和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

あきない世傳

3月、4月は何となく忙しく慌ただしい。
卒業式や入学式の着せ付け、そして何かを習いたいという向上心旺盛な方には習い事を始めたい時期でもある。

時期が時期なので私的にも色んな食事会や祝い事なども続く。
そんな時なので最近は能面関係の本しかパラパラと読んでいなかった。

ブログ友のエントリーに「あきない世傳」の紹介を見ていつか読んでみたいとは思っていた。
仕事に通じる書物はどんなものでもなるべく目を通したい・・・
そうでなくても読みたいと積んである本が10冊以上たまっている。
しかし・・・・

二日前にブログ友からメール有。
雲龍柳殿、是非この本を読むべし」と。
その方は今はブログを少し休まれてはいるのだが、敬愛するブログ友であり、時々良い書を知らせてもくださる。
しばらく忙しい日々が続くのだが、この方が薦めてくださるなら直ぐ読むしかない。
その日のうちに書店に。そして五冊買う。

其れがこれ…

あきない世傳 金と銀(四) 貫流篇 (時代小説文庫)

あきない世傳 金と銀(四) 貫流篇 (時代小説文庫)


あきない世傳 金と銀(五) 転流篇 (時代小説文庫)

あきない世傳 金と銀(五) 転流篇 (時代小説文庫)



昨日一日かかって読む。
早朝から昼までに二冊〜
午後から仕事&来客

夜7時から読み始め・・気が付けば5巻読了が夜の2時半すぎ。
いゃあ・・面白かった。

貧乏学者の娘として生まれた9才の少女・幸が呉服屋の下働きとして奉公する話。
一生鍋の底を磨いていくしかない女衆の身でありながら
その店の老齢な女主人や番頭から色々「商いのいろは」を教えてもらいながら成長していくのである。


その家の放蕩三昧の廓通いに湯水のごとく金を使う長男、
商いの才や美の極意に人一倍抜きんでているものの人情に頗る欠ける2男、
優しく周りに心配りはするものの商才の全くない浮世草子に励む3男、

忠義一筋一生懸命励む律儀な番頭や下働きの女衆を織り交ぜ、呉服離れの進む江戸期の呉服屋での話。
話の内容もさることながら着物の話が面白い。
世間の流れや大阪と言う土地柄も面白い。
「おお、その話にも触れてくれるか・・」
という着物の裏話や世間の流れ、人として生涯をかけて歩むべき道にまで微かにさらりと触れている。

周りと力を合わせてお店の為目的を成し遂げていく幸の幸せを祈らずにはいられない。



北陸で生まれ、6才で貧しさの為養女という名目で里子に出され東京で下女としてその家で暮らしながら
一つ一つ苦難を乗り越えてやがて自分の進むべき道を見出していかれた我が師と仰ぐ方の昔話とリンクし
下働き女たちの報われぬ苦労がダブって読みながら何度も涙をこらえていた。
「ああ・・昔は貧しさでこんな目に合う人たちが多くいたんだろうなあ・・」と。
それでも強く逞しく真っ直ぐに前を向き凛々しく生きていたのが案外普通だったのかもしれない。


5巻で終わりではないのだが、1巻1巻楽しませてくれる。

教室の皆さんには貸し出し用書架に加えたので読みたい方はどうぞ・・・



もう少しで琵琶の演奏会「庭園コンサート」があるのでまずはそれに集中しよう。
その後、暫くは高田郁の書が日課となるかもしれぬ。