和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

養成コース卒業試験

12月14日(土)・・・

昨日養成コースの昇級、卒業試験を行った。
今日はその卒業試験の話。

卒業試験は2人・・
以前は全部で7〜8人はいたクラスだ。
一人抜け、2人抜け・・・ついに2人となった。
途中あまりにも簡単に脱落する方々に私の方がいらだち、切れかかった。
全員辞めてもらっていいわ!!あなた方の覚悟の程ってそんな程度??
・・・と思う時もあったのにこの2人は死に物狂いに食らい付いてきた。

まずは1人目。
仕事が済みかなり遠いところから教室に通ってきていた。
雷の日だろうが、雨風であろうが台風の日ですら「来る」と言った日には来ていた。
一番若いのにこの方の弱音は本当に聞いたことがなかった。
仕事で責任ある地位にいて、それをこなしての此処までの頑張りは心底凄い。

仕上がりは・・・

時間は、襦袢を着せて、振袖を着せて、創作変わり帯を結んで
9分17秒であった。
振袖なので可愛く飾りも工夫していた。
この日の振袖はお母さんの成人式の時の物。
ひとえに御家族の協力なくして此処までは来れなかったに違いない。

そして2人目。
この方は養成3の時に仕事で名古屋に転勤になった。
名古屋から金沢に通う日々。
途中息が切れそうになっているのではないかと気遣う私に彼女が言ったこと。
「今1年2年の事ではなくてずっと一生続けて行きたいので焦ったところでしょうがない」と。
どうかすると身近な人と比べてみたり、ライバルと争うことに浮身を費やしやすいのに若いのに地面にドーンと足をつけているのが伝わってきた。


この方の仕上がりは飾りを全て排除し帯の結びだけで仕上げた。
結びの美しさを追求するこの人らしさがでている。

時間は9分28秒。

美しい仕上がりはもちろんだが、着せつけている時の美しさまで配点に入れた。

この日私の代わりに審査する大役を仰せつかった方・・・

この方。
私に習い出して6年。養成コースを卒業してはや3年。
ANAファミリーラブのショー、音楽堂の創作帯展や「無双」のショー、アリスの七五三の中心メンバーとなり、
更に各種着せつけでは私の右手となって動いてもらった。
今回は思い切って審査を担当させた。

何をとう評価するか・・
どれくらいの配点、減点にすべきか・・・
表を作るところからさせ、事前の打ち合わせまで詳細に決めた。

「もし点数一点でも足りないと本当に卒業できないのですか?」と事前に静かに聞いてきた。
「当然でしょ!!」私は答える。
「落とすことが目的のような厳しい審査にして!!」
甘甘な試験ならしない方がよい。
そんななあなあの形だけのテストなら私は実施しない。
「養成」・・・この言葉は「プロを養成」することを意味しているのだ。

下駄をはかせることもなければ追試も補習もない。
たった1点の事でも足りなければまた1年間がんばるしかないのだ。
1点足りないのではない・・それに関しての多くの足りなさがあるので結果一点足りないと言う結論になるのだ。

「何故私が落ちたのか?」
「どこが足りなかったのですか?」
どちらの方が落ちても、真っ直ぐに食い入る目で、挑むように聞いてくる2人である。
理路整然と説明できる結果内容にもしたい。

感情で点数をつけない。そしてこれが案外難しい。
その方と二人三脚でやってきた何年間がある。
苦しいながらも乗り越えてきた思いもある。
辛い中で涙を流しながら取り組んできた年月がある。
その方の並々ならぬ心情も卒業にかけた思いも十分すぎるくらい知っている。

でもそれなら最初から試験などするな・・ということだ。

受ける方もさることながら審査する方も物凄い緊張は当然である。
その方の今後の一年まで左右するのだから。
厳しい心情で審査して頂いた。
なにせもしその方がキチンと審査出来ないようなら私は二度とその方を審査員として使わない覚悟をしていた。
本人も私のこんな性格を熟知しているので物凄い強い気持ちで真摯に審査に臨んだはずだ。

多分この日一番の緊張した人に違いない。
皆合格できてやっと笑いがこぼれる。
「どこも点数を引くところが見当たらなかった。この方たちは凄いです。」と。

当然だ・・・私が教えたのだから。しかも最後までしがみついて粘りぬいて残った方々なのだ。
彼女たち二人とも緊張して手がふるえながら着せつけていたのも知っている。
それゆえ、彼女たちのベストの速さではなかった。
この人たちは普段もっと早く着せつけできる。
ただ仕上がりは最高だった。
こういう緊張の中でキチンと結果を出せないと話にならないのだ。



習いごとは案外なあなあである。
楽しんで、気持ち良く、そこそこ上手をめざすのだろう。

和装組曲では「自装」や「他装」は自分で着たり、家族に着せつける程度なので楽しんでもらうことが主であるのに比べ、養成コースはプロとして恥ずかしくないレベルを目指している。
ちょっとの慢心も、ちょっとの手抜きもなしである。

一生勉強していく強い覚悟の方だけを求めている。
これが案外難しいのだが・・・


いよいよ来年1月から新しい養成コースが始まる。
顔合わせは1月11日土曜日午後1時。
現在は4名のエントリーがある。
そのうち何人が残って行くのか。
どうなりますか・・・入る時の力など一切問わない。
われこそはと思わん方、来たれ〜☆



話はそれるのだが、


こんな写真を撮った。
突然だったので上手く撮れていないのだが、カラスの後ろにトンビらしき大きな鳥が舞い降りた。
3羽いたカラスの2羽は近づく大きな羽音で直ぐに飛び去った。しかし、この1羽動かなかった。
まるで自分のテリトリーだと言わんばかりに泰然自若としていた。
どうなるか冷や冷やして見ていたら、トンビらしき大きな鳥は飛び去って行った。

偉いぞ・・・気迫勝ちだね。何だか嬉しくなった。
負けるな・・・小さくても気概は大切〜♪
まして同じステージなら気概が全てかも・・・と。