動の、共にどちらもの部長をしていたことがある。
勿論その時は対象は全て古典文学であった。読んで感想を次回までにまとめ皆の前で発表する、そして討論し次の書を課題として出す、と言う事を繰り返してもいた。課題を出した方が次の司会となる。当然その書への思い入れや拘りがないと司会者は皆の意見を出し尽くせない。そんなこんなで部員は皆当時の図書館にある大抵の文学作品は一度は目を通してもいた。たしかその時に「緋文字」というホーソーンの書を皆で読む機会があったのだ。この書を課題に押した女生徒は美しい楚々とした儚げな雰囲気の人だった。ただ彼女は自分の意見を言う時に、実に力強く真っ直ぐに相手の目を見て話す人だったと記憶している。彼女は実に多くの書を休み時間などを利用して日々寸暇を惜しんで読んでいた気がする。ただ当時の高校生では現実味がなく架空の話でのやり取りで私としては実に記憶が薄い。ただ「緋色」という色が妙に鮮やかに残酷な色として心に残ったのも事実であった。

今回朝日新聞でこの書の批評をしていた方の文を読んで、かなり自分のこの本への印象が違ったのでもう一度読んでみようと思ったのだ。

あらすじは・・・
17世紀、夫に先立ち単身アメリカに渡ったへスターは不倫をし子供を産む。
当時は不倫した女は「A」(adultery)という真っ赤な文字を胸につけて刑台に立たされた。
子供の父親の名前を言うように、牧師や医師や沢山の人々の前で糾弾されるのだが、へスターは頑として言わない。
しかし夫は相手の男が誰だかを分かってしまうのだ。
なんと子供の父親は人々の先鋒となって彼女を糾弾する牧師だった・・・・

朝日新聞の書評では激しい倫理観を持つ清教徒アメリカに渡って新境地に布教したことを理由にあげ、これが現在の社会に強い影響を及ぼしていると。現在のフランスとアメリカでの不倫に対する人々の感覚がかなり違う事などを解説されていた。「倫理」と「信仰」は大切なのだが、絶対ではなくもっと人間らしく生きようというホーソンの主張ではないかと言う解説者の見方も添えられていた。

色々賛否はあるだろうが、もう一度読んでみよう…と新しい今の訳でもう一度挑戦した。
気になる方はどうぞ・・・