和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

岐阜からの電話〜♪

「着物を着られるようになりたいので和装組曲さんでお願いしたいのですが・・・」
という電話をもらったのは一か月以上も前の事である。


「ありがとうございます。是非〜♪」
と軽く言う私にその方は
「一泊二日で金沢に行きますのでそれで仕上げる事は可能ですか?」と。
「えっ?!あなたは今どちらにお住まいですか?」
と聞く私に岐阜県だと言う。
「岐阜?」
と驚く。

近そうでとっても遠い県である。間に山脈が立ちふさがる。
県境は隣接しているので他の県の方は石川と案外富山や福井の距離感覚かもしれない。
ところが・・・どっこい。電車だと名古屋経由でぐるりと回らないといけないので5時間はかかるだろう。
まだ飛行機で北海道から来る方が早いのだ。と、いうのは今まで北海道から来られた方もいるのだ。
飛行機で空港まで一時間半、そこから高速バスでも二時間半ほどで和装組曲に来られるのだ。(笑)

思わず言ってしまう。
「あなた・・・岐阜にも着付け教室あるでしょ?!例え多少気に入らなくても(笑)名古屋にもあるでしょ?!」と。
「京都や大阪の方がどれほど近いか・・」と。

電話口の方・・・
「こちらでは何カ月もかからないと着物は着られるようにならないのです。そういうシステムみたいです。」
その方が仰るには、五月の友人の結婚式には何としても自分で着物が着たい。
何処を探しても一日や二日で着るられるように教えてくれるところはないので今回思い切って金沢まで行こうと思ったとのこと。
ただ心配なのは金沢まで往復10時間となる。
土曜日の朝早く家を出ても金沢はお昼頃着となる。
又次の日お昼過ぎには金沢を出ないと家に帰ってこられない。
仕事に穴はあけたくないのでなんとか土曜日半日、日曜日半日で着られるようにならないか・・・と。

今まで名古屋からなら二人生徒さんがいらしたことはいらした。
ただその方々は全く着物が着られないと言う方でもない。
一人は養成コースの方、この方は転勤で名古屋に配属になったので卒業まで何とか金沢に月1〜2回通われた。もう一人は着られることは着られるがあまり美しいと思えないので手直しをしてほしいと言う方だった。

ちょっと電話口で迷う。
「あなた、着物はどの程度したことある?」と。
「全くの素人、習ったこともないですし・・・」と。

じゃあ・・
「着物はたためる?」
即座に
「たためません!!!」
物凄い力強く自信に満ち満ちていた。(笑)

そう・・・思わず潔い返事に笑ってしまった。
本当に全く持って、全然・・・ちっとも・・・これっぽっちも出来ないのであろう。

「分かりました。着られるようにしましょう。ただし、着物は畳めるようにしておいてほしいのでどなたかに畳み方習えますか?」と。
お母さんが畳むのはたためる、と。着る事はできないけれど・・と。
じやあその時までに畳むのだけは出来るようにしてくださいと言うことで引き受けてしまった。

ちょっと半信半疑でもあった。
今強い決心でも案外日にちが近付くと億劫になり、交通費・宿泊費そして時間、労力まで掛けて行くのが段々不安になり
「習うのはそのうちにして、今回は美容院で」
となるのではないか・・特に仕事を持っている方はなおさらである。
五分五分で思っておこう。それほど岐阜から、というのは私の中では遠すぎた。


でも一応カリキュラムだけは作っておいた。
朝、岐阜発。昼、金沢着。一泊し翌日昼金沢発。
と、すると1日目は1時から5時(間に休憩15〜20分)
二日目は9時から11時。
その辺が頑張れる限度であろう。

合計で1時間半×3・・・という時間が限度だろう。

来れるか来れないかは別としてその方に何処まで教え何処を飛ばすか・・
何を教えるかより、何を教えないかのほうがたいせつかも・・と。
完璧なことを考えていたらご本人がパニックだろう。

なんだかんだと毎日が過ぎて行く時に頭の中で試行錯誤。
この一カ月時間さえあれば、私の頭を常に占領していた気がかりでもあった。


それが何とひと月前の話。

で・・・・

昨日土曜日、岐阜から金沢に到着。


結果は・・・



自分で全て着られてホテルにそのままの姿で5時に帰られた。
勿論訪問着、袋帯で二重太鼓、そして鏡を見ないで。
凄いでしょ?頑張る方の力だね。

でも私といるから出来るので一晩経って果たしてホテルの部屋で朝一人で着られるか・・・そこが大切なことだと思っていた。
次の日はホテルで着物を自力で着て来られるか・・・何処までできるか・・出来ない所を集中的に覚えてもらおう。
駄目な時は洋服でおいで・・と一応添えていた・・・なにせ時間がけだ。ちょっとも時間を無駄にしたくはない。


