和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

琵琶・茨木(いばらき)

羅生門」を終え、八月から「茨木」に入った。

羅生門」では夜な夜な九条の羅生門に出没するという鬼を退治に渡辺の綱が出かけるという話。
綱は鬼と対峙し鬼の片腕を切り落とす・・・鬼は「必ず取り返す」と言い捨て消える・・・という話で終わる。

さて、「茨木」はその続編。
鬼が自分の切り取られた腕を奪還すべく渡辺の綱の屋敷にやってくる。
一方渡辺の綱は安倍清明に屋敷に結界を張ってもらい、本人は声高く仁王経を読誦し七日間屋敷にこもる。
その七日目の夜・・・の話。



        月は朧に白絹の     
       打掛きたる一人の老婆
       館の前に現れて     
       門ほとほとと打ち叩く
       聞くより綱はいぶかしみ  
       かかる夜更けに我が門を 
       訪れ給ふは何人ぞ

       これは津の国渡辺の
       里よりはるばる訪ね来たりたる
       和殿が伯母に候よ
       此の門開き給えやと
       言われて綱は声高く

       仔細あって物忌なれば
       門の内へは叶わず候
       今宵明けなば対面せん
       一先ず御帰り候えと
       いと本意なげに答えけり

       あら曲もなや
       そもそも和殿が幼き頃
       伯母がみずから抱きやり
       暑さ寒さをしのがせつ
       育てあげたる大恩を
       忘れ果てしか情けなや
       邪険の者よと口説きつつ
       声をあげてぞ泣きにける

 
と・・・こうして老婆に化けた鬼が情に絡めて綱の屋敷に入り込もうとする所から始まるのだ。

 
実はこの「羅生門」と「茨木」は琵琶を習い始めた時からの私の憧れ。
何としてもこの二曲を弾けるようになるまでは琵琶を辞めないぞ・・という強い気持ちで琵琶を習い始めた曲でもある。

語りもさることながら間に入る琵琶の音色が又いいのだ。
なんと八月からはこの「茨木」に取り組んでいる。


大体八月のこの異様な暑さでは着物を習おうと言う人はいない・・・はずだった。
毎年七月八月は生徒さんほとんどがパスする。
浴衣を習う若い方と養成コースの方々しかいない・・・はずだった。
ところが今年はどうしたわけか七月が異様に人が多くて私の方がちょっとパテ気味。
八月は流石にお盆休みもあるのでちょっと楽〜・・かと思いきやこれがまたそうでもない。
九月十月、ちょっと涼しくなると絶対混むので空いているときに・・という賢い方々がいたのだ。
かくしてその隙間を縫っての琵琶の練習となる。


前回のブログで舞台衣装の話に少し触れたのだが、
袷の時期ならもう決まっている。
墨色の地色に朧な月のみを綿引き箔で表現した着物に、墨色に雷柄の帯。


以前ちょっと使った写真だが、着物を着てくださったのは西崎流の西崎萌葉先生。
私のショーの時に舞台で茨木を踊ってもらった時の写真。迫力満点の踊りだった。
それはさておき、この着物。これは自分のいつか弾く茨木のため用に作った着物でもある。
絶対自分で舞台で着るぞ・・という決意表明でもあり、念願でもあった。

ところが来年は六月なので袷と言うわけにはいかぬのだ。
こういう思惑違いというのはままある。(笑)

で・・・構想としては「無双」の着物を考えている。
紗の着物を二枚重ねたものは「紗合わせ」という。
絽の着物に紗を合わせたものは「無双」という。
とても似ているので今では区別なくどちらも無双といったり、紗合わせといったりする。
二枚合わせると言っても襟は一つ。つまりあくまで一枚の着物だ。
勿論最近では中々みない。

白い絽に墨色の粗い透ける紗を合わせようと思っている。
白い方に何か墨色の字を大きく一字、もしくは漢詩五字をと考えている。
まだ構想段階でどうなるかはわからぬのだが。
問題は帯である。
着物に書く字が決まってからの話でもある。




         風を起こして飛び上がり
        破風を蹴破り逃げんとす
        愚かや綱
        我こそ茨木童子なり
        我が腕を取り返さんため
        これまで来たると知らざるや
        あら笑止やと叫ぶ声
        虚空に響いてもの凄く
        身の毛もよだつばかりなり

            
             (文中の緑字の部分は、大坪草二郎氏作「茨木」より抜粋)

口伝えで伝承されて来ているものなので多少言葉が違ったり漢字が違ったりすることもあるやもしれぬ。
ご容赦を。

さてさて・・・・どうなりますか・・・
全く琵琶に興味のない方でも、ちょっと聞いてみようかなあ〜♪と思ってくだされば御の字。

しかし・・・いい音の琵琶が欲しい〜☆