和装組曲♪

・・着付け教室、琵琶演奏、能面制作などに勤しむ日々のあれこれをグダグダと綴ります・・

はや〜っ!!8月3日

面白い人に出会った。
今日はその話。

私は呉服屋さんの勉強会が好きである。
皆さん、怖い・・と仰る。
何か買わないと出てこられない、と思うらしい。
私は平気である。
帯締め一本、帯上げ一枚、欲しいと思わないものは買わない。
と、いうよりいらぬものに金を払う必要が何処にある。
只でさえものが氾濫している昨今。
自分が欲しいと思う物を買えばよいだけのこと。

最近では私は絶対と言っていいほど買わない、意地でも買わない、と呉服屋さんには思われているらしく誘ってももらえなくなった。向こうも商売、当然と言えば当然だ。

一方私はあまりに何回も勉強させてもらってばかりではちょっと気が引けているのもある。
何せ何と言っても根は大人しく律儀な女なのだから。
で、ちょっと控えていた。
でもチャレンジャーな呉服屋さんがあった。
「是非!!とっても面白い。」と。
たまたま昨日午後教室のキャンセルがあり、ちょっと覗くことにした。
あまり期待はしていなかった。

最近の呉服屋さん、どうかするとちょっとあんまりだわ・・という値段。しかもすこーし、まがいものも入っていたりもする。「螺鈿」の帯と称して単なる樹脂を流し込んだいわゆる「一見螺鈿」なる帯を平気で物凄い値段を付けていたりもする。螺鈿を織り込むという作業ではなく、ぺたりと貼りつけるのもある。中国製らしき「手織綴れ帯」を置いてある店もある。案外中国製の物の方が繊細で緻密だったりもする。人件費が安いのでそういうこともできるのだろう。ただそれならそうと値段に反映すべきなのに何処までも強気な値段がついていたりする。

基本、どんな時でもどんな人がどんなものを買おうと私は何も言わない。買う方が納得して買うのだからそれはそれ・・・。私がいらぬことを言う必要もないのだ。皆、大人・・・のはず。たとえ教室の生徒さんでも聞かれなければ言わない。自分が勉強していなくて買ったものを「騙された!!」と言ったりする人もいるが、あまり良くない。気にいって納得して買ったものにあれこれ言わぬものだ。しかも相手だけが悪いように思うのも考えもの。単に自分が知らなかっただけなのだ。お店の方も知らなかった・・と言うこともあろうし。。。ただ物凄く悪徳な店もないわけではない。ただそんなことをしていても長くは続かない。人には口と言う物があるのだ。

もっとも全部が全部そうではない。

物凄く手堅く地道に商いをしていらっしゃるところもある。
また「中国製」とかも隠さずにおっしゃるところもある。


でも呉服屋さんのイベントと言う物は大概気に入ってもらって買ってもらう、と言う催しが大半。そこで如何に客をその品物で魅了するか、どうかにかかっている。何でも欲しい人は何でも買う。自分の欲しいものが分かっている人はそれに出会えば買う、だけの話。買える人は買う・・・それだけのこと。
お店側からすれば勉強だけして「ありがと」と帰る私は「仁義に反する」類いの客に違いない。実物を見ないと中々本だけでは分からないのも又事実なのだから。実践というのはとても大切なのだ。しかるに面の皮を厚くして毎回いろんなところに行っている私だ。同時に私は自分の惚れ込んだものは中々お店に売っていないとも思っている。
「こんな着物で・・こんな帯」と言うのは自分で作るしかない、と思っている。
だから着物や帯を見て即、買う・・と言うことは余りない。



で・・・結果を言うと物凄く楽しかった。
遊ばせて頂けた。
講師の先生が良かった。


客が少なかったのも私には幸いした。
勉強というより来年の琵琶の舞台用の衣装の構想が出来た。
また、どうしても帯に書きたい字があったのだがそれに行きつくにはまだまだクリアーしないといけない問題点があった。果たしてそういう字を帯にかいていいものだろうか・・・とか。パッと見て誰でも読めないようにしたかった。それにはどうしたらよいか・・・とか。

ほとんど解決した。
気が付けばなんと二時間近くもその先生と話し込んでいた。
その方も物凄く私を気に入ってくれて付き合ってくださっていた。
ありがとう。

ちなみにその先生は色紙にお客さんの誕生花や、好きな花をその場で書いてくださるのだ。
私に生年月日を聞き誕生花を書こうとしたのに、手がフッととまる。
「あなたには花の絵は似合わんね。」と。
「花柄を着ない雰囲気」と。
そして、自分のイメージで

こんな風に。
形のあるものは私は飽きるのである。
でもちょっと出来過ぎ、この絵。このテーマ。
すると、
ちょっとまっとって・・・とさらさらと書いてくださる。
書きながら・・・ドキドキする、と。
「余りにあなたが私の考えに似ているので。」と。


それが・・・これ。

なんで分かったのだろう・・・私の一番好きな字。

その方は
「実は自分も物凄くこの字が好き。着物や帯にこの字を書いてくれと言う人はいないけど。」と。

実は私が秘かに着物か帯に書こうと考えている字の候補の一つである。
私の考えていたのはもっと強烈な字である・・・。たった一字だ。
ここでは言わぬ。
しかしその先生に問われるままに答えた。ギョッとされた。
「一体どんな人生を送ってきたのや?」と。


来年の琵琶の会の時に着ようと思っている。
縮緬街道の尾藤家での下褄模様をヒントにした。
下褄に好きな字を書こうと思っている。
多分誰にもわからぬだろう。でもいいのだ。
私の場合人に分かってもらうためのもの・・というより自分の世界の展開なのだ。
ヒントを下さったこの先生にお願いしようと思っている。
それが筋というもの。

ありがとうございます。
本当に楽しゅうございました。



さて・・最後にこの写真を。
今玄関に置いてある。

楠(くすのき)の写真である。
勿論木くずである。

彫刻や欄間で有名な富山県井波で生徒さんがもらってきてくれたもの。
欄間や獅子頭を作る時に出た木くずである。
実はこの「楠」、着物とちょっと関係がある。

タンスに入れる樟脳は実はこの「楠」の精油から作られたのである。
勿論今は化学的に合成されて造られているだろうが・・・かつて・・の話。
だからこの木くず・・・樟脳の匂いがする。かすかに。

玄関に置いておくので興味のある方、触ってみて、匂いを嗅いでくだされ。
滅多にお目にかかれないものだから。

最後と言いながら・・・もう一つ。
「楠」がでたついで・・・

楠木正成」の家紋。

醍醐天皇元弘の乱でその功績をたたえられて楠木正成に菊の紋を下賜された。
天皇家の菊をそのまま家紋に使うのはあまりに恐れ多いと半分だけ使い、半分は水の流れで隠したととも言われている。
また別の書物によれば、御醍醐天皇は盃に菊の花びらを浮かべ
「菊は千年の後まで香るという、お前の紋は菊水にせよ」と言われたとも・・・。

楠がどんな木なのかも知らぬ。名前しか・・。残念ながら。
きっと何処かで見ているに違いないのだけれど。