なんと・・・・



凄いね・・・ご本人も自力で本当に着ることができ感動していらした。
「こんな短期間に着ることができるものですね・・・」と。
「そう、短期間に着られるようになるということはすぐ忘れる危険性もあるのよ。」と釘をさす。
「結婚式まで練習してね〜」と。言わなくてもこういう方はする・・・きっとする・・・絶対するはず。

帯も着物も前日は着崩れることなく気持ちよくうろうろと金沢を楽しんだようである。

直す所は・・と見る。
ちょっとおはしょりがもたついているのでそこを修正する方法を教える。
後は実に初めて自分一人で着たとは思えぬ位上手。
ご本人も自分の楽なように着ていていいのですね・・と感動していただいた。

そう・・・補正でぐるぐるとタオルやらガーゼでずん胴状態にし、崩れないように紐でギュウギュウ巻きにしなくても、とっても着心地良く楽しんでいただければこちらも見ていて気持ち良いのだ。
ご本人さん、重ね襟も付けられるようにしたいと仰るので時間の許す限り練習してもらう。
真面目で丁寧に一生懸命頑張るこの方に敬意を表したい。若くても、年をとっても出来ないことに言い訳をいって自己弁護を摺る方が多い中、実に黙々と頑張られた。
「体中痛いでしょ?」
帰りしなにちょっと聞く。
「はい両手とも筋肉痛、そして腱症炎になりそうです」と。
こちらから聞くまで言わない。耐えていたんだろうね〜・・・大したもんだね。

さてさて・・・まずは1件落着、雲竜柳のお役が全うできたかな?


◇♦♫◇♦・♪*:..。♦♫◇♦*゜¨゜・*:..。♦♪ ♦♫◇♦・*:..。♦♫◇♦*¨゜・♪*:..。♦◇    





さてこの日は早朝から、養成コースの方々の着物での撮影で二階で行われた。
滅多にないことなので、ちょっとご披露。。。





撮影順に載せました。
皆さん流石に着物の着方も、立ち姿も綺麗でしたよ。
カメラマンさん曰く・・・
「和装組曲さん、なんでいつもこんなに綺麗な方ばかりなんやろ?」だって。

「目が眩みそうやろ?」と茶化す私。
  

 「当然よ!!」だって、それが・・・着物の力さ!!

   日本人が一番美しくなれる・・・それが着物の魅力さ!!


ケセラセラさんの指導のもと、撮影後は自分で着るための時間短縮のための練習。
現段階では7分前後位までなる。ただ見ているとまだまだ無駄な動きが多すぎ。
この方々はもっと練習すると多分6分だって切るだろうとさえ思う。
一応養成コース1の自装の試験は8分なのでこの方々は6月昇級試験を行おうと思っている。
半年で試験・・なんて前代未聞。でも頑張る方には私も真剣に向き合いたい。
皆が受かれば7月から養成コース2が始まる。
この調子で頑張ろうね。



ところで今日の洗面所ののれん・・・・



中国では龍門という急流を登った鯉はやがて龍になる・・という言い伝えがある。
そのため鯉は古くから出世魚して大事にされてきた。波や水しぶきとの組み合わせが多い。
鯉文様では波間の間を勢いよく泳ぐ「荒磯」、またこのように鯉の滝登りなどがある。
この「登竜門」の伝説に由来して、日本では男児の健やかな成長を願って端午の節句に鯉幟を上げる風習ができた。
「足柄山の金太郎」は源頼光の四天王の一人、坂田金時の幼少の名。彼は急流を鯉の背にまたがり登ったとか。鯉幟に鉞(まさかり)を持った金太郎を親鯉の背に描くのもその名残。
又まな板の上の鯉がピクリとも動かないところからその潔さと、水の上に上がっても何時間も生きながらえる生命力の強さを讃えているとも言われている。
鯛と鯉は似ているのだが鯛は神への供え物として扱われ左右に向き合わせた「祝鯛」の形が多い。いつか別の機会があれば触れるつもり。



岐阜の方は今ごろ無事に着いただろうか〜・・・いやいや、まだまだかかるだろう。
実家のお母さんの前で自分で着物を着られることを見せてあげる・・と言っていらしたので実家経由で帰途につかれているはず。
ありがとう。お母さんも色々ありがとうございました。素晴らしいお嬢さんでしたよ。
ちゃんと綺麗に着られるようにしてあげたい・・・と心底思っていたので私も「ほっ」。
真剣に取り組むこの方の真摯な姿勢に私も何だか初心に戻れた。
私にとっても集中しながらも楽しい一時でした。(深謝〜♪)
自分でやろうと決めた事に必死に食らいついてがむしゃらに何処までも頑張る方が、大・大・大好き〜☆★☆



ハードな一日だったようで流石に終わった後、ビールが美味しかったよ。
みんな・・・みんな・・・・ありがとう〜♪
今日も無事に終わった。皆に感謝。全てに感謝。
本当にあ・り・が・と〜♪