夜遅くメールがはいる。
「主人、亡くなりました。葬儀もすませました。
おかげで喪服を着て主人を送り出すことができました。
色々ありがとうございました。」
・・・のような趣旨のメール。
御主人が余命いくばくもないとわかり喪服を自分で着たいと、うちに習いにいらした方です。当時はあまりない申し出に私もびっくり。三年近く前のこと。
不治の病ならそばに付いていた方がよくないですか?という私の言葉に
病院の面会時間もあり、帰っても一人家にいても落ち着かずじっとしていられない。
かといって自分にできることはない・・と
眠れない毎日を過ごすより自分のできる精いっぱいのことをしてあげたい、と。
話を聞いていてこちらまでジンときた。
おもえば・・・自分も経験がある。
実父の葬儀でのこと。
突然でもあり喪服を着ようとしてもうまくいかない。
バタバタする周りの雰囲気。気持ちもあせっていたし、手も震えた。
かちゃかちゃに着物着るくらいなら洋服にしよう・・・と迷う私。
その私に母が言った言葉。
「嫁に行くあなたに喪服を持たせたのはなぜ?こんな時のためでしょ?
親の時と夫の時でないと女は喪服は着ないのや。綺麗でなくていいの、着物を着なさい。あなたのできる精いっぱいの気持ちと礼を尽くして父を送ってあげなさい!!」
と。
その時のことを思うとまだまだ若い彼女の気持ちがいじらしくなんとか力になってあげたかった。
闘病五年近く・・・六年になるかも・・・
御主人も死ぬ時は家で・・・と、最後はほとんど家で過ごしたらしい。
彼女とはその後あっていなかった。
一家を支えるために仕事もし、介護もし、頑張っていると風の便りには聞いていた。
精一杯の礼を尽くして見送ろうと万感の思いを込めて喪服を着た彼女は
きっとものすごく凛々しかったに違いない。
着物は身を飾るためだけのものではない、決してそれだけのものではない・・・と信じている私です。